ダグル迷宮地下第二階層……エルのミス

 黄緑の髪の男は、ログスへ狙いを定め攻撃していった。

 ログスは反撃しようとするも、回避するだけでやっとである。

 それをみたシルフィアは、黄緑の髪の男の背中へと跳び蹴った。


「グハッ!?」


 いきなり蹴られ黄緑の髪の男は、よろけて地面に倒れる。

 ログスは今だと思い黄緑の髪の男を槍で突こうとした。

 だが黄緑の髪の男は、即座に棍棒を持ち直しログスの腹部へあてる。


「う、グへッ!?」


 余りの痛さにログスは、腹を押えそのまま後退した。そして、よろけ膝をつく。


(ログス……ごめん)


 そう言いシルフィアは、黄緑の髪の男に飛びかかる。そして攻撃していった。

 その間ララファは、魔法でログスの治療をする。


 片や赤い髪の男は鎖鎌を振り回しながら、エルを……いや、ララファを攻撃しようとしていた。


「おいっ、相手が違うんじゃないのか?」

「フッ、下手に回復や強化なんかされたんじゃ……後々大変だからな」

「なるほど……だが、そうはさせないっ!!」


 そう言いエルは、ララファの前に立ち赤い髪の男を睨みみる。


「クッ……しょうがねえな。お前は、あとにするはずだったが」


 赤い髪の男はそう言い鎖鎌を持ち直した。それと同時に、エルへ鎖鎌の刃を振り下ろす。

 それをみたエルは、大剣で鎖鎌の刃を弾いた。と同時に、赤い髪の男の横っ腹を蹴る。


「ガハッ!」


 赤い髪の男は、エルに蹴られ岩壁に激突した。そして、そのまま地面に落下する。


「……クソッ、話が違う。聞いた話じゃ、そんなに戦闘経験がないって」

「誰に言われたかは、分からないけど。一応、俺は小さい頃から父さんに鍛えられてた……嫌というほどなっ!」

「そういう事か……お前の親父が誰だか知らん。だが、とんでもない戦闘狂だったみたいだな」


 馬鹿にしたようにそう言い赤い髪の男は、立ち上がろうとした。

 そう言われエルは、ムッとし赤い髪の男の顔を思いっきり蹴る。

 それに気づくも赤い髪の男はなすすべなく、真面にエルの蹴りが顔面に入った。そして血を吐き、少し先の地面に吹っ飛ばされる。

 エルは赤い髪の男の方へ歩み寄った。


「キャアァァアアアー!!」


 ララファの悲鳴が、辺りに響き渡る。

 それに気づきエルは、ララファの方に視線を向けた。

 そこには紺色の髪の男がいる。そして、ララファを気絶させ拘束していた。


(クソッ、新手か……油断した。まさか、こんなに早くくるとはな……)


 それをみたエルは、大剣を握り締め紺色の髪の男へ刃を振り下ろす。

 だがそれと同時に、紺色の髪の男とララファは忽然と消える。


「ララファアァァアアアー……」


 エルはそう叫んだ。その後、悔しさのあまり拳で地面を殴った。


(……そういえば、シルフィアとログスは? ……おかしい、返事がない)


 そう思いエルは、シルフィアとログスが居る方へ視線を向ける。

 するとそこには、水色の髪の男とオレンジ色の髪の男がいた。そして、シルフィアとログスを拘束しエルの目の前で消える。

 そのあとを追うように黄緑の髪の男も消えた。


「おいっ、待て!?」


 そう言い立ち上がりエルは、追いかけようとする。


 “エル、待つんだ! 三人は殺されていない。恐らく最初からエルの目の前で三人を人質にとり、どこかに誘きだすつもりだったのかもしれん”

(なんのために……そんな、めんどくさいことを?)

 “多分、エルの力を半減させるためだろうね”


 それを聞きエルは、ドンッと壁に両手を突き俯いた。


(クソッ、俺が甘かったせいだよな……三人が捕まったのは……)

 “そうかもしれんが、違うともいえる。だが、今は悲観してる場合じゃない”

(ああ、そうだな。三人がどこに連れていかれたか分からない。だけど、探さないと)


 そう思い赤い髪の男の方をみる。だが、既に居なくなっていた。

 因みに赤い髪の男は、あとから来た二人の仲間が連れて行ったのだ。


(あーこっちも、逃げられた!)

 “うむ……実際、何を目的にしているか分からん。ここは、落ち着いて行動した方がいい”


 そう言われエルは、渋々納得する。


(すぐにでも探しに行きたいけど、闇雲に動いても駄目だ)

 “そういう事だ。今は、どうするか考えてから行動した方がいい。それにエルを誘きだすのが目的なら、向こうからなんらかの知らせがあるはず”

「そうだな。じゃあ、とりあえず休憩施設にいく」


 そう言いエルは、第二階層の休憩施設の方へ向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る