カエルは鶏肉の味らしい3
「圭さん!」
薫が圭を強化する。
相変わらず強化を受けると万能感に近いような気分の良い体の軽さを感じる。
「くらえ!」
圭が剣を振り下ろすとファイヤートードは防御することもできずに頭をかち割られた。
グエエと弱々しく鳴いてファイヤートードは倒された。
「ふぅ」
圭はベロをデロンと出して絶命したファイヤートードの頭から剣を引き抜いて大きく息を吐き出した。
「1体なら大丈夫そうだな」
多少危ない場面はあったけれど大体のところは問題がない。
ファイヤートードの戦い方が分かってくれば危ないこともなさそうである。
D級モンスターということで心配していたが思っていたほどではなかった。
燃えていたファイヤートードの体も死ぬと鎮火したので安心した。
「えっと、発信機を付けて……」
人よりも大きいサイズのファイヤートードを倒す度にゲートまでモンスターを運んでいては効率が悪い。
大きなモンスターほど運ぶことも困難になる。
理想はデビルカウでやっているようにトラックを乗り回して回収しながら戦うことなのだけど、高価なトラックをモンスターが近くにいるところに置いておくのはリスクも高い。
ステルス機能付きのトラックはとてもじゃないが買えるような値段でもない。
一々ゲートまで運ぶより集めてから回収した方が効率がいい。
ただ周りの環境に目印となるようなものも少なく一度倒したモンスターの場所が分からなくなることもたびたび発生しうる。
最初に倒したモンスターの場所に発信機を残して場所を記録し、そこにモンスターの死体を集めるようにするのである。
「ちゃんと反応してるな」
スマホみたいな受信機をいじって発信機がしっかりと作動していることを確認する。
あとは発信機を中心にしてファイヤートードを探し始める。
「ピピ!」
「フィーネ!」
「お、おお〜!」
ファイヤートードを見つけることは難しくない。
またしても地面がこんもりしていたのでバレバレであった。
また最初の一撃をやらせてほしいというのでフィーネに任せてみることにした。
人型フィーネは手をナイフのように鋭く変形させた。
そのまま切り付けるようにファイヤートードに飛びかかったのだが、危険を察知したファイヤートードは飛び上がってフィーネの攻撃を回避した。
そのままベロを伸ばしてフィーネのことを捕食しようとする。
危ないと思ったけれどフィーネは体を捻りながらベロをかわして前に出る。
「ピ……ピッ!」
素早く距離を詰めたフィーネはナイフにした腕でファイヤートードの目を切りつけた。
「やるじゃねえか!」
思っていたよりも軽快な動きにみんなして驚く。
「フィーネ下がれ!」
「ピピピ!」
目をやられた怒りでファイヤートードから炎が噴き出す。
「むっ!」
「私に任せて!」
逃げるフィーネを追いかけるようにファイヤートードが炎を放った。
カレンが前に出ようとしたが、先に夜滝が杖を振る。
水と炎がぶつかってモワッと水蒸気に変わる。
「ピピ、クル!」
圭の肩に逃げたフィーネが水蒸気の中から飛んでくるベロを感知した。
「大地の力!」
ターゲットが特定できない攻撃を防ぐためにカレンがスキルを発動させて地面を盛り上げる。
水を含んで柔らかい土だったがスキルの力で固められるとしっかりとベロを防いでくれた。
「いない……!」
水蒸気が晴れて視界が開けたがファイヤートードの姿はない。
「上です!」
「上? 避けろ!」
まるで隕石。
高く飛び上がったファイヤートードは全身から炎を噴き出し火の塊となって降ってくる。
薫が一瞬早く気づいてくれたのでギリギリのところで回避できた。
ただ燃え盛る炎が生み出す肌を焼くような熱波まではかわせない。
「こっちだ!」
カレンが魔力を飛ばしてファイヤートードを挑発した。
挑発に乗せられたファイヤートードのベロが飛んできてカレンは盾で防御する。
その隙に圭と波瑠で挟み込むようにファイヤートードに近づいて攻撃を加える。
「それじゃあ、こっちも上から落とそうかねぇ」
両側から切り付けられて怯んだファイヤートードの真上に大きな水の玉が浮かび上がる。
「はっ!」
ドンと重たい音を立てて水の玉がファイヤートードの上に落ちた。
「うん、いい感じだねぇ」
ファイヤートードは半分地面にめり込むような形で死んでいた。
「フィーネもなかなかいい動きだったじゃないか」
「ピッピピ〜」
カレンに褒められてフィーネは嬉しそうにしている。
確かに想像よりも遥かに動きが良かった。
フィーネが小さいがゆえに威力は小さかったけれど、今でも十分な戦闘力だし今後にも大きな期待ができる。
戦略の幅が広がりそう。
「よし、じゃあ持ってくか」
倒したファイヤートードを最初のファイヤートードの場所に集めるために移動させる必要がある。
素手で持ち上げるのは普通にあり得るやり方だけど相手が重かったり触ることができないような場合もある。
ファイヤートードは意外と重い上に表面がヌルついた感じがあって持ち上げることが簡単ではない。
それに女性陣にとってヌルついたカエルを持つのはちょっと嫌であった。
そのためにちゃんと持ち運びの方法も用意してきていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます