駆け引きと思考

 ムッとした表情でラクドサスは、エルとシルフィアをみていた。


「あ、さっきは助かった……ありがとう。それで、話は今じゃないと駄目か?」

「エル、できれば今がいい。その方が話しやすいしな。それと俺がお前を助けた訳は、さっきの借りを返しただけだ」

「借り? 俺がなんかしたか……」


 そう言いエルは、ハテナと首を傾げる。


「……助けたつもりはないって顔だな」

「待って……もしかして、エルがラクドサスを医療施設に運んだことを云ってるの?」


 そうシルフィアが言うとラクドサスは頷いた。


「なるほど……じゃあ、その借りを返してくれたってことだな」


 なぜかエルは、ホッとしている。そう何か他に裏があるんじゃないかと思っていたからだ。


「ああ、そういう事だ。それで、エル……お前と二人で話をしたい」

「そうだな……でも、なんで二人なんだ?」

「お前も、その方がいいんじゃないのか?」


 そう言いラクドサスは、エルを見据えた。


「なるほど……ってことは、気づいているって訳か。でも、その心配はいらない」

「どういう事だ? まさか、シルフィアは……」

「ああ、だがそれ以上は言うな」


 それを聞きラクドサスは、エルが何を言いたいのか分かり頷く。


「そうだな。じゃあ俺も一人、呼んでもいいよな?」

「……まあいいか。その方が、フェアーだしな」

「そういう事だ。んー……ここじゃ話をするにもな……」


 そう言いラクドサスは、どこかに話をするにいい所がないかと考える。


「俺の家じゃ駄目か?」


 そう言われラクドサスは、半目でエルをみながら思考を巡らせた。


「……そうだな。まぁ問題ないだろう」


 そう言いラクドサスは、エルに案内しろと言い歩き出す。

 それを聞きエルは、コッチだと言いラクドサスの前を歩き案内する。

 片やシルフィアは、ラクドサスの後ろをついて歩き色々考えていた。


(んー……ラクドサスが神のオーパーツ所持者。今までそんな風にはみえなかったわ)

(シルフィア、それだけ警戒……演技をしてたんだろうな)

(命を狙われるから?)


 そう聞かれエルは考える。


(それもあるかもしれない……その他にも何かあるのかも)

 ”うむ、演技までしているという事は何かあるだろうな”

(グリモエステルス、なんだと思う?)


 そう言われグリモエステルスは思考を巡らせた。


 ”そうだな……エル、君がラクドサスの立場ならどうする?”

(ラクドサスの立場……命を狙われないために隠すけど、演技までしない。でも何かから逃げている場合は……そうか、そういう事か)

 ”そうなると、誰かに負われている身という事になる。まあこれは、推測にすぎない。この様子だと……本当のことは、本人から聞けるかもしれんな”


 それを聞きエルとシルフィアは軽く頷く。

 そしてその後も、三人はエルの家に向かい歩いていたのだった。

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