やはり塔は謎である5

 見ると向こうの覚醒者たちは2体のウルフを倒していた。


「危ない!」


 仲間を殺されたウルフのリーダーは怒りでうなりながら覚醒者の一人に飛び掛かった。


「うわぁぁぁぁっ!」


 ウルフのリーダーが腕に噛みついてナイフを持った覚醒者が悲鳴を上げる。


「こいつ!」


 仲間を助けようとウルフのリーダーを攻撃するがウルフのリーダーは素早く飛び退いてかわす。


「おい、後ろだ!」


 まだもう1体ウルフは残っている。

 ウルフのリーダーに気を取られて完全にそちらへの警戒を怠ってしまった。


 後衛の魔法使いの覚醒者が背中を爪で切り裂かれて倒れてしまう。


「カレン!」


「任せろ!」


「そちらは下がってください!」


「す、すまない!」


 圭たちが前に出てウルフを引きつけ、無事な2人の覚醒者が怪我をした覚醒者を引きずって後ろに下がる。


「まずは普通のウルフから倒すぞ!」


 残り2体なら焦らず戦えばいい。

 ウルフのリーダーがカレンに飛びかかるがカレンは盾で防御する。


 一回り大きなウルフのリーダーが盾にぶつかると衝撃は強いが耐えられないほどではない。


「うおっ、あぶね!」


 ウルフのリーダーは盾の上に前脚をかけて上から頭を覗かせてカレンに噛みつこうとした。

 カレンが盾を振り払うとウルフのリーダーは器用に空中で一回転して着地した。


「圭さん、そっち!」


「オッケー!」


 その間に圭と波瑠は普通のウルフの方に向かった。

 波瑠がスピードを活かしてウルフの後ろに周り込んで誘導する。


 体を反転させて波瑠の方を向きながら下がったウルフだったがその方向には圭がいた。


「ちょっとムカつくねぇ」


 圭がウルフを切り捨ててウルフのリーダーの方を見るとウルフのリーダーは夜滝が降らせた水の槍を巧みにかわしているところだった。

 流石に普通のウルフよりも能力が高いだけはある。


「行かせるかよ!」


 カレンが盾を地面に打ち付けるとスキル大地の力が発動する。

 ウルフのリーダーの後ろの地面が迫り上がって退路を塞いだ。


「くらえー!」


 波瑠がナイフに風をまとわせる。

 逃げられないと波瑠に振り下ろしたウルフのリーダーの前脚をズバッと切り落とす。


「トドメだ!」


 大きく悲鳴を上げたウルフのリーダーの頭に圭が剣を振り下ろす。

 狙い通り頭のど真ん中に剣が突き刺さった。


 ウルフのリーダーは一瞬ピクピクと体を痙攣させたが直ぐに動かなくなった。


『ウルフのリーダーを倒せ!


 ウルフのリーダー 1/1 クリア』


 念のため表示も確認するとちゃんとウルフのリーダーを倒したことになっていた。


「ふぅ」


「ふふん、余裕だな!」


 ウルフのリーダーも多少の粘りや反撃は見せたけれど所詮はウルフだった。

 戦いに危なげはなく、怪我もなかった。


「助かりました。あなた方がいなかったら危なかったかもしれません」


 剣についた血を拭いていると下がっていた覚醒者パーティーのリーダーが申し訳なさそうな顔をして圭に声をかけた。


「行けると思ったんですが甘かったです」


 ウルフが行けたのだからウルフのリーダーもいけるだろうと軽く考えるのは危険である。

 ゲートのボスなんかもそうであるが一つ能力が上だったり通常モンスターにはない特殊能力を持っていたりすることも多い。


 今回はたまたま圭たちが参戦してくれたから助かったものの、これが誰の助けも来ないゲートなんかだったらこの覚醒者パーティーは全滅していたことだろう。

 向こうのパーティーもウルフのリーダーは倒したことになっているようだ。


 しかし怪我もしているしこれ以上登っていくことは危険かもしれないということで彼らは塔の攻略をここで諦めることにした。

 今回倒したウルフの魔石は持って行ってもいいということになった。


「とりあえず四階にだけ一度行こうか」


 ウルフのリーダーも含めてウルフの魔石を取り出した。

 怪我もないのでとりあえず四階の様子だけを確認して塔を出ることにした。


 不思議なことにウルフの襲撃がなくなった。

 ウルフのリーダーを倒したからかもしれない。


 なのでさらりとエントランスまで行くことができた。


『女神像に貢物を捧げろ!


 イージャス草 0/10

 ペトラの実 0/10

 コドゥンの葉 0/10


 シークレット

 忘れられた女神像を探せ!』


 四階の試練が現れる。

 相変わらず圭にだけはシークレットという項目が見えている。


「この階はなんか倒すんじゃないんだな」


「四階は採取系のクエストみたいだね」


「またシークレットは……」


「あるね」


「そうかい。じゃあそうしたところも意識しながら次回攻略だねぇ」


 四階に何があるかは分からない。

 もうすでに他の人たちは攻略済みの階でもあるので情報は調べようと思えば出てくる。


 何も今すぐ無理をして攻略することもない。

 なので今回はここで切り上げることにした。


 ーーーーー


「えーと……ここら辺」


「アッチ!」


「おっ、フィーネは分かってるのか」


 そのまま塔を出ようと思ったのだけど夜滝の提案で少し寄り道することにした。

 寄ったのは塔の二階だった。


 目指しているのはケルテンの研究所。

 どこだったかと記憶を頼りに探しているとフィーネが案内してくれた。

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