【九章完結！】人の才能が見えるようになりました。～いい才能は幸運な俺が育てる～

少しは強くなりました3

「チャラチャラして女性に声をかける方が軟弱者だと思いますよ？　私はそんな人嫌いです」

「そうだねぇ、いかにも頭も悪そうだ」

「私も……ちょっと」

　圭を馬鹿にされてムッとしたように波瑠が反撃の言葉を口にした。

　夜滝もそれに便乗する。

　小橋は別にナンパされたこととかに不快感はないがチャラ男は好みでなかった。

「な……！」

「話しかけないでください。私たちはあなたみたいなのに興味ないです」

　波瑠がキッパリと断り、男の顔が怒りで赤くなる。

　断られることを想定もしていないのかとため息が出そうになる。

「おいおい、俺はD級覚醒者だぞ？　そんな男ぐらい簡単に倒せるんだぜ？」

　なぜ、自分が倒されねばならないのかと圭は眉をひそめた。

　倒すならモンスターにしてくれ。

『岩井佐之助

　レベル89

　総合ランクF

　筋力F（一般）

　体力F（一般）

　速度F（一般）

　魔力F（一般）

　幸運G（無才）

　スキル：無し

　才能：無し』

　しかもEじゃんと言いそうになる。

　こっそりとチャラ男に真実の目を使ってみた圭はステータスを見て呆れかえった。

　総合ランクFなら覚醒者等級に直すとE級になる。

　チャラ男は相手が等級を分からないのを良いことに自分の等級をサバ読んで強く見せようとしていた。

　実際自由狩猟特別区域に高等級の覚醒者は少ない。

　高い等級になるほどゲートなどに挑んだ方が実入りがいい。

　だからチャラ男は等級のサバを読んだ。

　これまではD級ともなると周りがチヤホヤしてくれた。

　少しでも狩りに不安を抱えているのならD級覚醒者がいてくれると安心である。

　今回も圭はそんなに強くもなさそうなので等級を前に押し出せばきっとなびいてくるだろうと思った。

「……なんだよ！」

　期待していた反応と違って3人は冷ややかだ。

「たかだかD級ですか？」

「んー……D級ねぇ？」

　波瑠が鼻で笑う。

　夜滝も小さくため息をつく。

　サバを読むにしても微妙なラインだった。

　チャラ男としてはとりあえず1つ上のバレにくいところでサバを読んだのだろうけど残念ながらこちらにはC級覚醒者の小橋がいる。

　D級だからなんなんだという態度にチャラ男が困惑する。

「D級じゃちょっと力不足だねぇ」

「そうですね」

　4人とも余裕の態度を崩さない。

　それを見て男は勘違いをした。

　そんなに強そうに見えないけれど圭が自分よりも高い等級の覚醒者なのではないかと。

　実際は小橋がC級なのだけどここまで口を出さなかったのは高い等級にあっていつでも対処できるから余裕があるのだと思ったのだ。

「チッ、お前ら岩井さんが誰だか分かってんのかよ！」

「そうだそうだ！」

　痺れを切らした取り巻きが圧力をかけ、チャラ男を上げようとする。

「お、おい！」

　実際チャラ男は強くない。

　浅いところで女の子ナンパして安全に狩りするぐらいなら問題はないけれどE級としても能力は高い方じゃない。

　チャラ男はあまり相手を変に挑発しないでくれと1人焦る。

　よくよく見たら分かるのだけど圭の装備もただ地味というわけではない。

　RSIから借りた装備たちは確かに見た目的には地味かもしれないが、それは見た目重視ではなく機能性を重視したものであるという話なのだ。

　つまりはちゃんとした品質のものを身につけた覚醒者になる。

　落ち着き払い、女性を3人も侍らせている圭のことが急激に強そうに見えてきたチャラ男は顔を青くした。

「やめろぉ！　そ、その……すまなかった。邪魔したな。俺たちは撤退するよ……」

　ヘラヘラと笑い、頭をぺこぺこと下げながらチャラ男は仲間のケツを蹴って立ち去っていく。

「なんなんだ……？」

「まあ頭の悪ーいナンパだったねぇ」

　ナンパしてくるチャラ男がいては落ち着いて狩りもできない。

　少し悩んだけれど水を差された身分になったので圭たちはそのまま引き上げることにした。

　装備なんかを返却して小橋と別れてから圭たち3人は夜滝の部屋に集まった。

　目的はもちろんレベルアップしたかの確認である。

「ふむ……中々上がらないねぇ」

『平塚夜滝

　レベル24

　総合ランクG

　筋力G（一般）

　体力G（一般）

　速度G（一般）

　魔力E（伝説）

　幸運F（英雄）

　スキル：思考加速（未覚醒）

　才能：魔道的並列思考（未覚醒）』

　夜滝が残念そうに唇を尖らせた。

　最近は夜滝も狩りに加わっているのだけど結果としてはあまり良くない。

　レベルは１つ上がったのだけど思っていたよりも上がらない。

　それどころか圭と波瑠も似たようなものだった。

　ここでさらにレベルアップについて考察をした。

　いくつか要因があってレベルが上がりにくくなったのではないかと考えている。

　まずはレベルアップに関して夜滝もちゃんとレベルアップした。

　このことからレベル1とか未覚醒じゃなきゃレベルアップしないなんてことはないことが分かる。

　続いてレベルアップしにくくなったことだけどやはりそこはレベルアップするとレベルアップしにくくなるのだろうと考えた。

　ゲームのように考えると必要な経験値が増えるとか、レベルが上がって強くなるとこれまでのモンスターからもらえる経験値が少なくなるとかそうしたことが関係しているのではないかと圭たちは推測した。

　レベルが上がってより多くの経験値が必要になり、総合ランクが上がってビッグラットと同じ等級になったので得られる経験値が減った。

　そのためにレベルアップしにくくなったのだ。