ゴブリンパニック2
「あっ、近くにもう1匹いたのか」
「まあ1匹は倒せたしゴブリンがいることは分かったから探せばいいさ」
ゴブリンは気づくこともできずに水の槍に胸を貫かれた。
すると木の影になっていたところから驚いたようにゴブリンが逃げていった。
もう1匹いたことに誰も気づいていなかった。
けれどこの周辺にゴブリンがいそうなことは分かったので1匹ぐらい逃しても大丈夫。
少し警戒を強めてゴブリンを探し回る。
やはりゴブリンは今この周辺にいるようで比較的簡単にゴブリンを見つけられた。
2匹ペアになっているゴブリンでサクッと倒すことができた。
そのままゴブリンを探して倒すを繰り返す。
「あと1匹……何だけどねぇ」
2匹ペアを3つ倒した。
これで6匹。
塔に入ってきた時に2匹倒したのと1匹取り逃してしまったのを合わせると計9匹となる。
圭はこれで試練クリアであるが夜滝たちはあと1匹倒さねばならない。
色々一階の中を駆けずり回ったしあと1匹倒して今日はやめにしようかなんて話していた。
と思っていたらまたゴブリンが見つからない。
少なくとも逃げ出したゴブリンもどこかにはいると思うのにそれすらもいないのである。
「もー! なんでこんなゴブリン探さなきゃいけないのー!」
波瑠の不満ももっともである。
ゴブリンは見た目的にも可愛くないし戦って楽しい相手じゃない。
素材にもならないし試練じゃなきな探しもしないモンスターである。
それなのにこんなに見つからないとなるとめんどくさいとみんなも不満に思っている。
「もうちょっと中心部の方を探してみようか」
そろそろ道に出る。
道を挟んだ向かいの森ではまた存在している魔物が違うかもしれないのでゴブリンがいた森の方をもうちょっと散策してみようと考えていた。
「た、助けて!」
「なんだ?」
方向を変えて進もうとしていたら助けを求めるような男性の声が聞こえてきた。
圭たちは一瞬視線を合わせてうなずきあうと声の方に向かった。
「あんたたち、助けてくれ!」
「あの人は……!」
男がゴブリンに追われていた。
追われている男性には見覚えがあった。
塔に入ってきた時に見た特別配達の荷物を護衛する覚醒者の1人である。
後ろには5匹のゴブリンが不快な笑い声を上げながら男を追いかけている。
「みんな行くぞ!」
何があったのか聞きたいがまずはゴブリンの対処が先になる。
「こっちに来い!」
「た、助かった!」
男が圭たちの横を通り過ぎて、ゴブリンたちは圭たちに向かってくるような形になった。
悠長に待ち受けて戦うことはしない。
圭たちの方から打って出る。
カレンを真ん中に左右から圭と波瑠が飛び出してゴブリンを倒す。
ゴブリンそのものは普通のゴブリンであり5匹いてもあっさりと倒せてしまった。
「何があったんですか?」
真実の目で見てみると男の強さはF級だった。
1匹2匹のゴブリンなら問題にもならないだろうけど多数に囲まれると戦うのは難しいかもしれない。
まだ若くて経験も浅そうなのでゴブリンに囲まれてパニックになってしまったのかもしれない。
「い、いきなりゴブリンが大量に現れて! 佐藤さんが助けを呼びに行けと……だけどゴブリンに追われて」
「シゲさんは大丈夫なのか!」
「わ、分からない……運悪くタイヤをパンクさせられてトラックはゴブリンに囲まれてしまったんだ。もう1人と佐藤さんでどうにか抵抗してるけど……」
重恭はE級覚醒者である。
しかしE級でも下の方の実力であり強い人ではない。
多少のゴブリンなら蹴散らせるがあまり敵が多いようならトラックを守りながら戦うのは厳しい。
「みんな……」
「助けに行こうよ!」
「もちろんだ!」
「ここは私たちがやらなきゃねぇ」
ゴブリンがどれだけいるか分からない。
危険も伴うので行こうとも言い切れずに圭はみんなのことを見た。
けれど夜滝たちはもちろん助けに行くつもりだった。
人を呼びに行く時間もなさそうなので1番近くにいる圭たちが行くしかないのだ。
ここまでレベルを上げて強くなってきたのだってモンスターと戦って人を助けるためという側面もある。
「みんな、ありがとう」
や滝たちの後押しを受けて圭も大きくうなずいた。
「このまま助けを呼びに行ってくれますか?」
「わ、分かった……気をつけてくれ!」
男にはこのまま助けを呼びに行ってもらい、圭たちは重恭を助けに行くことにした。
男が逃げてきた方に走っていくと程なくして道の真ん中に止まっているトラックが見えてきた。
「多いな……」
トラックは多くのゴブリンに囲まれている。
そのトラックの上に重恭を始めとして運転手をしていた男ともう1人の護衛もいた。
トラックの上でゴブリンが上がってこないように抵抗をしているがゴブリンの数が多くて処理が間に合わなくなりつつあった。
「夜滝ねぇ!」
「いっちゃえ!」
「ふふ、久々に全開でいくよ!」
夜滝が杖を振り上げる。
放たれた魔力が水に変化して十数本の水の槍が出来上がる。
強力な一撃も魔法の力であるが大多数を相手にした広範囲攻撃も魔法は得意とする。
「はっ!」
夜滝が杖を振り下ろすと水の槍が飛んでいく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます