第5話 練習開始Part2

 万丈先輩に連れられて俺はおそるおそるAコートへ向かった。


 「ダカッ!!バシッ!!ギュンッ!!」


 他のコートとは比べ物にならない程に打球音が響いており緊張感が張り詰めていた。俺は思わず息を吞んだ。


 (なんだこの空気感!?顔つきがほかの人と違う。)


 不気味なほど物静かなAコートに俺は驚いた。今まで「強豪校は練習から大きな声を出してチームを盛り上げている。」という先入観を持っていたが、どうやらそうでもないらしい。


 「おい、お前そんな所で何してんだよ!」


 俺がすっかり見とれていると、一人の先輩らしき人にそう言われ、「いや、、俺は、、、万丈先輩に呼ばれて、、、。」と言いかけたが、そこで言葉はさえぎられた。


 「こいつは俺の連れだよ。そんなけんか腰で行くなって、ひいらぎ。」


 「すみません万丈先輩。てっきり変質者かと思って。」


 「んなわけねぇだろ(笑)。しかも、お前と同級生だから仲よくしろよなー。」


 『え⁉』


 俺たちの声は同時だった。


 この人が、いや、こいつが俺のタメだと!?向こうも同じような表情だ。それにしても一年でAコートにいるとは、相当の実力者なんだな。


 「よ、よろしくな。」


 「お、おう。よろしく。」


 なんてたどたどしい挨拶だ。これで変な関係にならなければ良いけど、、。


 「まあ、そんなことはどうでもいい。おいみんな、今からこいつの特訓するからちょっと休憩しててくれよ。」


 「おお、吉田君か!凌駕に目付けてもらうなんて、中々才能あるんじゃないの。」


 「如月先輩!いや、そんなことはないと思うんですけど。あと、暖でいいですよ、呼び方。」


 如月先輩とこうやって話すのも久しぶりだ。


 「悪ぃな、勝太。手間とらせちまって。」


 「構わねえ。けど、お前のことだからやるからにはなんか意図があんだろ?」


 「ふっ、まあな。よし、お前そこで構えてろ。」


 万丈先輩にそう言われ、俺はリターンの定位置で構えた。


 「あのー、これって一体何の練習するんですか。」


 「ん、試合だよ。」


 「試合」、その言葉に俺の鼓動がどんどん高まっていく。


 (試合だってえええええ!!??嘘だろ?無理だろ!?)


 理解が追い付いていない俺は頭が真っ白で、おそいかかる緊張にやられていた。


 「し、試合って、い、今からですか!?」


 「当たり前だろ、なに言ってんだよ。もしかして、ビビってんのか?(笑)」


 「いえ、そんなことはないんすけど、、」


 「いつもの練習だと思ってプレーすればいいんだよ。」


 そうだ、練習通りやればいいんだ。何も怖がることなんてない。こっちだって、万丈先輩と試合できるのは願ったりかなったりだ。


 「じゃあ、俺からサーブな。」


 いや、やっぱこれ無理だろ。マジでやんのかよ~~~~(泣)


 



 


 


 


 


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