【九章完結！】人の才能が見えるようになりました。～幸運な俺はいい才能を持つみんなと一緒に世界を救う～

モンスターを呼び出す怪しい連中2

「ふふ、それよりカレンとはどうなっている？　キスぐらいはしたのか？」

「いやそんな！」

　八重樫家族において和輝は圭にカレンを薦める。

　それでいいのかと思うが、そんなに無理矢理くっつけようともしてはいない。

　むしろカレンとの関係に関しては優斗の方が厳しい目で圭のことを見ている。

　最近は圭さんなら……なんて陰で言ったりしているけれどそれを知らない圭はなんとなくカレンの父親みを優斗から感じていた。

　和輝は圭に剣の使い方も教えたりしているので師匠のような存在である。

「流れていく時というのは早いものだ。今この瞬間が一番若いのだから少しは楽しんでおけ。休むことは心の活力。明日の戦う力になる」

「覚えておきます」

　和輝とその奥さんとの話を聞いたりしながら歩いていると人通りが少なくなった。

　子供たちの登下校と会社帰りの人たちの隙間時間であった。

「どうかしましたか？」

「……魔力を感じる」

　急に立ち止まって明後日の方向を向いた和輝を圭が不思議そうな表情で見る。

　覚醒者はそれぞれ魔力を持っている。

　だから町中でも覚醒者が近くにいれば魔力を感じることはあるのだが、和輝は人が自然と発しているのとは違う魔力を感じた。

　そもそも周りに人はいない。

　誰かが魔法でも使ったようである。

　和輝は魔力を感じた方に意識を向ける。

「近いな」

「向こうには……公園が」

「行ってみよう。もしかしたらゲートかもしれん」

「分かりました」

　足の悪い和輝に配慮して全速力ではなくともそれなりの速度で走っていく。

　和輝が言っていた方向には広めの公園があった。

　町中にあるにしては広めで、明るい時間帯なら子供たちが遊んでいるような憩いの場である。

「これは……なんだ？」

　しかし今は公園全体が白い膜のようなもので覆われている。

「どけろ、圭！」

　白い膜がなんなのか考える前に和輝は杖に仕込まれた剣を抜く。

　なんであれ異常事態なことに変わりはない。

「通報しろ！」

　モンスターであれ人の仕業であれ町中でこんなことするのはマトモじゃない。

　圭は覚醒者教会の方に連絡する横で和輝は白い膜を切りつけるが、剣先は白い膜を滑っていく。

　思っていたよりも白い膜が硬い。

「ならば！」

　今度は剣に魔力を込める。

　魔力を込めた剣は白い膜を切り裂き、スーッと白い膜は消えていく。

　覚醒者教会の方で警察にも連絡してくれることになったので剣を抜いた圭も和輝の後ろをついていく。

「何をしている！」

　公園の中央に倒れた2人の女性とそれを囲むように立つ白いローブの怪しい連中がいた。

　白いローブの連中は驚いたように圭たちの方を見た。

「逃げるな！」

『浦安省吾

　レベル149

　総合ランクD

　筋力E（無才）

　体力D（一般）

　速度E（無才）

　魔力C（一般）

　幸運E（一般）

　スキル：サモンゲート［貸与］

　才能：無し』

　白いローブの連中はすぐさま逃げ始めた。

「なんだ……？」

「モンスターを召喚した！？」

　白いローブの中の1人が懐から黒い石を取り出した。

　何かをボソボソとつぶやくと石が砕け散るように割れて石の中から小さいゲートが現れた。

　ゲートは普通トラックでも悠々と入れるほどの大きさがあるのだが現れたゲートは人ほどの大きさほどしかない。

　そしてそのゲートからモンスターが数匹ひょいひょいと出てきた。

　額にグルグルと渦を巻くような角を持つオオカミみたいなモンスター。

「一般人が危険だ。先にモンスターを倒すぞ！」

「はい！」

　モンスターのすぐそばには倒れた女性たちがいる。

　白いローブの連中を追いかけたいところであるけれど女性たちの安全が優先だ。

「こっちに来い！」

　圭が走り出し、和輝はモンスターに魔力を向ける。

　タンクの原理で挑発してモンスターの注意を女性たちではなく圭たちの方に向かうように誘導する。

『フェデルフ

　額にツノが生えたケモノ型のモンスター。

　生態はウルフなどとよく似ているがツノが立派で大きいほど強い個体とされ、仲間内の争いの際はツノをぶつけ合って優劣を決める。

　素早さとツノの硬さはあるものの特出した強みはない。

　魔石はケモノくさい。あんまり美味しくない。

　肉みたいに焼けたらよかったのに』

　情報を見たところそんなに強いモンスターではなさそうだ。

　真実の目でモンスターのステータスが見れたらいいのにと圭は思う。

　ただ中身の情報や最後に出てくる魔石グルメでなんとなくモンスターの強さが推測できるようにはなってきた。

「はっ！」

　頭を下げてツノを突き刺すように飛びかかってきたフェデルフの攻撃をかわすと圭は剣を振り下ろした。

　一撃で深くフェデルフの腹を切り裂いて素早く別のフェデルフの方を向く。

　突き出されたツノを剣で受け流して首を切り落とす。

　このぐらいの相手なら圭でも全く問題がなかった。

「最後！」

　結局和輝は手を出さず圭1人でモンスターを倒し切ってしまった。

「だいぶやるようになったな」

「和輝さんの教えのおかげです」

「このまま精進するといい。この女性たちはひとまず気を失っているようだ。救急車を呼んでやってくれ」

「そうします」

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