【九章完結！】人の才能が見えるようになりました。～いい才能は幸運な俺が育てる～

ご両親に呼び出され1

　さらに1日待って昼に覚醒者協会から覚醒者たちが送られてきた。

　覚醒者協会の職員は一部で多くの人はB級覚醒者をリーダーとする覚醒者ギルドの人たちだった。

　未だ混乱が収束しきっていないようで直接動ける覚醒者協会の職員が少なかったので動けるギルドに協力を要請したのである。

　まずは梅山や子供たち一般人を避難させる。

　体の検査も兼ねて病院に輸送された。

　その中にはまだ一般人扱いとなっている薫もいた。

　魔力不足の影響も心配なので一緒にいるという薫を説得してそのまま病院に向かってもらった。

　次にカレンが塞いだゲートのところに向かう。

　真新しい土がこんもりとしているので地下の入り口を見つけるのは簡単であった。

　カレンが土をスキルでどけると中からクオルカンティカートが飛び出してきた。

　数も少なかったのでさっくりと倒して地下を確認するとゲートは無くなっていた。

　ボスクオルカンティカートがゲートのボスでよかったようである。

　ゲートが閉じる前に出てきたクオルカンティカートがいて、ゲートが消えてしまったので地下に閉じ込められていたのである。

　モンスターがいたことと魔力の測定装置によってゲートがあったことは間違いないだろうとは結論付けられた。

　孤児院周辺を捜索してみたところクオルカンティカートが数体見つけられたのでそのまま討伐された。

　忘れられた地下にゲートが放置されたままになってしまったということは意外と重たい事件として受け止められた。

　しかし大規模停電や嵐のせいで一般にこの事件が知られることはほとんどなかった。

「あの……どこに行くんですか？」

「スグニツキマス」

『ルーク・カーン

　レベル288

　総合ランクD

　筋力C（一般）

　体力C（一般）

　速度C（一般）

　魔力C（一般）

　幸運E（無才）

　スキル：火炎纏

　才能：無し』

　圭は運転席に座るルークに視線を向けた。

　孤児院の事件から数日後。

　人間たくましいものですでに日常を取り戻しつつあった。

　薫からの連絡もないまま普通に仕事なんかをしてRSIを出てくると黒服の男が黒塗りの車の前で立っていた。

　なんだろうとみんなが横目で見ながら避けるように帰っていっていたのだが黒服が圭に話しかけてきたのだ。

　ルークと名乗った黒服は圭に時間はあるかとカタコトの日本語で聞いてきた。

　身長190はありそうな黒服外国人にカタコトで話しかけられて怪しさを感じない人などいないだろう。

　時間はありませんと答えてスルーしようとした圭だったがルークは引き下がらなかった。

　RSIの警備員も飛んできたのだけどルークは一切動じることもなかった。

　さすが人の注目も浴び始めたのでとりあえず話だけ聞いてみることにしたらボスが圭を呼んでいるとルークは言う。

　ボスは誰なのか聞いたらバーンスタインだと答えた。

　薫が呼んでいるのかと思った圭はルークの運転する車に乗り込んだのである。

　一応薫にメッセージは送ったけれど既読にもならない。

　ルークは何を話しかけてもスグニツキマスしか答えないし車の中の空気は重たい。

「ここは……」

　高級住宅街の一角、高い塀に囲まれた家の敷地に車は入っていく。

　薫を以前送っていった家に行くのかと考えていたけれど全く違う場所であった。

「ツキマシタ」

　ルークがドアを開けてくれて、圭は恐る恐る車を降りる。

　豪華というよりはかなり頑丈そうな建物。

　スタスタと歩いていってしまうルークの後を仕方なく追っていく。

「あっ、靴脱ぐんだ……」

　てっきり土足の家なのかと思っていたら玄関ではちゃんと靴を脱ぐようになっていた。

　そのまま中にお邪魔して、ルークは部屋のドアをノックして英語で中に声をかけた。

　すると中から英語で返事が返ってくる。

　男性の声だった。

「ハイレ」

　ルークがドアを開けて圭に入るようにと促す。

　ここまで来てしまったら逃げることもできない。

　ルークはC級覚醒者であるし圭が勝てる相手でもない。

「圭さん！」

　部屋に入ってみると3人の人がいた。

　1人は薫。

　圭を見て嬉しそうな表情を一瞬浮かべた後、複雑な申し訳なさそうな顔をした。

　残る2人は男女。

　圭は顔を見て2人の正体をなんとなく察する。

「はじめまして、村雨圭君」

　女性の方が圭に微笑みを向ける。

　キャリアウーマンという言葉が似合いそうな綺麗な女性である。

「私はバーンスタイン・小百合よ。こっちの人はバーンスタイン・ジェームズ。薫の両親よ」

「あっ、はい。はじめまして」

　腕を組んですごい威圧感を放っている男性がジェームズ。

　この2人は薫の両親であった。

　圭はそうなんじゃないかと思っていたのであまり驚かなかった。

　というのも小百合もジェームズもどことなく薫と顔が似ているのだ。

　薫はそれぞれ両親の良いところをもらった顔をしている。

　薫の両親なことはいいけれどなぜいきなり呼びつけられたのか、そしてどうして薫の父親であるジェームズがすごい怖い顔をしているのか圭には疑問で仕方なかった。

「まずは……礼を言おう」

　ジェームズが口を開いた。

　思っていたよりも流暢な日本語である。