第27話 ばらまかれた写真 1ー4
セーラー服。カツラ。すね毛。
俺のこの醜い格好を見て、
きっと脳の処理が追いついていないのだろう。
俺だって同じ状況であればそうなるはずだ。そうなるに決まっている。
俺は花野井さん……そしてその女生徒を見据えた。
今しがた二人は一戦交えたのだろう。
花野井さんは地面に倒れ、その頬は赤く染まっている。
誰がどう見ても、殴られた跡だった。
腹がたった。
暴力はダメだろ、それはダメだ。
やはりもっと早くにアクションを起こしてしまうべきだったか。
俺は呆然としている女生徒に例の写真をただ一方的に突きつけた。
「……?」
女生徒はまだこの状況が理解できないようで、依然として固まっている。
そんな彼女に向かって。
「これは俺だ!」
「……………?」
女生徒は訳が分からない、といったように写真の一点を見つめたまま動かない。
そうして数秒が経過した後、何を話し出すかと思えば。
「……え、このおっさんが
「ち、違う! そっちじゃなくて! その女の方だっつーの!」
この女装の意味を考えてほしい。
わざわざカツラまで被ってその写真の女性に似せてきたというのに……。
結構高かったんだぞこれ。
「いや、いやいやいやいや、それはないでしょ。 さすがにない。ていうか何で女装してるの? ……キモいんだけど」
うっせえよ。マジになって引いてんじゃねえよ。
俺だって女装したくてしてるわけじゃねえってんだ。
「だから、その女子高生は俺なんだって! ほら、見た目だって似てるだろ?」
「いや、だってこれ……」
女生徒は写真を奪うと、今度はそれを俺に見せつけるようにコチラに向ける。
「じゃあなんでアンタ、おっさんとホテル向かってるわけ?」
「……ッ」
昨日三谷が言っていたのはコレか……と思い至るのと同時、俺は反射的に花野井さんを見つめてしまう。
こういうことはしてなかったんじゃなかったのか……? という疑問が頭を過ぎった。
花野井さんは弁解するように首をブンブンと横に振った。
「これ見るからにそっち系のホテルだけど……。弁解でもあるんならどーぞ?」
勝ち誇ったように笑う女生徒。
このくそビッチ……調子乗りやがって……。
ああ、良い、良いさ。それならこっちにだって考えがあるってもんだ。
俺は次の言葉を
いや、本当にやるのかこれ……?
一応こんな時のために考えていたことはあるだが、実際に使うことになるとは思っていなかった。
まさか本当にこんな事態になるとは……。
でも、それ以外の方法なんて思いつかねえし……。
「……よし」
俺は自分の頬をひっぱたく。
その突然の奇行に、それまで事態を
どうせ俺は___変人だ。
「いや、弁解なんてするつもりはない」
「……は?」
俺はクルリ、と生徒が集まった方に向き直る。
大勢集まってくれているようで、コチラとしても好都合だ。
「一回しか言わねえから、よく聞いとけよ……ッ」
羞恥に顔を赤く染めながらも俺の決意は固まっていた。
だから、何の
「俺は、おっさんが、大っ好きだァァァァァ! ぷっくりしたお腹なんてすげぇ魅力的だし、うっすらした生え際も好感度高い! ホテルに行った!? ああそうだとも! 悪いかよ! 大好きなおっさんとホテル行って何が悪い! 自由だろうがこのくそビッチがぁ! 文句でもあるんなら言ってみろこのハゲ! 俺は、この世で、何よりも、おっさんが、大っ好きだァァァァァァ!」
花野井さんのことで
とにかく後先考えず叫んだ結果がこれだ。
「へへ」
どーだよ、ざまーみろ。
俺は再び向き直り、先程気色の悪い笑みを浮かべていた女生徒に目を向ける。
彼女の顔色は段々目に見えて悪くなり、そしてついには。
「おえぇ」
吐いた。
お、おいおい……嘘だろ。
流石にそこまでキモがられると傷つくんだが。
「おい、何の騒ぎだ! もう五限目始まるぞ!」
そんな最悪の状況下で、我らの担任教員、
花園は騒ぎの元凶である俺たちのもとまで来ると、女生徒の付近に落ちていた写真を手に取る。
阻止しようにも間に合わなかった。誰もがその場で動けずにいた。
花園は表情のない顔のままその写真、そして教室中を眺め、たった一言。
「谷上と花野井。職員室に来い」
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伏見ダイヤモンド
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