太羽島モンスターウェーブ1
日本は世界的に見ても平和な国である。
しかし日本でもモンスターに支配された地がまだ存在している。
利益が出ないから手を出さないところもあるがモンスターが危険で手を出せないようなところも存在している。
それが太羽島という島である。
日本と韓国の間にある島で両国の交流の要所でもあったが初期の頃にこの太羽島にもゲートが出現した。
しかも1つではなく、3つも出現した上に1つはA級ゲート、2つはB級ゲート、という凶悪さであった。
高等級ゲートに加えて島であることもあって太羽島のゲート攻略は遅れてしまった。
今ではさらにいくつか低級ゲートもブレイクを起こしていて太羽島はモンスターの楽園となった。
その結果太羽島はモンスターに支配された島となったのである。
モンスターが溢れる島ではあるが基本的に太羽島のモンスターは海を越えてこない。
過去に2回攻略に失敗したという経緯もあって日本もあまり焦って攻略をしようとはしていない。
しかし全く何もないのではない。
ゲートから出てくるモンスターが増えてモンスター同士のナワバリ争いが始まり、限界点に達するとモンスターは新天地を求めて海を越え始めるのである。
これを日本ではモンスターウェーブと呼んでいた。
ただ放置した結果に起こるモンスターウェーブは凶悪なものでB級モンスターを筆頭にして多くのモンスターが日本、韓国両国に襲いかかってくる。
そのために日本と韓国ではそうした事態が起こらないようにするために人工的にモンスターウェーブを起こし、モンスターを倒してガス抜きをする。
このモンスターウェーブの対応には多くの覚醒者が半ば強制参加させられる。
特別な事情がない限り拒否できない義務のようなものなのだ。
圭たちリーダビリティギルドも例に漏れずモンスターウェーブ対応に呼び出されることになった。
海からやってくるモンスターを陸地に上げないように広く海岸線をカバーするように覚醒者たちは集められている。
ただし圭たちはまだ弱い。
そのために太羽島近くの危険なところではなく太羽島から離れた海岸にいた。
漏れてきたモンスターを倒したり他の覚醒者のバックアップが圭たちの役割である。
「あれ?」
「久しぶり」
「お、お久しぶりです」
もちろん高等級のモンスターが横に逸れて漏れてくることもある。
太羽島から近い海岸だけでなく離れたところにも高等級の覚醒者を擁するギルドが配置されている。
圭たちの近くにもたまたま大きなギルドが布陣していた。
それはヴァルキリーギルドであった。
通りで女性が多いと思ったし、女性の覚醒者が多い圭たちのギルドも置かれたわけである。
ヴァルキリーギルドが近くにいることであるし無理しないでバックアップに回ろうと思っていたらそこらを巡回していた黒羽に見つかった。
黒髪に白い髪が一房混じるB級覚醒者の女性である。
以前会った時もそうであるが圭はなんとなく黒羽に気に入られているような感じがある。
圭を見つけた黒羽はわざわざ声をかけてきた。
ヴァルキリーギルドの高等級覚醒者であり容姿的にも目立つ。
周りにいる人から圭まで注目されてしまう。
「危ないから下がっててね」
「あ、はい、ありがとうございます……」
ニコリと微笑むと手を振りながら離れていく黒羽の目的が分からない。
なぜ気に入られているのか全く理由が思い当たらないのである。
美少女に好かれて気分は悪くないけれど圭の後ろから視線が突き刺さる。
「あの人……何者ですか?」
「薫? 顔が怖いぞ?」
去っていく黒羽を薫が怖い目で見ている。
黒羽は圭に対してやや距離が近い。
あまり親しくもなさそうなのになぜあんなに近づくのかと警戒心をあらわにしている。
薫は噛みつきそうな雰囲気だけど黒羽は薫の方に目もくれなかった。
「ちょっと顔がいいからって……」
不満そうにしている薫は圭たちがこっそりと連れてきた。
覚醒したものの薫は覚醒者登録をしていない。
圭たちの環境も整って薫を覚醒者登録させなくとも隠したままレベルアップさせることができるようになった。
ある程度強くなってから登録した方がいいので今回はギルドのサポートスタッフという名目で連れてきた。
いざ戦闘が始まった時に一々戦っている人が覚醒者として登録している人か確認する人はいない。
圭たちも周りをサポートしつつちょっとはモンスターを倒せればいいなと思っていた。
「作戦開始時刻になりました。皆さん警戒お願いします!」
いよいよモンスターウェーブを引き起こす時間となった。
モンスターウェーブを引き起こすシステムはタンクの挑発と同じようなものである。
太羽島に近い海岸にモンスターを誘引する大きな機械が設置してある。
これは魔力を放ってモンスターを挑発し、強制的にモンスターの注目を引きつけるというものである。
カレンが戦闘中にやっているものを機械によって大規模に行うのである。
圭たちがいる場所は太羽島から遠いのでその様子を直接見ることはできないが、状況を共有するためにスマホやタブレットなどで中継が見られる。
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