最も不幸で、最も幸運な者4
距離を取りながら攻撃もできる弓矢は引き絞るのにも力がいる。
けれど薫は筋力の才能値も高いので弓を使うことにも問題はなかった。
薫は弓道未経験で矢の残数が限られるという問題はあったのだけれど弓矢はこれから慣れていけばいい。
矢の問題も後々解決する方法はある。
「よく狙って……外しても大丈夫だから」
カレンの挑発で真っ直ぐに走ってくるコボルトに狙いを定める。
力があるということでやや強めに張られた弦を引く。
薫が手を離すと真っ直ぐに近い軌跡を描いて矢が飛んでいく。
「あー惜しい!」
うまく飛ばせはしたけれど矢はギリギリコボルトに当たらずにかすめていった。
「あっ、えと……」
「慌てずに次を」
まだコボルトとは距離がある。
一度外したからと焦ることはない。
むしろ一度目もいい感じであとは細かな狙いのみだった。
今度はコボルトの距離も近づいているし焦りさえしなければ当たる可能性は二度目の方が高い。
「えいっ!」
「おっ、いいぞ!」
二本目の矢は先頭でカレンに取り掛かろうとしていたコボルトの頭に突き刺さった。
ど真ん中ではないが矢は深々と刺さったのでコボルトが倒れた。
残りのコボルトは圭たちがサクッと倒す。
流石に混戦状態で未熟な弓矢は怖い。
同士討ちの可能性もあるし、まずはサポートに慣れてほしいのでサポート中心にやってもらう。
「とりあえず今日はこれぐらいにしようか。最初から飛ばしすぎてもね」
何回かコボルトを探し出して戦った。
最初は運が良かったようで弓矢の命中率はお察しのものだった。
けれどサポートとして後ろから戦いを見ているとみんなの動きもわかってきたようでカレンを中心にして圭と波瑠にも強化を施せるようにもなってきていた。
このままボスまで、ではなく一度ゲートを脱出する。
「ああ、お疲れ様です」
「野営の準備ありがとうございます」
ゲートの外に出てみるとすでに日は落ち始めていて、止めてある車の横にテントが張られていた。
このゲートの攻略権はリーダビリティギルドで買った。
なので基本的にはどうやってゲートを攻略しようが自由である。
ゲートがブレイクを起こすほど放置するのはいけないけれど何回かに分けるなど好きに攻略をしてもいいのだ。
今回のゲートはやろうと思えばサクッとボスを倒してしまうこともできるのだけど、目的は攻略よりも薫の覚醒者としての練習が優先である。
なので2日に分けてしっかり休みつつのんびりと攻略するのである。
けれどもゲートのある場所はかなり遠いので一々帰っては大変。
そこでゲート前に泊まることにした。
テントだけではなくキャンプ用品も揃えたので焚き火なども重恭は準備していてくれていた。
圭たちはキャンプ飯を作って食べて女性陣は車で、男性陣はテントで休むことになった。
「圭さん……」
「薫君? そんなに近寄らなくても大丈夫……」
大きめのテントを買ったので大人3人が寝ても大丈夫なのだけど薫はギュッと圭に体を寄せる。
「へへ……」
「いや、薫君?」
「大丈夫ですよ」
「何が大丈夫なのかな……」
初めての攻略で不安に思ったり緊張したりしているのかなと圭は思うことにして、とりあえず圭はそのまま眠りについたのであった。
ーーーーー
元々数が多いのか、それともたった1日で復活したのかは知らないけれど2日目もコボルトはたくさん現れた。
ついでなので圭が魔力を放って敵を引きつけることやフィーネにも戦ってもらったりと色々と試してみたりした。
どうやらフィーネは形態によって戦闘能力が変わるかもしれないということが少しだけ分かった。
これはまた後でチェックしなければならないなと圭は思った。
「そろそろボスを倒そうか」
薫も立ち回りを理解してきた。
魔石もそれなりに溜まったしコボルトばかりでは積める経験にも限界がある。
帰る時間も考えるとそろそろだろうとボスを探すことにした。
ゲートからあまり離れないようなところでぐるぐるしていてボスが出なかったということは奥に進めばいいのだと自然と予想は成り立つ。
より奥に進むということは敵が強くなることや多くなることの可能性が高くなる。
さらには敵が前以外の左右や後ろから来ることも発生しうる。
コボルトが相手でも奇襲されたら怪我をする可能性もある。
圭たちはしっかりと警戒しながらゲートから離れて奥へと進んでいく。
「薫の能力は分かってきたけど……今度はフィーネが割と不思議だな」
「ピピ?」
今のところ足の形などを変形させて戦うフィーネは意外と強い。
体の元の大きさよりもちょっと大きな形までなら変形できるようで足をナイフの鋭くすると筋力値や体力値、速度値などが上がる。
それでコボルトをスパッと切ったりして戦うのだ。
どこでそんなもの覚えたのかとか、元の体より大きな金属部分はどこから出ているのかとか気になることはたくさんある。
「ピピ、ナニカクル!」
「みんな警戒だ!」
フィーネが何かを察知した。
まだまだ戦闘ではフィーネの能力は足りていないところがあるけれども敵を察知したりする能力がフィーネは高い。
フィーネが何か来るという時は本当に何か来ているのだ。
「左の方です!」
それぞれ周りを警戒していたら薫が敵の存在に気がついた。
「あれは……ボスコボルト? いや、ウェアウルフ?」
全身毛むくじゃらのケモノのような頭をしたモンスターが二足歩行で走ってきていた。
「みんな備えろ!」
相手の正体も大事であるが今は迫り来る相手の準備をするのが優先である。
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