憤怒の悪魔3
「面白いな……とても面白い……面白くて……腹が立つ」
「シャリン!」
笑っていたサタンが消えた。
そして次の瞬間にはシャリンが吹き飛んでいき、シャリンがいたところに拳を振り切ったサタンがいた。
「私が誰と知らないことは無知である。無知は罪で罪は罰されるべきことだ。生意気な口を聞くことも罪。罪は罰せられなければならない」
サタンはゆっくりと拳を振る。
「若造が舐めた口聞くんじゃないぞ……私を! 知らないだと! その上にふざけた口の聞き方をしやがって!」
「なっ……」
サタンから黒い魔力が溢れ出し、瞳孔が開いたような怒りの表情を浮かべた。
「あっそう」
「なっ……」
今度はサタンが消えてシャリンが現れた。
ほんの一瞬遅れてサタンの城の方で大きな音が聞こえて城の一部が崩れる。
「圧力が消えた」
サタンがいなくなって上から押さえつけるような圧力が消えた。
「貴様ぁ!」
城で大きな爆発が起きる。
瓦礫が吹き飛んで中から怒りで顔を真っ赤にしたサタンが姿を現した。
「あっそう……あっそうだと……」
上品な老人に見えていたのに一瞬で様変わりしてしまった。
赤ら顔で額に青筋を浮かべて目は瞳孔が開いたように異常な状態になっている。
「ぶっ殺してやる!」
「やってみるといい」
「うわっ!?」
サタンが高速でシャリンと距離を詰めて拳を突き出す。
圭にはほとんど見えないような速度であったのにシャリンはサタンの攻撃に反撃を繰り出した。
シャリンとサタンの拳がそれぞれの頬に当たり二人が弾き飛ばされる。
衝撃が周りに広がって圭たちも吹き飛ばされるそうになってなんとかこらえる。
「これはマズイな……」
ルシファーが顔をしかめる。
「シャリンは……大丈夫なのか?」
「今の所はな。しかし魔王レベル同士の衝突……どちらかが死ぬだろうな。それどころか周りも無事では済まないだろう」
シャリンとサタンの殴り合いが始まっている。
一発殴るごとに激しい衝撃が発生して立っていることすら厳しい。
「若造が! 無駄なことを!」
サタンが黒い魔力の玉を放つ。
一つ一つが双頭の悪魔ほど巨大な魔力の塊で離れている圭も強い魔力を感じていた。
「ふーん」
迫り来る黒い魔力の玉を見てもシャリンはとても冷静だった。
黒い魔力の玉一つにつき拳一振り。
シャリンが黒い魔力の玉を殴りつけると大きな爆発が起こる。
「……やったか? ふん……もう少し先ならば戦いも分からな……」
「まだ分からない」
「なっ!」
爆発の黒い煙の中は飛び出してきたシャリンにサタンは反応が遅れた。
サタンの肩に拳がヒットして城に吹き飛んでいった。
「ふふふっ、才能あふれているな」
力の使い方はまだまだ未熟。
しかし圧倒的な暴力をシャリンは誇っている。
もっと力の使い方を覚えれば魔王として周りも認めざるを得ないだろうとルシファーは愉快そうに笑う。
「ふざ……けるなぁ!」
「し、城が……」
黒い爆発が起きた。
その衝撃で巨大な城が消し飛んでしまった。
「圭、みんな、ここを離れろ」
「だけどシャリンが……」
「いいから! このまま戦いの近くにいればお主たちが死んでしまう!」
シャリンを心配するのはいいが魔王同士の戦いは近くにいるだけで力の衝撃が襲いかかってくる。
まともに衝撃を喰らえばダンテやジャンであっても危ない。
「クォカドオーン、こやつらを守ってくれ」
「……けれど」
「シャリンは私に任せろ」
「任せろって……」
「ルシファー!? ど、どうしたんだ!」
急にルシファーの体から力が抜けて動かなくなる。
圭が揺すってみてもルシファーは何も反応もない。
「圭、離れよう!」
「……ルシファー、傲慢な悪魔……傲慢さとは常に己に正直でいることよ」
「クォカドオーン?」
「シャリンはきっと助けてくれるはず。だから離れるのよ」
「早く!」
圭たちはシャリンとサタンの戦いから離れる。
残った城の破片すらも粉々に消し飛び、地面が陥没して地形が変わるほどの戦いが繰り広げられている。
戦いの衝撃が伝わってきて離れていても安全なところなどないのではないかと思わされる。
「シャリン……」
悪魔であっても親としての情があるものなのか、クォカドオーンは心配そうに戦いの様子を見ている。
「シャリンが押されている」
最初はシャリンの方が押しているぐらいの戦いであったがだんだんと勝負の形勢が変わりつつあった。
いつの間にかサタンの方がシャリンを押し始めていた。
力の扱い方も未熟であるし戦いの経験もシャリンにはほとんどない。
実際の力ではシャリンの方が上かもしれないがそうした差が少しずつシャリンとサタンの戦いの形勢を傾けていた。
このまま戦い続けてしまうとシャリンが負けるのではないかとみんなが思い始める。
無表情で戦っていたシャリンの顔に少し焦りの色が浮かぶ。
「どうすれば……」
攻撃の一発でもくらえば圭たちはやられてしまう。
シャリンを助けるどころか助けに入れば邪魔にすらなってしまうだろう。
「ふふ、流石にサタンには敵わないか」
「えっ!?」
ルシファーが依代にしている人形は圭が抱えている。
なのにルシファーの声が後ろから聞こえてきた。
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