覚醒者チュートリアル3
「それで何の用ですか?」
「ふっ、冷たいな。何の用というかお前たちのサポートでもしてやろうと思ってな」
「サポート? 何か手伝ってくれるのか?」
「何かあればしてやるが、俺にできることはほとんどない」
「…………」
「そんな目で見るな」
手助けしてやるなんていう上から目線の割にできることがほとんどないとは何事なのか。
思わず圭は黒い羽を怪訝そうな目で見てしまった。
「こちらも色々と制限があるのだ。それに塔を作ったのは俺でもないし他の階についてはあまり知らない」
ヤタクロウはシステムを作ったという功績から塔の階の一つを任されている。
しかしヤタクロウは塔を作った神ではなく、塔の中についての細かな情報を持っていなかった。
それぞれの階にどんな神の世界があってどんな試練があるのかは秘密にされている。
それぞれの階の神は不干渉がルールであるし干渉していることがバレればせっかくもらった塔の権限を剥奪されてしまうかもしれない。
「なら何を手伝ってくれるというんだ?」
ただいるだけなら手伝うも何もない。
「塔の神については知らないがそれ以外の神についてはお前たちが攻略している様を覗いたりしている。時に己の力を使って干渉することあり得るのだ。そちらについては俺にも情報が入る」
それぞれの階を管轄する神は自分の階も他の階にも干渉は許されない。
しかし関係のない神は自分の力を消費して塔の世界に干渉することが許されている。
当然限度や制限はあるもののこれまでも時々干渉が行われてきたのだとヤタクロウは言う。
「いわゆるシークレットクエストなんていうやつも他の神の干渉のせいでクリアされたこともある」
「そうなんですか」
圭たちは驚いた。
他の人たちがどうやってシークレットクエストを見つけたのか謎だったが、運が良いということだけでなく他の神の干渉のおかげだった時もあるのだ。
「ただ干渉というのは良いことばかりではない。お前……何をした?」
「何とはなんですか?」
「どっかの女神がお前のことひどく嫌っているぞ。それこそ早く塔を登ってこいと願うほどにな」
「……あー」
女神になら心当たりがある。
四階で平穏の女神という危険な相手を偶然倒してしまった。
本体ではなかったようだが女神を倒してしまったことによりその女神が圭を敵対視している。
「心当たりがあるのなら別にいい。俺はそいつが何をしようとしているか探りを入れてみる。何をしようとしているか分かるかもしれない」
「なるほど……ありがとうございます」
「お前に死なれては困るからな。ちなみに他の神に聞いた話ではこの階のシークレットクエストは卵を探してみるといいらしい。成功した者はいないらしいが意外と見つかるらしいからな。それじゃあな」
「あっ……」
黒い羽が煙のように消えてなくなる。
言うだけ言ってヤタクロウは消えてしまった。
「まあ……悪い話じゃなさそうだな」
「うん、手助けしてくれようということではあるみたいだねぇ」
なんだかんだ八階のシークレットクエストについても情報をくれたヤタクロウ。
味方であることは確かなのだけど、話を受け入れる時間が少しは欲しいものであると圭は苦笑いを浮かべた。
「卵ねぇ……」
「おそらくシークレットクエストのフェルリルの卵ってやつですかね?」
「そうだと思うよ」
シークレットクエストについて情報をくれたということはどうやらヤタクロウは圭がシークレットを見えていることを知らないようだ。
「卵にも気をつけつつレッドフォックスを探すか。あと半分だ」
情報をもらったけれど方針は変わらない。
見つけられたらやってみるぐらいで積極的に探しにはいかない。
波瑠の飛行練習がてらレッドフォックスを探しつつ倒していく。
「マジで暑いな……」
「ほら、水飲んどけ」
「サンキュ」
立ってるだけでも暑いのにレッドフォックスを探して歩き回り、戦うと余計に汗をかく。
こうした環境であるとわかっていたのでやや軽装であるけれど装備品を外せはしない。
適度に休みながら水分補給なんかも忘れずにしておく。
「あと何体だ?」
「あと3だな」
「んじゃ、さっさとやろうぜ。このままじゃ干からびちまう」
カレンが手の甲で汗を拭う。
寒ければ着れば対応できるが暑いと対処は難しい。
仮に装備まで外したとしてもほとんど楽にはならないだろう。
暑さに対応するよりもレッドフォックスを倒した方が手っ取り早い。
「薫、大丈夫?」
「はい……大丈夫です」
体力値が低いためだろうか薫は暑さにやられてぐったりしている。
「ほれ」
「ほわぁ〜、ありがとうございます」
「あっ、いいな!」
「それ私にもやってくれよ!」
薫を見かねた夜滝が杖の先から冷風を出す。
氷と風、ダブルキャストを使える夜滝ならではのやり方であるが、見る人が見たらかなりの力の無駄遣いである。
「すずしー!」
「というか夜滝ねぇ……自分に向けてやってるね?」
「……バレたか」
「なんか汗もかいてないなと思ったんだ」
こんな暑い中にあった珍しく夜滝は文句も言わなかった。
暑さでやられているのかなと思っていたけれど魔法エアコンを自分に発動させて快適に過ごしていたのである。
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