あくまでもウシです1
世界を救うという非常に重たい役割を担うことになった。
そのためには強くならねばならない。
だが人は急に強くなれない。
圭たちはレベルを上げていけば強くなれるが、無理な相手に無理矢理挑んで死んでしまっては元も子もない。
結局圭たちにできることはいつも通り少しずつ強くなることだけなのだ。
とりあえずの目標としてD級、総合ランクで言えばE級を目指すことになった。
その前に薫のレベルも上げてみんなと一緒に戦えるようにしなければならないということになった。
圭たちの等級を考えるとE級からD級だが薫のことを考えるとF級からE級ぐらいがちょうどいい。
ということでE級相当のゲートに絞って探して攻略するのが今はちょうどいいぐらいである。
「デビルカウ?」
しかしE級ゲートがみんなの休みに合わせて出現してくれるはずもない。
当然圭たちの休みは他の人にとっても休みであることが多く、ゲートそのもののの競争率も高い。
何かちょうどいいレベルアップの方法はないかと圭は頭を悩ませていた。
そんな時に仕事中覚醒者管理部の田中という人が圭を訪ねてきた。
「そうです。こちらがデビルカウですね」
田中がファイルを開いて圭の前に置く。
悪魔のような大きな角が生えた黒い大きな牛の写真が貼り付けてある。
「これを倒せばいいんですか?」
「ええ、そうなります。D級モンスターですが心配することはありません。こちらで用意してある捕獲器で捕まえて倒してくださればいいので」
「仲間と相談して考える時間をくれますか?」
「出来れば早いうちにお返事お願いいたします」
「分かりました」
田中が夜滝の研究室を去っていき、圭は再びファイルに目を落とした。
「受けるのかい?」
「うん、悪い話じゃないと思う」
田中が持ってきた話はRSIで持っているゲートのモンスターを定期的に倒すというお仕事だった。
以前に実験したサハギンのように有用なモンスターについてはゲートを完全に攻略しないでそのままブレイクを起こさせて資源とすることも稀にある。
RSIでも同様に使えるゲートをいくつか保有、管理している。
今回田中が持ってきた話ではデビルカウというモンスターを定期的に倒してほしいというもので、デビルカウというのはざっくりと言ってしまうと牛であった。
凶暴な見た目とは裏腹に非常に肉質が良く、高級黒毛和牛のようなものなのである。
RSIはブレイクを起こしたゲートの周りを広く丈夫な柵で囲ってデビルカウを放牧するような形で飼育していた。
普段は一般の作業員を雇い監視させているのだけど、モンスターであるので倒してと畜するのは覚醒者に任せていた。
RSI内部の覚醒者ではなく外部のギルドに委託していたのだが今回そのギルドが事情によりなくなってしまった。
けれどデビルカウも増えるし、需要があるのでどこかの覚醒者にデビルカウを倒してもらいと考えた。
外部のギルドで仕事を任せるのも不安だったので、ちゃんとした後任ギルドが決まるまでRSIに関わりのある圭のギルドにお願いできないかとなったのだ。
「D級モンスターでも捕獲器で捕らえて倒すなら危険も少ない。レベルアップするのにいい機会かもしれない」
「そうだねぇ。それに意外とお給金いいねぇ」
こちらのギルド活動は正確に言えばRSIでの仕事ではない。
RSIが外部のギルドに仕事を委託するという形になる。
やる時間も仕事が終わった後にならざるを得ない。
だから少し支払われるお金も高めになっている。
D級だからと結構危険とかそういった理由もある。
「こうしてみるとかなり絶好の条件だな」
波瑠や薫はちゃんと親に許可取らねばならないが休みの日じゃなくても格上の相手と戦ってレベルアップできて、お金までもらえる。
「しかも余ったお肉ももらえるんだろう?」
「ほんとだ」
条件の隅に加工で出た端のお肉などももらえると書いてあった。
もしかしたら前に働いていたギルドの要望でそんな条件があるのかもしれない。
お肉もお金も経験値も。
これを逃す手はないと圭はすぐさまみんなに連絡を入れた。
「でもこういうのも意外といいかもね」
「こういうの?」
「こんな感じの簡単な討伐だよ」
ブレイキングゲートから利益を得ることは近年増えている。
管理維持のために簡単な討伐を行なったり一定時期ごとにモンスターを狩ったりする。
ゲートを攻略するわけじゃないのでゲートに入らなくていいしボスを倒す必要もない。
その分倒したモンスターを売ったりできず成功報酬や倒した数での報酬になってもらえる金額は少なめになる。
でもお金優先ではない圭たちからすればそのデメリットはあまり関係ない。
人気のある仕事ではないので圭もそうした選択肢があることを忘れていた。
平日のちょっとした時間なんかで出来るものもあるかもしれない。
「シゲさんに調べてもらおうか」
やれることはやる。
「ステーキ、焼き肉かぁ……」
しかし夜滝の頭の中は高級なお肉のことでいっぱいだった
「ハンバーグなんかもいいよねぇ」
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