うるさい魚1

『叫ぶカエルアンコウを倒せ!

 叫ぶカエルアンコウ 0/30


 シークレット

 クイーン叫ぶカエルアンコウを倒せ! クリア』


「……シークレットクエストがクリアになってる?」


「ああ、そうみたいだ」


 六階に上ってきた圭たちの前に六階の試練が表示された。

 かなみはすでに十階まで攻略したことがあるので表示は出ていない。


 例によって圭の表示にはシークレットクエストについて見えていた。

 しかしシークレットクエストはクリア済みになっていたのである。


「あなたたち以外がクリアすることなんてできるの?」


「できるっちゃできるんだ」


 圭たちが塔を登り始めた時点でアメリカと中国がそれぞれ一回ずつクリアしているということは聞いている。

 つまり偶然だとしても少なくとも二回シークレットクエストはクリアされていることになるのだ。


 圭のようなシークレットクエストを看破できるスキルがあるかもしれないが、もしそんなものを誰か持っているとしたら今頃各階のシークレットクエストはクリアされてしまっていただろう。

 けれどアメリカや中国をもってしても偶然でしかシークレットクエストをクリアしていないということは今のとこら圭のみがシークレットクエストを見られるのである。


 つまりシークレットクエストが確認できなくてもどうにかしてシークレットクエストの条件を達成すればクリアできるということになる。


「クリアしている階があってもおかしくはないな」


 三階もクリアになっていた。

 同じように六階がクリアになっていてもおかしな話ではない。


「ただこうなると分からないねぇ」


 シークレットクエストに関して五階は何もなかった。

 そこで一階から四階までが特別にシークレットクエストがあったのだという説と五階だけがむしろシークレットクエストがない特別な階だったのだという説があった。


 今のところ五階だけシークレットクエストがなかったのだという説が有力である。

 ただどこかの階からパッタリとシークレットクエストが無くなることもあり得る話ではある。


「にしても……30ってのは……」


「面倒くさいね」


 カレンと波瑠が試練の表示を見てため息をつく。

 モンスターを倒すことは構わないのであるけれど30も倒さなきゃいけないのはかなり面倒であるとみんな思っていた。


「あとはあれだよな……」


「ネーミングセンスだよねぇ」


 モンスターの名前を見て圭と夜滝はあるものを思い出していた。

 圭が覚醒したばかりの時に死にかけたことがあった。


 近くに寄ってきていたモンスターが夜滝を狙って、圭がそれを庇う形で攻撃を受けてしまった。

 その時のモンスターがサイレント叫ぶイノシシなんてちょっと真面目さに欠けたような名前をつけられていた。


 通常モンスターの方は叫ぶイノシシ。

 なんとなくだけど名前の付け方に似たようなものを感じる。


 誰が名前付けているのか知らないけれど同じ人が同じように名前付けてるんじゃないか疑惑がある。

 ちなみにこれまでの経験上未発見でこの世界において名前の付けられていないモンスターはどこかの世界の名前が真実の目で表示される。


 対して発見されて何かしらの名前が付けられたモンスターはこちらの世界での名前が表示されるようだった。

 叫ぶイノシシも叫ぶカエルアンコウももしかしたらもっとオシャレな名前があったのかもしれない。


「まあとりあえずシークレットクエストはないからのんびりと攻略していこう」


 シークレットクエストは難易度も高い。

 これまで運良くクリアできてきたけれど他の階のものもクリアできるとは限らない。


 かなみがいるのでチャンスと思わなくもないが、シークレットクエストがなければないで気兼ねなく塔の攻略に専念できる。


「叫ぶカエルアンコウだけど見た目は割とそのまんまだ」


「カエルアンコウってなんですか?」


 名前の通りと言われても薫はカエルアンコウがどんなものなのか知らなかった。

 みると夜滝とかなみは知っていそうだけどそれ以外は知らなそうだ。


 かなみは戦ったことがあるだろうから知っていて当然である。


「うーん……なんというか……見たほうが早いかもな」


 圭も塔の六階を調べたことがあるから知っているだけで詳しくは知らない。

 百聞は一見にしかずとも言う。


 口で説明するより見てもらったほうが早いだろうと圭は思った。


「まっ、そうだね」


 どうせ30体倒すのだ。

 口で説明している時間があるなら見に行ってもそんなに変わらない。


「にしても……」


 カレンは周りを見回した。

 六階は海だった。


 圭たちが話している間も心地よい波の音がリズミカルに鳴り響き、空は満点の青空である。

 太陽はないのに明るいという奇妙さこそあるがかなり気分のいい場所だ。


 といっても海のど真ん中に残されているわけではない。

 圭たちが立っているのは砂浜。


 海の中にある孤島が六階の攻略の舞台となっているのであった。


「なんだか、気が抜ける場所だな」


 肌でも焼きたくなる天気の良さに戦う気は少し削がれてしまう。


「んー、はぁー! ちょっと違う感じもあるけどやっぱり海は落ち着くわね」


 海に愛された女かなみはグーッと体を伸ばした。


ーーー

後書き


いつもお読みくださりありがとうございます。

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あとちょっとです!

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作品はのんびりと続き書いていきます!

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