見抜く将来性5
「優斗、すまないな……ってどうした?」
そこにカレンが戻ってきた。
カレンはニコニコとしている優斗を見て目を丸くした。
こんな風に表情が崩れているのは珍しい。
「えへへ、僕の作った杖が選んでもらえたんだ」
「そうなのか……」
カレンはうれしいような、少し寂しいような目をして微笑んだ。
どうしてそんな色が見えたのか圭は気になったが親しくもないのに聞くことはできなかった。
「覚醒してから頑張ってたもんな。よくやったな」
「うん……ありがとう」
「ともかく爺さんも帰ってきたしあとは私がやるよ。お前は宿題でもやってきな」
「分かった。お姉さん、僕、頑張るのでよろしくお願いします!」
「ふふふ、壊すような使い方はしないから安心しておくれ」
『八重樫優斗
レベル144
総合ランクD
筋力C(英雄)
体力D(英雄)
速度G(無才)
魔力E(一般)
幸運F(無才)
スキル:的確な一撃
才能:火に愛されし手』
ペコペコと頭を下げながら下がろうとする優斗をなんとなく圭は真実の目で見てみた。
会話から覚醒者であることも分かっていた。
能力的には意外と高い。
筋力と体力のステータスが高い。
才能値も英雄なら高い方であるので能力ステータスだけを見ればタンク向きな能力をしている。
けれどスキルや才能を見るとちょっとタンク向きではなさそうだ。
的確な一撃というスキルはおそらく攻撃スキル。
火に愛されし手というのがちょっと分からないけれどタンク的な才能ではなさそうに思えた。
「弟さん、覚醒者なんですね」
「そうなんだ。ある時急に目覚めてな。本人は喜んでいたよ。これで自分も爺さんみたいな職人になれるって」
「おじいさんも覚醒者なんですか?」
「そうなんだ。覚醒者の武器は覚醒者か、大企業みたいに高い機材がないとうまく加工できないんだ。爺さんは戦えるような年ではないけれど覚醒者だからモンスター素材の加工ができるんだ。……あんまり売れちゃいないけどな。
優斗は昔から職人になるって言っていて、爺さんが覚醒者装備を作り始めたら自分もって。だから覚醒した時はうれしそうで……うらやましかった」
言葉の最後は消え入りそうだったけど圭には聞こえてしまった。
「す、すまないな。お客さんにこんなべらべらと話しちゃって……普段はこんなことないんだけど」
少しうるんだような瞳を隠すようにカレンは顔をそむけた。
単純にいかない事情が色々あるのだろう。
「カレンさんも職人なんですか?」
「ん、そうだけど私は覚醒者じゃないから覚醒者の装備は作れないんだ。一般的な工芸品みたいなものは作るんだけどな」
覚醒者じゃなかったら覚醒者の装備を作れないなんて知らなかった。
「え、えっと他にお探しの装備は? 基本的なものは何でもそろってるよ。それに爺さんの方の仕事が終わればオーダーメイドの相談もできるし」
また変なことを口走ってしまいそうになったカレンは慌てて話を変えた。
「そうだねぇ、あとは魔法使い用の防具なんてあれば」
「それならこっちだ。ただちょっとうちの男どもは裁縫系が苦手で……」
魔法使いの防具としては魔法を阻害しないように単純なアーマー型ではなくてローブのような形態の防具も多い。
防御力としては低いが魔法使いに防御力が必要とされるような場面になったら戦いはかなり厳しいものであると言えるので攻撃に特化した方がいいという考え方の人も多数派である。
八重樫工房も魔法使い用の装備としてローブやクロークタイプの羽織れる装備品を作っているけれどほかの装備に比べて品質がやや落ちる。
理由は簡単で作り手の技量不足である。
悪いものではないけれど他と比べてしまうと見劣りしてしまう感じがあるのは否めない。
『八重樫カレン(未覚醒)
レベル0
総合ランクH
筋力G(伝説)
体力G(神話)
速度G(一般)
魔力G(英雄)
幸運G(一般)
スキル:大地の力(未覚醒)
才能:不屈の再生力を持つ肉体(未覚醒)』
なんとなく。
特に理由もないけれど圭は気になってカレンを見てしまった。
優斗も見たし話の流れで覚醒者云々ということも出たので自然とそうしてしまった。
「えっ!」
「どうかしたか?」
「あっ、えっと、なんでも」
いきなり不自然に声を上げてしまった。
カレンや夜滝が不思議そうな顔をして圭の方を振り返った。
圭があいまいに笑ってごまかすとカレンと夜滝は商品選びに戻る。
神話等級の才能値だと圭は内心で舞い上がっていた。
さらには筋力も伝説。
能力としてはタンクやアタッカー向きの才能値だ。
スキルや才能が無い人もこれまで多く見てきたがカレンはどちらも持っている。
まだ明確にスキルや才能の能力は分からないけれど才能については体の頑丈さにかかわるスキルであるように圭には思えた。
もしアタッカー型のスキルであってもどっちでも最上級であることに変わりはない。
「何かいいものあった?」
ぼんやりとする圭に波瑠がこっそりと声をかける。
いい装備でも見つかったのかと思った。
「ああ、見つけた」
「なになに、どんな装備?」
「装備じゃない」
「えっ?」
「人、才能だ」
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