談話と緊急事態

「シルフィア、もしセルギガが……マルセを殺したとしたら」


 そう言うとカルオンスは、怒りの表情を浮かべる。


「ええ、許せないわ。でも……なんでそんなことを?」

「考えられるのは……魔剣バスターへルギアの所有権を得るためだろうな」

「そうね……それしか考えられない。でも、村まで襲うことはなかったと思うのよね」


 それを聞きカルオンスは頷いた。


「確かにな。まぁ襲った理由は、恐らく自分の姿をみられているからだろう」

「口封じ……酷すぎるわ。昔は、そんな酷いことをする人じゃなかったのに」


 シルフィアがそう言うとカルオンスは首を横に振る。


「いや、アイツは……かなり卑劣なことをしてたぞ」

「じゃあ、私の前だけ……そんな姿をみせてなかったってことなのね」

「ああ、そうなる。それはそうと……シルフィアは、エルのパーティーに居るんだったな」


 そう言われシルフィアは、コクッと頷いた。


「それがどうしたの?」

「いや、なんでお前がエルのパーティーに居るのか気になっただけだ」

「そっかぁ。そうね……まぁ色々あって」


 シルフィアはそう言いカルオンスから目を逸らす。


「何か隠してるな。そういえば……つい最近、眷属が減ったとバスターへルギアに云われた。まさか、シルフィアなのか?」

「さぁどうだろうね。もしそうだったら、どうするの?」

「いや、どうするつもりはない。ただ……もしそうなら、他のオーパーツ所持者の眷属になったのかと思っただけだ」


 そう言いカルオンスは、シルフィアを見据える。


「……そうだとしても、言えないことぐらい分かるわよね」

「なるほど……そうだったな。まぁなんとなく分かった」

「セルギガに言うつもり?」


 シルフィアはそう言いカルオンスを睨んだ。


「待て、俺が言うと思っているのか?」

「……ごめん。だけど、セルギガの件もあるしね」

「そうだな。俺も……失望している。……魔剣バスターへルギアの所有権を手に入れたって聞いた時も、なんでセルギガがって思った」


 そう言いカルオンスは、俯き一点をみつめ怒っている。


「本当は、俺も眷属を辞められるなら……そうしたい」

「そうか……眷属は、そう簡単にやめることができないみたいだしね」

「ああ、一度だけバスターへルギアに聞いたことがあった……眷属をやめられないかとな」


 それを聞きシルフィアは、なんて言葉を返したらいいか分からなくなった。


「ごめん……私は、何も言えない」

「フッ、お前が悪い訳じゃない。だが……他の眷属になれたってことは、魔剣バスターへルギアよりも格上なのか?」

「それは……」


 シルフィアは返答に困る。


 ”シルフィア、そのぐらいなら話しても問題ないよ”

(そうなのね。グリモエステルス、ありがとう)


 グリモエステルスにそう言われシルフィアは話し始めた。


「ええ、勿論よ。格上だし、他のオーパーツよりも知能を持っているわ」

「なるほど……流石は、エルムスの子供だな。そんな凄いオーパーツを手に入れるとは、どういう経緯か分からんが」

「そうね……」


 そうこう話していると……。


 ”エルを止めろ! それと、これはシルフィアだけに送っている”

(どういうこと?)

 ”まだ早い。それに一人で多数の眷属使いとオーパーツ所持者を相手にするのは無謀だ”


 それを聞きシルフィアの顔が青ざめる。


(まさか……エル一人で向かったの?)

 ”宛てもなく探すそうだがな”

(無茶だわ……なんで止めなかったの?)


 そう言われグリモエステルスは、一瞬だけ考えた。


 ”止めた。だが……そのあと、勝手に向かった。儂の呼びかけにも反応せん”

(ねぇ、カルオンスにも手伝ってもらっても大丈夫?)

 ”そうだな……問題ないだろう”


 それを聞きシルフィアは、カルオンスに説明する。


「それはまずいな……分かった! 俺も探してみる……あのアジトには行ってないと思うがな」

「アジト? それはどこなの」

「倉庫街の奥だ。だが、連れて行かれてなければ……そこには居ないだろう」


 そう言いカルオンスは、遠くをみつめた。


「じゃあ、そこはあとにするわ。私は商店街を探してみる」

「俺は……そこ以外をあたってみるか」


 そう言い二人は席を立つ。

 そしてシルフィアとカルオンスは、エルを探しに向かったのだった。

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