第45話 空想庭園、湖沼のほとり
ここは小夜子が初めて僕を一つの物語の住人として登場させたところだ。
校庭の隅で会った僕を小夜子は空想の世界で、僕が小夜子と同じ年のとき、ここで男たちによって首を切られた。
最初に僕はとある国の国司の隠し子として、生を受けた。
空想はそこから始まり、僕は青い水干を着、笛を吹く少年だった。
月を愛で、笛を鳴らすのが何よりの救いの少年だった。
月を見ることで幼い頃に失った母を思い、慰めた。
穏やかに過ごしていた日常もそこまでだった。
空想の世界での僕は濡れ衣をきせられ、この島まで船で渡り、体中を刻みつけられ、最後には磔にされ、首を落とされた。
悪人の男らによって指を切られ、背中を切り刻まれ、殴られ、蹴られ、頭を殴打され、しまいにはたくさんの傷心を触られる。
そんなまがまがしくも悲しいストーリーが際限なく続くのだ。
僕は小夜子の空想の世界であらゆる物語の主人公になれたものだから、そこでどんなにひどいことをされようが平気だった。
僕はいくら身体を切り刻まれようと平気だった。
僕が死に絶え、その死体までもが鴉に啄まれようとも僕は小夜子のためなら何度でも生き返った。
死は僕にとってはステータスだった。
小夜子が夜に空想の世界に溺れたいのなら、幾度でも死を受け入れた。
鏡の底で僕は何度死んだだろう。
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