25 狼人生
「僕は10年前ほど前に『獅子の門』が大陸初の予備校として成立し、ほぼ同時期に『修練の台地』も予備校を名乗るようになった頃から数術科の講師として働いてきました。数術はどこの上級学校の受験科目にもありますから、僕は他に多数いる講師たちに負けないよう教育に全力を注いできました。おかげで教科の指導については実力を身に付けることができましたが、その中でどうしても気になる問題がありました」
黙って話を聞いているユキナガに、ヨハランは続ける。
「『修練の台地』は高等学校生か
この言葉は太古のエデュケイオンで当時の上級学校に相当する学校に入学できず延々と勉強を続けていた青年が苦しみから
「通常の塾を超える大規模な教育機関となった以上は仕方のないことですが『修練の台地』では生徒数の多さから一人一人に寄り添った指導はできず、長年狼人を続けている生徒に悩みを相談されても教科の指導以上のことはできませんでした。魔術学院の受験生を救うためには学費が高くとも一人一人に寄り添える専門の塾での指導が必要だと考えて僕はここに来ました」
「なるほど、そういう事情だったのですね。この世界における魔術学院の受験制度については先ほどノールズさんから解説を受け、その特徴と問題となる点を概ね理解できました。この塾、魔進館の受験指導者として今後ヨハランさん以外の講師の方々にも受験戦略をご指南させて頂きます」
「流石は転生者だ。数日後に講師全員を集めて宴会を兼ねた開塾会議をやるから、ユキナガにはその時に講師への受験指導をやって貰おう」
ノールズがそう話した所で、校舎の入り口の扉を誰かが叩く音が聞こえた。
「ご来客ですか?」
「ああ、実は入塾希望者が既に何人か集まっていて今は一人一人に入塾前の個人面談をやってるんです。ヨハラン先生には引き続き教室や教材の整備をやって貰うとして、さっきも言った通りユキナガには面談に同席して貰おう。付いてこい」
「分かりました。ぜひ生徒の顔を見たいと思っていた所です」
ヨハランはノールズとユキナガが到着するまで行っていた作業に戻るため2階に上がり、ノールズはユキナガを連れて入塾希望者との個人面談に臨もうとしていた。
すりガラスの扉の向こうには2つの人影があり、保護者も同席するのだろうと予想しつつユキナガはノールズの後に付いていった。
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