囚われた王女2
「広い部屋だな」
「女性の部屋っぽい」
中はついさっき整えたかのように整頓されている。
白を基調とした落ち着いた雰囲気の部屋であって男臭さはなくて女性が使っていたような感じがある。
「この中の誰かが使ってたのかな?」
波瑠の視線の先には壁にかけられた一枚の絵があった。
4人の男女が描かれた人物画で家族が描かれているように見えた。
優しく微笑む両親らしき男女と兄妹だろう男の子と女の子。
ゲートということはこの世界も誰かが生きていた世界だった。
この絵画の人も家族で幸せに暮らしていたのだろう。
ところが神々のゲームに巻き込まれて今はゲームの一部になってしまっている。
「やっぱりここは城だな」
部屋にあった窓からカレンが城下町を見下ろした。
予想通りに城の中にいるようだが町の見え方からしてかなり高いところにいる。
お城の中でも上層階のようだった。
だとしたら外に出るにしても下に降りて行かなきゃいけないなと城下町を眺めながら少し先のことを考える。
「とりあえずここには何もないですね」
「……いや」
「何か見つけたんですか?」
見たところただの部屋。
ベッドもあるので休むことぐらいはできそうだが逃げ場もない部屋でのんびりする余裕はない。
何もないのなら先を急ごうと薫が圭を見た。
しかし圭はどこかを見つめている。
『隠し通路を見つけました!』
何か情報はないかと部屋の中を真実の目で見ていたら見慣れない表示が現れた。
「分かんないけど……何かある」
表示が現れたのは暖炉の付近。
圭が暖炉の周りを見て回る。
表示によると隠し通路があるようだが暖炉を覗き込んでも向こうに通路があるようには見えない。
「んー?」
真実の目が反応した以上何かがあるはずなのに何も見つけられない。
「そこらへんに何があるのかい?」
「隠し通路があるはずなんだ」
「隠し通路……ですか?」
みんなは圭にそのような能力があると分かっているが山之内は知らないので不思議そうな顔をしている。
「ああ、俺にはそういったものがなんとなく分かる能力があるんだよ」
「そうなんですか」
第六感的能力を持っている人や細かな違和感に気づけるような人もいる。
圭が堂々と答えると山之内のあっさりと納得した。
「でもなんの変哲もない暖炉だけどねぇ」
夜滝たちも暖炉の中を覗き込んでみたりするが隠し通路なんてものは見つからない。
「こういった時は隠されたスイッチがあるものですよ」
山之内が暖炉の周りを触り始めた。
隠しといっているのだから隠されているはず。
隠し方は様々であるが通路のようなものが隠されているということは暖炉を動かすようなギミックがあるのでないかと山之内は考えていた。
山之内は手に魔力を込めながら探っていく。
物理的なスイッチの場合もあれば魔力を込めて作動させるスイッチが隠れている場合もあるからだ。
「表にはないですね。じゃあ……」
山之内は一通り暖炉周りの表面を触り、今度は暖炉の中に手を入れた。
「あっ、ここに何か……」
暖炉の中の上の方を触っていると何かが手に触れた。
グッとそれを押し込むとガチャリと大きな音がして暖炉全体が前に出てきた。
「暖炉の後ろに何かあるな。よいしょ……」
暖炉の後ろに隙間ができて向こう側がわずかに見えている。
圭は隙間に手を差し込むと暖炉を引っ張る。
少しずつ重たい暖炉が動いて狭い通路が現れたのであった。
「すごいですね、山之内さん」
「こういう推理ものは得意なんです」
圭に褒められて山之内が照れ臭そうに笑う。
「……せっかく見つけたんだし行ってみよう」
見つけたはいいけれど隠し通路がどこに繋がっているかも分からない。
だが見つけたのだし隠し通路を進んでみることにした。
「暗いな……」
窓もない隠し通路は暗闇が広がっている。
圭たちは懐中電灯を取り出して先を照らす。
狭い通路では二人なんで通れるような横幅もない。
カレンを先頭にして一列に並んで隠し通路を移動する。
「にしても隠し通路なんて何のためあるんだろうな?」
虫でも出そうなやや埃っぽい隠し通路の先を照らしてカレンが怪訝そうな顔をする。
「こうしたところにある隠し通路は大体逃げるためのものですね」
「逃げる?」
「はい、中世風の街並み、それにお城ですからきっとここは高貴な人が住んでいた場所でしょう。敵に襲われた時なんかにこっそりと逃げるための通路がこの隠し通路なんだと思います」
「はぇー、なるほどな」
山之内の説明にカレンが納得する。
「じゃあ外に繋がってるのかな?」
「可能性としてはあり得ると思います。ただあの部屋が出口なこともあるかもしれません」
逃げるための通路であることはいいのだけど圭たちが入ってきたのが入り口なのか出口なのかもまた問題である。
仮に隠し通路の入り口だったなら城からの脱出路な可能性がある。
逆に何処かからの脱出路だった場合は襲われる危険が大きいような場所に繋がっているということも考えられるのだ。
「みなさん、無事でしょうか……」
こうなった以上他の人も城の中に飛ばされたと見るのが自然。
圭たちと同じようにある程度まとまって飛ばされただろうがサポートはサポートで固まっていた。
山之内のように戦い向きではない人も多くいて、飛ばされた先にモンスターがいたらかなり危険である。
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