優先すべきは仲間である2
圭はシッポの付け根付近をメイスで殴って壊す。
「手伝うよ!」
波瑠もやってきて圭と一緒に殴り始める。
ガンガンと殴って壊していくと中からケモノストーンゴーレムの核が転がり落ちてきた。
「んー、ちょっと綺麗だね」
これまでのストーンゴーレムの核は中が濁ったように見えていた。
一方でケモノストーンゴーレムの核は透き通ったような赤茶色であった。
「気持ち悪い、えいっ!」
ただこちらの核も持ってみると微振動していた。
なんだか持っているとイヤーな微振動なので波瑠はすぐさま投げ捨てるように核を地面に叩きつけた。
ガシャンと核が割れてストーンゴーレムの体も崩れていく。
「いてて……」
「波瑠、大丈夫か?」
波瑠が顔を歪める。
「ちょ、波瑠!?」
波瑠が服をめくり上げて、圭は見ないようにと視線を逸らす。
「うわっ、痛そー……」
「激しく動かなきゃいいのに」
「だってぇ」
「青くなってんな……」
カレンと夜滝の心配そうな声で圭も波瑠のことを見る。
お腹の一部をさらけ出している波瑠。
脇腹の部分が大きく青くなっていた。
命に別状はないが大きなダメージは避けられなかった。
波瑠の体力値はF級であって耐久力としては低めになる。
無防備に一撃をくらってしまった波瑠は痛みに顔をしかめている。
「今日は一旦引き上げよう」
「うぅ……ごめんなさい」
「波瑠が謝ることじゃないさ」
大人しくしている時のストーンゴーレムは見た目には気付きにくい。
気づけなかったとしても波瑠だけの責任ではない。
塔の攻略だって急ぐものでもない。
ケガをしてしまったのなら退散するのだって当然のことである。
油断というのならこれまでのストーンゴーレムのイメージばかりで見てしまって圭たち全員が油断した。
「とりあえず真実の目を使って最短で帰ろう……」
「圭さん?」
この際目の消費を気にしている場合ではない。
周りの危険を避けつつ塔から脱出しようと真実の目を使った瞬間だった。
『隠された研究所の入り口
ゴーレム製作者が作った研究所の入り口
魔法によって隠されている』
「見つけた……」
「ええっ?」
「何を見つけたんだい?」
「シークレットについて話しただろ?」
「ああ、そういえば……なんだっけ?」
「ゴーレム製作者がなんとか、だったかな?」
「そう、ゴーレム製作者の研究所を探せってやつ」
ただ目を凝らして見ても岩山は岩山。
「……外に出よう」
「えっ、いいの?」
せっかくシークレットっぽいものを見つけたのに圭は外に出るという。
それに対して波瑠は驚いた顔をする。
「いいんだ。確認ならいつでもできる。他人がシークレットを攻略したっていい。
大切なのは波瑠の方だ」
「……へへっ、ありがと」
もしかしたらここから悪化するかもしれない。
シークレットから貴重なものが手に入れられるかもしれないけれど仲間には代えられない。
それに大王ゴブリンの時のように戦闘が起こるかもしれないなら今の状態の波瑠を連れていくのは危険になる。
圭に大切だと優先してもらって波瑠は嬉しそうにへにゃりと笑う。
エントランスの位置からの方角や距離を覚えておけばもう一度この場所に来ることも難しくない。
「ふふふ〜おんぶ!」
「俺が? まあいいけど」
ついでだからと少し甘える波瑠。
「ふふーん」
波瑠は自分で歩けるんじゃないかと思うほどにご機嫌に鼻歌を歌う。
「……なあ」
「なんだ?」
「私がケガしてもおぶってくれるか?」
「ああ、もちろん」
「じゃあ私はお姫様抱っこをご所望するよ」
「……人がいないところならな」
圭の真実の目を使ってボムロックを避けながら塔の中から脱出した。
病院に行ってみてもらったが幸い波瑠のケガは深刻ではなく大人しくしていればすぐに治るだろうということだった。
次の攻略は波瑠のケガが治るのを待ってから挑むことになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます