エルの強さ

 エルはシルフィアとログスとララファの家がある方角へ向かい歩いていた。


「まだ先なのか?」

「そこの突き当たりを左に曲がった所に、ログスの家があるわ。ララファの家はその先の二軒目よ」

「じゃあ、あと少しで着くな」


 それを聞きシルフィアは、コクリと頷く。

 その後、丁字路までくる。とその時……。


「キャァー!!」

「やめろぉぉー!?」


 ログスの家の方角から聞こえてきた。

 その叫び声を聞いたエルとシルフィアは、急ぎログスの家に向かう。


 ∞✦∞✧∞✦∞


 ここはログスの家の外側。その壁際には、ログスとララファが居て身を震わせていた。


「おいっ! なんでパーティーを抜けた?」

「決まってるだろう! 俺とララファは……ダスカ、お前と一緒に居たくないからだ」


 そう言いログスは、ビクビクしながらも目の前のダスカを睨んだ。


 ダスカ・バズナゴ、デスナイトメアキメラと言うパーティーのメンバーの一人である。

 やたらと長いパーティー名だが、凄いのは名前だけじゃない。パーティーの実力もかなりのもので、超難易度の依頼を熟すほどの強者が揃っている。


 そう言われダスカは、ログスの胸倉を掴んだ。


「クソ雑魚の癖に、言ってくれるじゃねえか!?」


 そう言いログスの顔を殴ろうとした。とその時、ダスカは宙を舞い地面に叩きつけられる。


「ツウ……。誰だ!?」


 ダスカは、よろけながら立ち上がった。そして、自分を投げ飛ばした者を凝視する。

 そこにはダスカを鋭い眼光で睨んでいるエルがいた。その後ろには、シルフィアがいる。

 そう駆け付けたエルがダスカを投げ飛ばしたのだ。


「誰でもいいだろう。それよりも、嫌がっているのに殴るのは……違うよな」

「部外者は、黙ってろ!!」

「部外者じゃないわ! ダスカ、この二人に付きまとうのは……もうやめて!?」


 そう言われダスカはシルフィアの方を向いた。


「シルフィア、またお前か。なんでオレの邪魔をする? こんな何もできねえようなヤツを、庇ったってしょうがねえだろう」

「……。その考え……違うんじゃないのか。強者は弱者を助けるもんだろう」

「はあ? 何、馬鹿げたこと言ってやがる。そんなお花畑みたいな頭じゃ、ここではやっていけねえぞ」


 ダスカは馬鹿にしたような口調でそう言いながらエルをみる。

 それをみたエルは、ムッとした表情になった。


「ほう、ここの町は……そんなに酷い連中がわんさかいるって訳か」

「……その物言い、気に食わねえ」


 そう言ったと同時にダスカは、エルに殴りかかる。

 エルはそれを難なくよけダスカの腹を蹴り上げた。

 するとダスカは、数メートル飛ばされ地面に激突する。

 エルはダスカのそばにより確認した。


「ふぅ~、伸びてる……この程度か。上位クラスのパーティーメンバーだから、もっと強いと思ったが。もうちょい、手加減すればよかったかもな」


 それらをみていたシルフィアとログスとララファは、一瞬のことで何が起きたのか分からない。


「あーえっと、ダスカ……気絶してるのかな?」


 そう言いシルフィアは、ダスカのそばまできて覗き込む。


「ああ、死んではいない。だが、どうする? このままにしておくのか」

「そうだね。まぁ、このままにしておいても大丈夫だと思うけど。ダスカも、リーダーに知られるとまずいだろうからね」

「そうなのか? なるほど……コイツが、勝手にやってたってことか」


 それを聞きシルフィは頷いた。


「凄い……あのダスカを、アッサリ倒しちゃうなんて。エルって、本当に強いんだな」

「強い、か……どうだろうな。それなりに強くなろうとしてきた……それだけだ」


 エルがそう言うとログスは目を輝かせる。


「俺もエルのように強くなりたい。だけど……」

「心がけ次第じゃないのか。それといきなり、強い魔物と戦ってもレベルが上がる訳じゃない。地道に努力した方がいいと思う」

「エルもそうだったの?」


 そうシルフィアに問われエルは言葉に詰まった。自分はグリモエステルスの力を借りて強くなったからだ。


「……俺は、そうだな。努力はしてきたと思う。多分……」

「そうか……色々あったみたいだし、大変だったね」


 そう言ってもらうもエルは複雑な気持ちになった。


 その後エル達は、少し話したあとダグル迷宮の方へと向かう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る