出会い、あり5
「カレン、気をつけろ! そいつA級覚醒者、しかも悪魔だ!」
「なに!?」
「やはり俺のことを知っているようだな。さっさと終わらせる」
ダンテの体がブレるように消えて、次の瞬間にはカレンの目の前に現れた。
「カレン!」
「くぅっ!?」
「ほぉ……盾ごと切るつもりだったのに」
ダンテの剣はカレンの盾に当たった。
カレンは腕が砕けてしまいそうな衝撃を感じながら大きく後ろに押されたがなんとか倒れずには済んだ。
しかしカレンがダンテの攻撃を防いだというよりもダンテがわざとカレンの盾に剣を当てたのである。
カレンからも強い力を感じなかったダンテは盾もそのまま切り裂こうとしていた。
盾が丈夫で硬かったからカレンは無事だった。
A級覚醒者との力の差を感じずにはいられない。
見えないわけではない。
元いた位置からカレンのところまで移動した姿を圭はなんとなく見ていた。
ただ見えていても対応できるかはまた別問題である。
「薫!」
「はい!」
今防げたのはダンテの気まぐれにすぎないとカレンも分かっている。
薫がカレンを強化する。
「次はない!」
盾が硬くて切り裂けないのなら盾を避けて攻撃すればいい。
カレンが盾を構えて、ダンテが再びまでカレンに一瞬で接近した。
かつて和輝は言った。
たった一度だけ、初見の相手ならばカレンは確実に攻撃をすることができる。
全く推奨されるべき方法ではなく、和輝としてはやってほしくない方法。
しかしこれ以外に方法はないとカレンは思った。
「うらああああっ!」
正面に盾を構えようとも左右どちらかの手に持つ以上は偏りというものができてしまう。
カレンは右利きで右手にはメイスを持ち、盾は左手に持っている。
左手に盾を持っている都合上防御範囲としても左側が強くなる。
つまり相手から狙うとしたらカレンの右側になる。
「なっ!?」
ダンテが消えたと思った瞬間カレンは右側に体を動かした。
「女……なめんじゃねぇ!」
カレンの予想通りダンテはカレンの右側に回り込んで剣を振っていた。
脇腹に刃が食い込んでカレンは顔を歪めた。
けれどダンテの方に一歩踏み込んだおかげで速度が乗り切る前の剣の、力の入りにくい根元で攻撃を受けることができた。
高い防御力と回復力を持つカレンに和輝が授けたのは最後の最後にどうしようもなくなった時に繰り出す捨て身の一撃だった。
多少のダメージでもカレンは自己回復できてしまう。
即死の攻撃でなければ動いて十分な攻撃を繰り出すことができる。
もちろん和輝としては孫娘のカレンにそんなことしてほしくはない。
だが怪我を負ってまで相手の隙を作り出して攻撃を加えることも生き残るためには必要となる時が来ないとは言い切れない。
相手はA級覚醒者。
とてもじゃないが勝てるとカレンでも思わない。
ボロボロになってから捨て身の一撃を放てばそれこそ死んでしまうかもしれない。
相手がまだまだ油断していてカレンにも余裕がある最初こそ捨て身で一撃を加えるべきだと判断した。
「うらああああっ!」
メイスを手放してダンテの袖を掴んだカレンは盾でダンテの顔面を殴りつけた。
「この……!」
「ぐっ!」
「カレン!」
カレンの全力の一撃はダンテをわずかにのけぞらせた。
だがすぐに持ち直したダンテは逆にカレンのことを殴り飛ばした。
「薫君!」
「は、はい!」
殴り飛ばされてごろごろと転がってきたカレンはグッタリとして動かない。
これまでどんな重たい攻撃にも耐えてきたカレンがたったの一撃で倒されてしまった。
薫が慌てて治療を始めて圭がダンテに切りかかる。
「なんでこんなことをする!」
「……なんでだと?」
ダンテはいとも容易く圭の剣を受け止める。
圭が全力で力を込めてもダンテはわずかも押されない。
「そんな……うっ!」
急にダンテの視界が歪んで体から力が抜けた。
これは好機だと圭が剣を振り上げるとダンテは胸を浅く切られながら苦しそうにかわした。
様子がおかしいけれど理由を気にしている暇も手加減してやるような余裕もない。
「はああっ!」
理由は知らないけれどダンテは圭を敵対視している。
倒さねばみんな危険に晒される。
「……貴様、俺に何をした!」
振り下ろされた剣をダンテは素手で掴んだ。
いかにA級覚醒者といっても人は人。
スキルでもなければ皮膚が金属のように硬くなるわけでもない。
剣を掴んだ手から血が垂れる。
苦しそうに顔を歪めたダンテは圭を睨みつけている。
カレンがメイスではなく盾でダンテを殴ったのには理由がある。
圭は悪魔の力を持っていると言った。
カレンの持つ盾は魔を払う力があって、かつて悪魔教と戦った時に悪魔の力を人の体から追い出したり悪魔の力を弱らせたりした。
だからカレンは盾でダンテを殴ったのだ。
ダンテの力もやはり悪魔の力で盾に殴られた影響が出ているようであった。
「大人しく言うと思うか!」
「くそッ!」
圭が思い切り剣を引くとダンテの指が切れて血が飛ぶ。
「こっちにもいるよ!」
ダンテの後ろに回り込んでいた波瑠がナイフを突き出す。
「なんだと……」
ダンテは素早い素早い反応を見せて、波瑠のナイフを防いだけれど刃がダンテの剣に食い込んで驚きを隠せなかった。
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