封印を解いて11
「大丈夫ですよ」
鑑定できるということを鑑定する以外に証明する方法がない。
須崎が疑うのものもっともな事である。
特に今回圭が鑑定するのは鑑定不可、つまりは通常の鑑定では分からない可能性がある物を鑑定する必要がある。
圭が鑑定するものが本当にただの鑑定不可のものの可能性もあるけれど、圭に鑑定スキルなんてなくて鑑定不可だったと言い訳して逃げられる可能性があった。
とりあえず今のところ圭が鑑定できそうなことは信じてもらえた。
疑いが晴れたのなら怒ることもない。
「では今度こそ始めてもいいかな?」
剣心が須崎に視線を向けると須崎は大人しく頷いた。
「では今回鑑定してほしいものはこの三つだ」
剣心は風馬から受け取った二本の刀と自分のそばに置いてあった剣を圭の前に置いた。
「どれもゲートで見つかったものだが須崎の鑑定では特に何も出なかったものだ」
「手に取っても?」
「構わん」
圭は一本の刀を手に取った。
ずっしりと手に重さがかかる刀をゆっくりと抜いてみる。
「おおっ」
「きれい……」
刀の良し悪しは圭たちには分からない。
けれど音もなくスラリと抜かれた刀は芸術のような美しさを誇っていて、みんな思わず声を漏らしてしまった。
「……ただの刀のようですね」
圭が真実の目で見てみると刀は刀であるが魔力を宿していたり特殊な効果がある刀ではなかった。
「……そうか」
「では次を」
鑑定が終わった刀を横に置いて次は剣を手に取ってみた。
鞘から抜いてみると大振りの両刃の剣だった。
弱くはなさそうであるが真実の目では特別な説明も出ずに普通の剣として処理されていた。
「じゃあ最後のものを」
少し須崎の目が怖い中でもう一本の刀を手に取る。
「……これは」
「さっきのやつより綺麗だな」
「カッコいい……」
今度の刀は真っ黒な刀身をしていた。
ただ刃の部分はわずかに色合いが違っていてこちらもまた美術品のような美しさがある。
「明らかに何かありそうな見た目をしているだろう?」
「ですが私の鑑定では何も出ないのです。持ってみてもなんの効果もなく……見た目だけとは思いにくいのですが」
確かに黒い刀というのは珍しい。
あたかも何かありそうな雰囲気がしている。
『覇刀黒竜牙
ブラックドラゴンの牙から作られた刀。
強力な魔力を持つブラックドラゴンの牙を削り出して加工した刀はこの世に一つしかない。
特殊な技術を必要とし、金属にも負けない硬度と高い魔力伝導性を誇る。
所有者の魔力を食らう代わりに所有者に力を与えてくれる。
神が作りし武器にも匹敵する品質で高く魔力の流れや魔法の発動を補助してくれる。
魔力適応率が高く使用時に体力と筋力と速度に補正を得られる。
あまりにも強い力を持つために力を封印されてしまっている。
適性魔力等級:A
必要魔力等級:A』
「おっ!」
「どうだ?」
「こちらも力を封印された魔道具のようです」
「本当ですか!」
信じられないといった顔をして須崎が立ち上がる。
「失礼ですがいいですか?」
「はい、どうぞ」
圭が須崎に刀を渡すと須崎は睨みつけるように刀を凝視する。
鑑定スキルを発動させようとするけれど黒い刀に対しては何も発動しない。
「どのような効果が?」
「持っている人の魔力を使って能力を強化してくれるようです。危険だから力が封印されている……らしいですね」
「そんなことまで分かるんですか?」
「ええ」
他の人が鑑定でどう見えているのか不明だが圭の目にはざっくりとしたアイテムの説明が見えている。
神様が持っていた世界の知識にアクセスすることができる力が元になっているのだが、神様を悪魔であるガルガトが倒して奪った。
力としてはかなり劣ったものになっているのだけど、それがスキルとして圭に宿る際にさらに劣ったものとして真実の目になった。
それでもある程度色々な情報を見ることができる。
「剣心さん!」
「ダメだ」
「ま、まだ何も言ってません!」
「信じられないから封印を解けというのだろう?」
「そうです……」
「こちらが約束を果たすのが先だ」
本当に封印された力があるなら解いてみれば分かるはずだと須崎は剣心のことを見た。
しかし剣心は須崎の意図を理解しつつも首を縦に振ることはない。
「封印の解除もそう簡単に出来ることじゃないのは君も分かっているだろう。ここでそちらを優先すると村雨さんたちを待たせてしまうことになる」
「それは……そうですね」
「騒がしくしてすまないな。封印を解くのも無制限というわけではない。一度力を使うとしばらく時間を置かねばならないのだ」
剣心としても圭の言うことが本当かどうか黒い刀の封印を解いて確かめたいところではある。
ただ封印を解くのも簡単ではなく制限やクールタイムのようなものがあった。
今黒い刀の方の封印を解いてしまうと再び封印が解けるようになるまで圭たちのことを待たせてしまうことになる。
圭が約束を果たしてくれたのにそんなことをしてはあまりにも不義理になってしまう。
「約束は果たされた。村雨さんのことを信じて、こちらも約束を果たそう」
この期に及んでウソもないだろうと剣心は思う。
圭がしっかりと鑑定してくれたのだと信じることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます