デカ目玉2
イービルアイの側面に回り込もうとした波瑠の動きが不自然な体勢のまま止まった。
「波瑠!」
動きの止まった波瑠にイービルアイが襲いかかる。
とっさの判断で盾を構えたカレンが波瑠の前に割り込む。
イービルアイがカレンの盾にぶつかって鈍い音がする。
「はっ!」
カレンは腕を振ってイービルアイを押し返す。
「圭、今だ!」
「オッケー!」
イービルアイが水に包まれる。
夜滝の魔法だ。
水越しに目があってしまってまずいと思ったが水を隔てては効果がないようで圭の体に影響はなかった。
剣を真っ直ぐに振り下ろして水ごとイービルアイを切り捨てる。
切り捨てられたイービルアイはべちゃりと地面に落ちた。
「うわーん、ごめんなさーい!」
事前に聞いていたのに目を見てしまった。
ガッツリ相手の技にハマってしまって危ないところであった。
まだ体が痺れた感じがする手足を振って感覚を取り戻しながら波瑠は申し訳なさそうな顔をしている。
「まあ大事にならなかったから大丈夫だよ」
圭自身も目は見ちゃダメだと分かっているが今戦ってみてほぼほぼ目のイービルアイの目を見ないのは難しいと正面から見て理解した。
「ああしたモンスターは完全に正面から目を見なければいいことも多い。
真ん中ではなく視界の端に収めるようにして位置を把握するのがいいだろう」
見ていた和輝がアドバイスをくれるけれどそれもそう簡単にはいかないと分かっている。
波瑠の回復を待つ間圭が剣でイービルアイの死体をいじくる。
遊んでいるのではない。
グリグリとしていると剣の先に固いものがぶつかったのでそれを剣で掻き出す。
出てきたのはイービルアイの魔石。
どうしてこのゲートに1日攻略権が設定されたか。
それはイービルアイがモンスターとして不人気なことが理由として挙げられる。
イービルアイは素材としてほとんど使われない。
体の多くの部分が目玉であるのだけど目玉は利用されない。
一部でポーション生成などに使うこともあるらしいが量も必要でない。
目玉は食べられないし他の部分も利用価値がない上に取れる量だって少ないので研究そのものもなされていないのが現状である。
イービルアイから取れるのは魔石ぐらい。
その上モンスターとしても厄介。
目を見ると状態異常にしてくるので倒すことも面倒ということも相まって嫌がられるモンスターであるのだった。
そんなイービルアイであるが圭たちにとってはメリットはある。
実質的な能力が強くないのだ。
状態異常にしてくることがイービルアイの強みである。
そこにだけ気をつけていればイービルアイそのものの戦闘能力はE級という等級に比べて低めである。
「でも目を見ちゃいけないって難しいよね……」
「そうだな」
盾を構えるカレンや魔法を使う夜滝はともかく接近して戦う圭や波瑠ではやはり目を見ない戦いというのは厳しいものがある。
「対策もあるがこうした戦いも良い経験になる。もう少しこのままいこう」
若者の苦労に和輝が笑う。
目を見ないように戦う機会は多くはないがより厄介な能力持ちで目を見たらいけない、直視できないようなモンスターも少数であるが存在している。
イービルアイぐらいなら比較的安全に経験も積めるのでいい機会である。
「魔力が高ければ抵抗も出来るのだがな」
『弥生波瑠
レベル22
総合ランクF
筋力E(E+)(英雄)
体力F(F+)(一般)
速度D(D+)(神話)
魔力E(英雄)
幸運F(英雄)
スキル:風の導き
才能:有翼のサンダル』
波瑠のレベルも上がってきた。
けれどレベルが上がるにつれてレベルが上がりにくくなっているし能力の上がり方も鈍くなっている。
ゲームなんかにも照らして考えると分からないことでもないがすぐに強くなれるとは上手くいかないようである。
とりあえずのところ波瑠のE級程度の魔力ではイービルアイの力に抵抗できないようだ。
ともかく今回のモンスターであるイービルアイはE級であるしレベルアップも期待できる。
「より集中すれば目に頼らずとも相手の気配も感じられるようになる。昔ならマユツバものの話であるがこうして魔力というものがある世界になると魔力を感じて相手の位置を実際に察することも出来るようになった。このような感覚も鍛えておくといい」
「分かりました」
ゲート中を地図を頼りに探索していく。
圭も目を見てしまって金縛りのように急に体が動かなくなる感覚を味わったりしながらイービルアイを倒していった。
『村雨圭
レベル27
総合ランクF
筋力E(E+)(英雄)
体力E(E+)(伝説)
速度E(英雄)
魔力F(一般)
幸運D(神話)
スキル:真実の目、導く者
才能:類い稀な幸運』
圭もレベルアップしているのだけど能力値としてはやや物足りなさを感じる。
神話級の才能値があるので幸運が良く伸びているのだけどそもそも幸運とは何なのかそれ自体も不明である。
伸びたところで何が出来るのかも不明であって伸びて喜ばしいのかも分からないのだ。
ステータスとして現れている以上効果はあるのだろうけど戦いの中でそれらを実感したこともない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます