誘い込むとピンチ

 ここは商店街。

 先程よりも人通りが多いようだ。

 あれからシルフィアはここにくる。

 そしてシルフィアは、エルを探し辺りを見回していた。


(人が多いわ。恐らくこの辺には居ない。そうなると、もっと人が少ない場所を探さないと)


 そう思っていると……。


 ”シルフィア、今すぐエルの家に行って儂を持ってエルの所に向かえ”

(ちょっと待って……まさか、エルはグリモエステルスを家に置いてきたって云うの?)

 ”ああ……前代未聞だ! まさか……流石にこんな展開は、予想していなかった。闇が深いとは思っていたがな”


 それを聞きシルフィアは、難しい顔になり遠くをみつめた。


(そうね……分かったわ)


 そう言いエルの家がある方角を向くと、シルフィアは走りだす。


 ∞✦∞✦∞✦∞


 ここは倉庫街だ。流石に人が居ない。

 エルは無言のまま歩いている。

 細い路地裏へと入っていった。


「……」


 するとエルは、誰かにつけられていることに気づく。


(くいついたか……)


 そう思い更に奥へと向かった。

 その様子を建物の物陰から赤髪の男がみている。


(なるほど……確かにセルギガの言う通りだ。あの村の入口ですれ違ったヤツ……。だが、なんで一人でこんな所を歩いてる?)


 そう思い赤髪の男は、不思議に思い首を傾げた。


 この男はキョウゼル・バベブ、四十五歳。バッドスコーピオンの幹部であり、魔剣バスターへルギアの眷属だ。


 キョウゼルはひとまずバスターへルギアを通しセルギガに連絡する。



 ――場所は移り、倉庫街の奥にある酒場――


 この二階の隠し部屋にはセルギガがいて、ムッとした表情で無作為に一点をみていた。


(なんでエルがこの倉庫街に来ている? それも一人で……)


 そう思うと持っていたペンを、ベキッと折り曲げる。


(馬鹿にしているのか? さっき気づいていたとしたら……クソッ! ふざけるな。フッ……まあいい、一人でどこまでやれるかみてやろうじゃないか)


 そう言いセルギガは、高笑いをした。

 その後、セルギガは仲間を数名率いてエルの下へ向かう。



 ――場所は、倉庫街へ戻る――


 キョウゼルはセルギガに言われエルをつけていた。

 それに気づきエルは、更に奥へと誘いこむ。

 どんどん奥へ進むエルに対しキョウゼルは、不可解に思った。


(何を考えている? この先は行き止まり……って、まさか!?)


 それに気づきキョウゼルは、眷属の武器であるダガーを構えるとエルの下へ駆けだす。

 そう行き止まりの場所でエルに待ち構えられたら、まずいと思ったからだ。


(クッ、思ったよりも仕掛けてくるのが早い!)


 そう思いエルは、大剣を抜くと構える。

 キョウゼルはエルに跳びかかった。

 咄嗟にエルは、避けキョウゼルとの間合いをとる。


「いきなり、なんなんですか?」


 そう言いエルは、キョウゼルを見据えた。


「中々いい反応だ。それに……これは、セルギガの言う通りだ。確かに、近くでみるとエルムスに似ている」

「お前……父さんを知っているのか?」


 そう聞かれキョウゼルは、ニヤリと笑みを浮かべる。


「ああ……そうだが。お前とは、村の入口でも会っているぞ」


 そう言われエルは、キョウゼルを鋭い眼光で睨んだ。

 その後エルは、大剣を握り締める。そして怒りのままに、キョウゼルへ目掛け大剣を振り下ろした。

 だがキョウゼルは、それを軽々とよけエルの懐に入る。

 それに気づくもエルは、避けきれずキョウゼルのダガーが左腕をかすめ服を斬られた。そこから血が滲み出て、紋章が微かにみえる。

 慌ててエルは、斬られた部分を隠した。


「……なるほど、セルギガの予想した通りか」


 そう言いキョウゼルは、ニヤリと口角を上げる。

 それを聞きエルは隠しても仕方ないと思い、大剣を構え直すとキョウゼルを睨みつけた。

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