異世界戦国の生きる道
もすけ
第1話 名前は「利道」
僕の名前は利道(としみち)。
この堅苦しい名前を僕は気に入っていない。両親がなぜこの名前を名付けたかも理由を知りたいとは思わない。もう知ることは出来ないし、知った所で何も変わらないと思うからだ。
本来ならば中学を卒業する年だが、僕はそこへは行っていない。
今はとある施設で暮らしている。ここでだって問題なく勉強はできる。
施設のスタッフ
「利道君、おはようございます」
利道
「・・・」
別に挨拶を返したくないわけじゃない・・・。よく返し方がわからないだけだ。
周りの苦笑いする表情を見るたびに、僕は心を閉ざしていく。
施設のスタッフ
「この間の模試すごかったな。この点数なら県内トップの高校も目指せるぞ。結果次では学費の免除も可能だ」
利道
「高校・・・行く気ないんで」
そういうと僕は部屋へ入った。僕の部屋は施設の3階にある。
決して眺めが良いというわけではない。でも自分の部屋が一番落ち着く。
誰もいない僕だけの世界。
部屋ではいつも漫画を読み漁る。
どれも中古で買ったものだが今の僕にとってはこれが宝物だ。
様々なジャンルの漫画を読むが、今一番読み込んでいるのが異世界モノだ。
異世界という現実では考えられないぶっ飛んだ世界観が、僕の現実を忘れさせてくれる。
逆に最も嫌いなものが歴史だ。大久保利通という偉人がいる。
その偉人が教科書に登場するたびに嫌な思いをしていた小学生時代。そのせいで歴史全般が嫌いになった。
今となっては取るに足らないことと思えるのだが、なぜかそれが尾を引いて今でも歴史嫌いが続いている。
僕は漫画をひとしきり読み終えると、ベッドにそのまま寝落ちしていた。
夢か現実なのかが分からない状況の中で、僕の目の前には漫画でよくみる妖精が現れた。僕はボーっとしながらその妖精についていく。すると急に妖精が消えた。その瞬間僕は意識を失う。
「・・・道。利道!起きなさい」
その声で目を覚ます。すごく聞き覚えがある声だ。
利道
「お母さん!?」
気が付いたら僕の隣に母がいた。
どうやら車の中らしい。運転は父がしている。
お母さん
「そんなに驚いてどうしたの?もう目的地につくわよ」
お父さん
「利道は毎日の勉強で疲れているんだろ。目的地まで寝ていても大丈夫だぞ。今日はたくさん気分転換しなさい」
両親の声がどこか懐かしい。僕ははじめこの状況に混乱していたが、久々の再開による喜びで胸がいっぱいだった。そこからは眠気も忘れてたくさん話をした。これまでの分を取り返すくらい。
そんな中、僕は思い立ったようにある質問をした。
利道
「お父さん、お母さん。僕の名前ってなにか意味や理由があるの?」
すると父は微笑みを浮かべた。
お父さん
「お前の名前は・・・」
そんな時だった。前方から車線をはみ出した対向車が全速力で僕達に向かってきた。
父は慌ててハンドルを切る。母は僕を強く抱き締めてくれた。僕は怖くて目を閉じていた。
再び目を開けた時には自分の部屋のベッドの上に戻っていた。
夢であることはなんとなく気付いていた。それでも切なさが強く残る。
外はまだ明るい。僕は窓から外を眺めた。すると夢の中で現れた妖精が、窓の外のすぐ側を舞っているのだ。僕はその妖精に魅了され、気が付けば手を伸ばしていた。
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