ボランティア活動3
「うおー! すげー!」
「ピピ、ジャジャン!」
実際はゴーレムなのだけど子供たちはしゃべって動くフィーネに興味津々である。
フィーネも注目されてチヤホヤされるのが嬉しいのかテンションも高く動いたりしゃべったりしてみせている。
「最近の技術はすごいですね」
最新のロボットであるということをみんな疑っていないようで梅山もむしろ子供たちに雑に扱わないようにと注意をしている。
この際今から変に隠すより堂々としている他はない。
フィーネの監視は波瑠に任せて圭は色々と孤児院のことを手伝った。
重たいもの運んだり、切れかかっている電球替えたりと男手が必要なことを梅山の指示の下で薫と協力してこなしていった。
どうせ人手があるならと布団を洗って干すなんてこともした。
「色々とありがとうございます」
「なかなか有意義な時間でした」
波瑠とカレンが子供たちと遊んだり、夜滝が子供に勉強を教えたりとみんなもそれぞれ孤児院を手伝っていた。
フィーネも子供の中に混じって遊びを教えてもらっていたようだ。
「薫君もお疲れ様」
「ありがとうございます、村雨さん」
「圭でいいよ」
「け、圭さん」
一通りやるべきことが終わって圭と薫は椅子に座って休んでいた。
ゲート前での働きぶりもそうであったが薫は真面目で良い働きをしている。
「将来は覚醒者協会で働きたいのか?」
覚醒者協会の職業体験に来ていたということはそういうことかもしれないと会話のきっかけを投げかけてみる。
覚醒者協会にも非覚醒者は大勢いる。
薫はよく気が回るし働き者であるのでそのまま覚醒者協会を希望すれば就職もできそうだと思った。
「……うーん、そうですね」
「違った? じゃあ、あれかな、内申点のためとかってやつかな?」
やや歯切れの悪い返事。
興味がないこともなさそうだが覚醒者協会だけが明確な理由でもないようだ。
ボランティアや職業体験に参加すれば活動を認めてくれる学校もある。
学校での評価も良くなるし高校生ならこの先の受験、あるいはもっと先の就職にだって活かすことができる。
別に打算的な理由でも圭はなんとも思わない。
評価のためでも休みの日にボランティア活動をするのは中々できるものじゃないので偉いと思う。
真面目に将来を考えている証でもあるので感心しかない。
「……それもあります。実は僕、学校行ってなくて」
「ん、そうなんだ……」
「こうしたボランティアとか、職業体験とか受けると学校行かなくても出席に加算してくれるから」
「ごめんな、変なこと聞いちゃって」
ちょっと重たい話になってしまった。
出した話題が悪かったと圭は反省する。
「いいんです。それに覚醒者協会にも興味はありますよ。僕は覚醒者を支える仕事がしたいんです」
「将来のこと考えてて偉いな」
「ふふ、ありがとうございます。本当は……覚醒者になりたいんですけどね」
「覚醒者に?」
「僕の両親は覚醒者なんです」
「そうなのか」
「日本じゃなくて……アメリカで活動をしているんですけどね」
ポツポツと薫は自分の事情を話し始めた。
聞いた通り薫の両親は覚醒者で、母親の方が日本国籍である。
そのために薫も日本で育っていたのだが引き抜きを受けて両親はアメリカのギルドに行くことになった。
薫は日本で育ってきたので簡単な英語なら話せても日常会話クラスではなかった。
友達もいる。
当時中学生に上がるところだった薫は日本に残るという選択をした。
けれど両親がアメリカに行った薫を待っていたのはひどいイジメだった。
日本を守ってもない覚醒者の子供がどうして日本にいるのだと薫は周りから冷たい態度を取られたのである。
友達も同じようにいじめられることを恐れて離れていった。
「なんで急にいじめられたのか……僕には分かりません」
話を聞く限り薫の容姿に対する嫉妬のようなものがあったのではないかと圭は感じた。
薫の容姿はずば抜けている。
中学生になって男女というところも意識し始める年頃になると薫が目立ってしまった。
そのタイミングで覚醒者の両親もいなくなったので攻撃しやすかったのかもしれない。
中学校はなんとか耐えて高校に入った薫であったが運も悪く中高一貫校で周りにいた人たちもそのまま持ち上がりで高校が一緒になってしまった。
耐えられなくて、高校は行かなくなった。
心配をかけたくなくて両親にも何も言えず、お世話になっている母方の叔父夫婦は辛いなら行かなくてもいいと言ってくれた。
「でもお父さんとお母さんのことは尊敬してるんです。覚醒者として多くの人を助けている。僕もそうなりたいと思ったんです」
だから覚醒者協会の仕事にも興味を持った。
しかし1番は覚醒者として覚醒して両親と共に戦いたいと思っていたのである。
「……ご、ごめんなさい! 急に変な話しちゃって……村雨さんにならってなんか、思っちゃって」
「いや、いいよ。薫君も頑張ってるんだね」
「……ありがとうございます」
圭も静かに聞いてくれるものだから話が止まらなくなった。
一通り話して薫は我に返って恥ずかしそうにうつむいた。
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