【看病・マッサージ・温泉・添い寝】しっとり系聖女様と森の中で過ごすスローライフ【ASMR】

倉名まさ

第1話 森の中の目覚め

【登場人物】

エレアス――語り手。森で一人暮らす聖女。元魔王討伐の勇者パーティーの一員。

旅人――聞き手。当てのない、放浪の旅をしている。


森の中の小さな家。

旅人は小部屋のベッドの上で目を覚ます。

そのかたわらには、静かに微笑む聖女エレアスの姿。


BGM:鳥や虫の鳴き声。

(声・近・中央・ココから)

……気が付きましたか?


(ホッとしたように)

良かった


具合はいかがですか?


まだ少しお辛そうですね

(声・近・中央・ココまで)


SE:ベッドから起き上がろうとする音


(ささやき声・極近・左・ココから)

(安心させるように)

ああ、どうかそのままで


無理せず、横になっていてください


大丈夫、大丈夫ですから

(ささやき声・極近・左・ココから)


(声・近・中央・ココから)

覚えていますか?


あなたは森で魔物に襲われ怪我を負ったのです


気を失ったあなたを


わたくしがお連れしました


ええ、ここはわたくしの家です


ゆえあって、この森の中でひとり暮らしております


エレアスと申します


どうか今は安静にされていてください


回復魔法をかけましたが


体力はまだ戻っていないはずです


ですが、顔色は悪くありません


命に別状はないでしょう


数日後には完全に回復されるはずです


いえ、お礼など……


お気になさらないでください

(声・近・中央・ココまで)


(声・極近・左・ココから)

どうか、体力が戻るまで


お気を楽にされていてください


ここを我が家だと思って


ゆっくりとおくつろぎください


遠慮は無用です


何かご用がありましたら


なんなりとお申しつけください


わたくしにできることでしたら


してさしあげます

(声・極近・左・ココまで)


(声・近・中央・ココから)

いえいえ、困ったときはお互い様ですよ


見たところ長旅をされてる装いですね


旅人様はなぜこのような人里離れた森の中に?


さしつかえなければ、お伺いしてもよろしいでしょうか


まあ、野盗に襲われ……


森に迷い込んで……


今度はこの森で魔物に出会ってしまい……


それはひどい災難でしたね


ですが、もうご安心ください


この家に着いたからには


野盗だろうと魔物だろうと


決してあなた様を傷つけさせはしません


わたくしがあなた様をお守りします


今はただ、ごゆっくりとお過ごしください


ふふっ、わたくしが野盗のように見えますか?


それとも妖精に化かされているとでも?


よく旅人を化かす妖精のお話を


詩人たちが歌っていますものね


う~ん、妖精ではない、と身を明かすすべはありませんが


こればかりは信じて頂くしかありませんね


けれど、あなた様に危害を加えるつもりなら


気を失っているときにとっくにできていたはず……


と、申しあげれば少しは信頼していただけるでしょうか?


まだ顔色がよくはありません


お互いの身の上のお話は


もっと具合がよくなってからいたしましょう


(ささやき声・極近・左・ココから)

いまは、何も考えず、ただごゆっくりとお休みください


ええ、すべてわたくしにお任せください

(ささやき声・極近・左・ココまで)


(声・近・中央・ココから)

いえ、迷惑などということはまったくありません


訪れる方もいない単調な森での暮らしですから


旅人様をお迎えして


かえって張りのようなものを感じているのですよ


ふふふふっ


食欲はありますか?


簡単なものですが、お作りしますね


どうかご安心ください


……魔物、ですか?


あ~、それはその……


わたくしが追い払いました


自分で言うのもなんですが


少々腕に覚えがありまして……


(誤魔化すように早口で)

そ、その話は置いておきましょう


この時期は、森で採れる茸が豊富なんです


野草と合わせて、ちょっとした炒め物を作りますね


病み上がりですので、お酒はよしておきましょうか


お茶を沸かしますね


どうかあなた様はそのままで……


もう少し横になっていたほうがよろしいでしょう


わたくしは食事の用意がありますので


一度、失礼いたします


何もない退屈な部屋ではありますが


どうか、ごゆっくり、お過ごしください

(声・近・中央・ココまで)


SE:扉を閉める音

(エレアス、ここからひとりごと)

(声・遠・中央・ココから)

まさか、森で一人暮らすわたくしのもとに


あのようなお方がいらっしゃるなんて……


久しぶりに若い殿方を間近で目にして


なんだか顔が火照ってしまいましたわ


不審に思われてないとよいのですけど……


それにしても……


なんてたくましく、お優しそうな方……


神よ、わたくしの心を試そうとなさっているのでしょうか?


もう男の方は信じないと……


もう恋などしたくはないと思っていた


わたくしの心を揺さぶろうというのでしょうか


だとすれば、神よ


あなたはどこまでも底意地の悪いお方


……仕方ないではありませんか


あの方は魔物に襲われ弱っていらっしゃるのですもの


たっぷりと身も心も癒して差しあげるのも聖女の務め


決してよこしまな思いからではありません


ええ、決して……!


さあ、ともかく精のつくお料理を作って差しあげなければ……

(声・遠・中央・ココまで)


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