居候、増える
[ケイのところの方がいい……]
[しょうがないだろ? 身分証もなく借りられるのがこんなところしかないんだ。金もないしな]
もう遅いから電車なども走っていないからと1日夜滝の圭の部屋に泊まったダンテとユファはダンテの部屋に帰っていた。
繁華街からだいぶ外れたところにあるボロアパートがダンテの家だった。
今の時代身分証もなく活動するのはなかなか辛い。
家を借りるのにも金も身分証もなくて苦労した。
ようやく借りられたのがボロアパートの一室であった。
圭と夜滝の部屋はRSIの寮ではあるがかなり良い部屋であった。
それに比べるとダンテの部屋はどうしてもボロい。
逃げてきていい生活できるとは思っていないが、ちょっと想像を下回る感じがあるのは否めなかった。
[まあ少しは我慢しろ]
[ルシファーお姉様!]
ダンテが部屋を借りた時には置いてあった古ぼけた机の上に置いてある人形が話し出した。
それはダンテが持っているルシファーの人形で、ルシファーが乗り移っていた。
ユファはルシファーのことをお姉様と呼ぶ。
実際悪魔に性別などあってないようなものであるが今のところルシファーは女性として姿を現しているのでユファにとってはお姉様であるのだ。
[こやつも色々頑張っているのだ。他の悪魔の手下どもの居場所を突き止めている。上手くいけば他の悪魔どもから金でも奪ってまともな生活もできるはずだ]
[まさかお姉様もこのようなところで生活を……?]
[私は普段はいないからな]
[何ということですか! まともな料理道具もないボロ屋にお姉様を置いておくだなんて!]
[ユファ……全部聞こえているぞ]
他に部屋などないアパートなのだ、もちろんダンテも同じ部屋にいる。
ユファの言葉はダンテにも丸聞こえである。
ただ間違ったことでもないので苦笑いを浮かべるしかない。
[それにここは壁が薄いんだ。あまり大声を出されると困る……]
[ダンテ! お姉様の使徒ともあろうお方がそんな……]
「うるせえぞ!」
[ほら……怒られる]
壁がドンと叩かれてユファはビクッとした。
大きな声で話すものだから隣の住人が怒ったのである。
[嘆かわしいとは私も思うが今は耐え忍ぶ時なのだ。恨みと力を溜め、私たちを敵に回したことを後悔させてやれ]
[分かりました……]
[ただダンテが自炊もできないのはいただけないがな]
[日本では料理ができなくても生きていけますし……]
[ケイというものは料理が上手いらしいぞ?]
[ですが私の方が強いですし……]
[男の魅力は腕っぷしだけじゃないわよ、ダンテ?]
[くっ……]
ーーーーー
「トイウワケデココニキタノ」
[うふ、通訳ありがとう]
「というわけでって……」
圭が家に帰ってくると家の前で膝を抱えて座る女の子がいた。
誰かと思ったらそれはユファであった。
何しにきたのか話を聞こうとしたけれどあいにく圭は英語がわからない。
夜滝も英語の論文を読んだりするので英語は軽く分かるけれど流石に本場の流暢な英語はなかなか聞き取るのも難しい。
そこでフィーネが通訳してくれた。
いろんな国の言葉を聞き取れるのでユファの言葉を聞き取って圭たちに伝えてくれた。
そして話によるとユファはダンテのところから逃げ出してきた。
すぐに壁を叩いてくるような隣人がいるボロアパートでの生活に耐えかねて圭の部屋にしばらく泊めてほしいということのようである。
[ね! いいでしょ? ちゃんとお礼はするし、お金稼げるようになったら返すから!]
擦り寄ってくるユファの顔面の破壊力は高い。
ちょっといい匂いなんかして思わず顔が緩んでしまいそうになる。
「仮に泊めてほしいというのなら……」
ムッとした顔の夜滝が圭とユファの間に無理矢理割り込む。
「こういうことはやめてもらおうか?」
[なんて?]
[マスターニベタベタスルトブッコロス!]
[へっ?]
[マスターハフィーネノ!]
フィーネにも怒ったような顔を向けられてユファの顔が凍りつく。
[なるほどね……分かったわ。こういうことはもうしないから。ほんとにあそこ嫌なの]
ユファは降参するように両手を上げる。
夜滝といいフィーネといい圭はモテるのだなとユファは思った。
助けに来てくれてしそれなりにいい男だと思うけどここで圭に手を出して夜滝たちを敵に回すのは得策ではない。
「どうする、夜滝ねぇ?」
今回は圭が夜滝に意見を伺う。
泊めるとしたら圭の部屋というわけにはいかない。
やはり夜滝の方の部屋ということになる。
「もし泊めなかったら?」
[無理矢理居座っちゃうかも]
語尾にハートでもつきそうな勢いのユファは軽くウインクしてみせる。
「……まあ部屋はあるから」
無理に圭の部屋に居座られてはたまらない。
相手はB級覚醒者であるし番犬ぐらいになるかもしれない。
そう思うことにして夜滝はユファを家に泊めることにした。
「悪いな、圭」
「ルシファーさんもいたんですか」
気づいたら圭の足元にルシファーが立っていた。
「あの子は前から言い出したら聞かなくてな。まあ……私もあそこはあまり好きじゃない。悪魔の世界の方がまだ住みやすい」
「……そうなんですか」
「まあ今は襲撃の計画も立ててるので少し泊めてもらえればいいと思う」
「というか、ルシファーさんも?」
「あの子を見張る者が必要だろう?」
それは単なる言い訳なんじゃないかと思いながらもルシファーとユファに恩を売っておけるのならいいかと思うことにした。
「私はコンビニ飯ではなく和食が食べたいのだが……」
「今日は肉じゃがです」
「うむ! よさそうだな! やはり私の眷属に……」
「それは遠慮しておきます」
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