妹分を助けろ4
「おっ、移動し始めたぞ」
遠くから悪魔教の連中を眺めていたら慌てたように移動し始めた。
「ジャジャーン」
どうしようかと迷っているとフィーネが戻ってきた。
「フィーネ! どうだった?」
「ユファヲミツケタッテイッテタ」
「それは本当か?」
悪魔教が移動を始めたのはどうやらユファのことを見つけたからのようである。
「じゃあついていけばユファを見つけられるかも」
「追いかけてみよう」
圭たちは距離をとって悪魔教の連中を追いかける。
ユファのことを探すのに集中しているのか離れて追いかける圭たちのことは全く気づいていない。
「何をしているんだ?」
さらに奥に進むにつれて起伏が穏やかになってきてやや木が増えた。
それでもまだ生え方はまばらであったのだけど中には木が密集している小さい林のようなところもあった。
そうした小さい林の前で悪魔教の連中は立ち止まった。
キョロキョロと周りを見回して何かを探している様子に見える。
顔の左半分に刺青が入っているウィルソンが剣を抜いた。
そして体をねじるように大きく剣を引くと林に向かって振った。
剣から魔力の斬撃が飛び出して林の木々が一気に切り倒されていく。
「あっ、あれ!」
倒れる木の影から女性が飛び出してきた。
流れるような金髪の女性はダンテが持っていた写真に写っていたユファであった。
『ユファ・クレイストン
レベル240[161]
総合ランクC[D]
筋力A[C](英雄)
体力C[D](無才)
速度C[D](無才)
魔力A[C](英雄)
幸運D[E](無才)
スキル:闇を穿つ狩人の矢[貸与]
才能:月の友』
ちょっと距離が遠くて確かめられなかったので木に隠れようにしながら近づいて圭の目で確かめる。
確かに女性はダンテが助けてくれと言っていたユファであった。
悪魔教の連中は何かを叫んでユファを取り囲むように動いている。
あまり状況的にはよくなさそうだ。
ユファは圭の目ではB級覚醒者であるがウィルソンという男も同じくB級覚醒者である。
こうなると例え格下の覚醒者ばかりでも人数差があってユファの方が不利になる。
「どうする?」
「助けよう。このままじゃやられてしまう」
周りを見ても人はいない。
それにいたところで厳つい男たちが人を襲っている場面に関わりたいと思う人は少ないだろう。
「B級が一人、C級が二人、D級も二人……あとはE級か」
ウィルソン以外の戦力も確認する。
圭たちの戦力ではウィルソン以外の悪魔教たちも厳しいと言わざるを得ない。
せめてB級がいなければと思うけれどユファ一人ではB級二人を相手にするのは厳しいだろう。
「このまま助けられんのか?」
ユファと悪魔教との戦いが始まってしまった。
C級以下の悪魔教はユファの周りを取り囲んで逃さないようにして、B級の二人がユファと戦う。
「……逃げよう」
「逃げるって……」
「そうじゃなくて、ユファを連れて逃げよう」
一瞬ユファのことを見捨てるのかと思ったけれどそうじゃなかった。
このまま戦っても勝算は少ない。
奇襲して周りにいるC級を片づけられてもB級を倒すことは圭たちではほとんど無理である。
ここはユファを助け出して逃げればいいと思った。
どうにか助け出してどうにか下の階に向かえばそこにはダンテがいる。
A級覚醒者の力を持つダンテならB級覚醒者になんか負けはしない。
「どうにか四階まで行ければ俺たちの勝ちだ」
「なるほど……」
「派手にいこう。助け出して一気にエントランスに向かう。薫君、英語でダンテが四階にいることを伝えてくれ」
「分かりました」
助け出して逃げるだけなら正面から戦う必要もない。
派手に目を引いて相手を一時的に混乱させてしまえばいいのだ。
「夜滝ねぇ、カレン、頼むぞ!」
「任せておきなさい」
「やったらぁ!」
まずは夜滝が魔法を使う。
魔力が火と水の大きな玉に変わっていく。
同時に二つの属性を使うことによって防御を難しくする。
「いくよぅ!」
「おう!」
夜滝が魔法を放つと同時にカレンを先頭にして圭たちも走り出す。
[な、なんだ!?]
[避けろ!]
急に飛んできた火と水の玉に覚醒者たちが慌てて回避行動を取る。
しかしかわしきれずに直撃した覚醒者もいた。
二人の男に挟まれるようにして戦っていたユファは避けることができなかったけれど、夜滝にしっかりコントロールされた玉はユファには当たらない。
「大地の力ぁ!」
二人の男たちが離れた隙をついてカレンがスキルを発動させる。
メイスで地面を殴りつけると地面が盛り上がって圭たちからユファの方までを広く囲むような壁が出来上がった。
[僕たちは味方です! ダンテさんが四階にいるので一緒に逃げましょう!]
薫がユファに英語で話しかける。
親が外国にいる薫は軽く英語でも話せるのだ。
驚いたようなユファは圭の顔をじっと見て、すぐさま走り出した。
[何してるのよ! 早く行くわよ!]
ちゃんと通じているのかと身構えたがユファは圭たちの横を走り抜けていかないのかと怪訝そうな顔で振り返った。
「……いこう!」
壁の向こうから怒号が聞こえる。
圭たちはさっさと走り出してエントランスの方に向かった。
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