出会い、あり8
[な、何だあれ!]
[ドールか?]
圭の胸から飛び出したフィーネが人型になって男たちがざわついた。
知らない人からしてみるとフィーネは奇妙で不思議な存在であり、圭たちが謎のアイテムを出してきたように思えていた。
[誰かの能力かもしれない!]
「ピピ、ヤル!」
「フィーネ!?」
男たちはフィーネのことを圭たちの誰かの能力による操り人形だと解釈した。
やる気が爆発したフィーネは勝手に一人で突っ走る。
[壊してしまえ!]
走ってくるフィーネに男たちは動揺を見せながらも一切に攻撃を加えた。
「フィーネ!」
「ピピピ……」
男たちの前まで行ったフィーネは何本もの剣を受けた。
けれどどの剣もフィーネの表面で止まっていて傷の一つもついていない。
[か、硬い!]
「ピッ!」
[うわっ!]
「ピーッ!」
フィーネが自分の体で止まっている剣の一本を掴んで引き寄せる。
そのまま飛び上がるようにして男の脇腹を殴りつけた。
[トーマス!]
男たちの膝丈ほどまでしかないフィーネに殴られて男がくの字になって宙を舞う。
「いくぞ!」
男たちは思わず飛んでいく仲間のことを仰ぎ見てしまった。
その隙に圭たちも動き出す。
「フィーネツヨイ!」
フィーネはすぐにもう一人殴り飛ばしてジャジャンとポーズを取る。
確かに強い。
後で勝手に突っ走ったことを注意しながらも褒めてやらなきゃなと圭は思った。
「いくよぅ!」
夜滝の魔法が男たちに襲いかかり、反応が遅れた男に直撃して大きく崩れる。
男たちが動揺している間に圭、波瑠、カレンはそれぞれ別の相手を狙う。
[こいつら!]
波瑠とカレンは上手く相手を倒した。
圭が狙ったのは唯一のC級で、致命傷を与えられはしなかったものの大きく胸を切り裂くことがてきた。
[この……!]
「カッとして周りが見えなくなると危ないぞ」
C級の男は怒りの表情で圭に切りかかる。
相手の方が力も速度も速いけれど薫の支援を受けた圭はなんとか攻撃を防いでいた。
攻撃を受けたせいか怒りに呑まれている男の攻撃は大振りで防御に専念すればそんなに防ぐのは難しくなかった。
このまま戦い続けると圭の方が危なかったかもしれない。
けれど圭は一人ではない。
「ふんっ!」
フィーネの急襲とそれに続く波瑠たちの攻撃で相手の数は減っている。
波瑠が残りの一人の相手をしてカレンは圭の方に加勢に来てくれた。
後ろから頭を殴られてC級の男は目玉が飛び出しそうな衝撃を受けた。
[くっ……ガッ…………]
「油断したな」
すぐさまカレンの方を振り返ったC級の男の胸を圭は剣で一突きにした。
「波瑠、大丈夫か?」
「こっちは問題なーし!」
C級の男が倒れて動かなくなったのを確認して波瑠の方を見た。
波瑠の横で水に濡れて男が倒れている。
夜滝の魔法でやられたようだ。
「ちょっと心配だったけれどフィーネのおかげで怪我なく倒せたな」
「フィーネノオカゲ!」
嬉しそうにフィーネが圭の体に飛びついた。
圭が撫でてやるとフィーネは嬉しそうに目を細める。
「あっちも終わってるようですね」
肝心のダンテとギドラーの戦いもほとんど決着がついていた。
[バケモノめ……]
[偉大なルシファー様に挑んでおいて勝てると思うなど傲慢だな]
[怪我をしているから勝てると言われてここまで追いかけてきた。貴様の首を持ち帰れば新たなる力と順位が与えられるはずなのに……]
ダンテは右腕を切り飛ばされて膝をつくギドラーを冷たく見下ろしている。
勝算は十分にあったとギドラーは思う。
しかし計算外の相手のせいで全てが狂ってしまった。
[ふっ……運もなかったな]
ダンテは自分の剣を持ち上げてギドラーに向けた。
刃が折れた剣はギドラーの首まで届かなかったが黒い魔力が折れた刃を補って伸びる。
[地獄に行ってお前の仕える悪魔に伝えるといい。身に合わない傲慢は己を焼き尽くす炎となるとな]
ギドラーの首がダンテによって切り飛ばされた。
「……お前ら……話し合い……で」
ギドラーを倒したダンテが圭たちの方を振り向いた。
誓いがあるとはいえ、何をするつもりなのか信頼はないので圭たちは武器を構えて警戒する。
「……倒れちゃった……」
「そりゃこうなっていれば仕方ないよな」
激しい戦いだったことは折れた剣だけでなくダンテの服を見れば分かる。
途中傷口が開いたように腹部に血がにじんでいたが、今は広く腹部が真っ赤になっている。
かなりの出血量である。
それこそこのままにしておけば死んでしまいそうにも思える。
「どうする?」
「どうするって言ったって……」
判断のしようもない。
誓いがあるから襲われないのかもしれないが先に襲いかかってきたのはダンテである。
どうやらギドラーたちもダンテを追いかけてきたようなので圭たちは巻き込まれた形となる。
「放っておく……」
「ん、なんだ?」
「お兄さん、どうした?」
「いや、急にまた表示が……」
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