第15話 「こーっこーっこーっ!!?」
「何を投入するの?」
錬金鍋の説明を見た限り、投入するアイテムは消費アイテム限定だ。一回使えばそれで無くなるアイテムだからこそ、慎重に投入するアイテムを選んだ方がいい。それに投入したアイテムは成否問わず無くなる仕様だしね。
「私が考えるアイテムはこれです!」
「接着剤と捕獲ロープ?」
「これで粘着性を持った捕獲ロープになるはず……!」
「そもそもよくそんなものを持ってるな」
「……」
あれ、ハツモの言葉にこサギが目を逸らしたんだけど。
:そりゃあアイテム整理苦手だからな
:冒険中に取得したアイテムそのままだし
:どう見てもゴミなのに取得するし
「だ、だってこのあと何か使うかもしれないじゃないですか!?」
「典型的な片付けができない人の発言!」
「はいというわけで、この二種類のアイテムを投下!」
『あっ!』
その瞬間、接着剤と捕獲ロープを投入された鍋が光り、青と茶色の二色の水が鍋を満たした。そして僕たちの脳内に声が響く。
『子供でもできる! 簡単錬金鍋のチュートリアルを始めます』
『この鍋を使用するとジョブ:錬金術師が未取得の場合、ジョブ:錬金術師を新たに取得することができます』
『ジョブ:錬金術師と本アイテムの錬金術は仕様が異なるのでご了承ください』
なるほど、これを使えば簡単に錬金術師のジョブを入手することができるんだ。手札が増える分にはいいことだから、時間があれば僕も錬金術師のジョブを手に入れておこう。
『消費アイテムを二個投入してください』
『投入を確認。それでは本アイテムに備え付けられた錬金オタマを持ってください』
「これじゃない?」
「あっこれですね!」
錬金鍋とセットになっていた錬金オタマをこサギに渡す。消費アイテムを用意したのが彼女だから、今回使用するのは彼女でいいだろう。
『錬金オタマで鍋の中の水をゆっくりかき回してください。二種類の水を零した場合失敗扱いとなり、また二種類の水が制限時間内に混ざり切らなかった場合も失敗となります』
「ふむふむほうほう……」
『錬金鍋が光ったら錬金の成功です』
チュートリアルの解説と同時にこサギが鍋の中をかき回していく。すると二種類の水が徐々に混ざり合っていくのが見える。そしてしばらくすると錬金鍋が光り――。
「ぴよー」
――ひよこが出てきた。
『錬金成功ですね』
「こーっこーっこーっ!!?」
「こ、こけーっ!?」
「ひよこッス!?」
「は、早く投げて!」
「は、はいぃい!!」
唐突に出てきたひよこの姿にこサギが急いで防衛ゴーレムの方へと投げる。投げられたひよこは一旦空中でバウンドすると、ふわりと着地した。
『ゴー……ゴー……(暇だな……兄者)』
『ゴー(これも我らの使命だ弟者)』
『ゴー?(む、なんだあれは?)』
「ぴよー」
『ゴゴゴ――(ひよこ? 何故ここに――)』
その瞬間ひよこの体が膨張し、防衛ゴーレムの一体を巻き込むように爆発した。
『ゴゴゴオオオオオ!?(兄者あああああ!?)』
うわぁ。
「ぴよぴよ」
「……ひよこが帰ってきましたね」
「そしてこのまま鍋の中に入ったぞ……」
『ゴゴゴオオオオ!!(何故だ兄者あああ!!)』
防衛ゴーレムの悲痛な叫びが聞こえる。いきなりもう一体のゴーレムが爆散したんだ。その嘆きも無理はないだろう。
ってか爆弾ひよこの火力高いな?
《恐らく錬金鍋の経年劣化による不具合デス》
:そんなことある?
:いや光ってたじゃん!
:どう見ても成功演出なのにどうして
とにかく今のこの状況をどうにかしないと!
「ど、どうします!?」
「相手は一体だから……ハツモとマナナンは大釜を! 残りのメンバーはあの防衛ゴーレムの相手をするよ!」
『お、おう!』
二体だけだったら厳しかったけど、一体だけなら何とかなるかもしれない。そう判断した僕は作戦を口にして、あの防衛ゴーレムへと向かっていった。
『ゴオオオオオオ!!』
悲しみのモンスターである防衛ゴーレムに対し、一番槍を担ったのはこのパーティーでかなりの実力者であるこサギからだ。
「行きますよぉ!」
「『開幕のエチュード』そして『活力のオーバーチュア』!!」
ここでサポーター職である吟遊詩人の僕がバフを付与。これによってこサギには身体能力の強化とクリティカル率アップのバフが付いた。
「これがセンリきゅんからの愛!!」
ウィークアナライズ。
ウィークストライク。
シャイニングブースト。
ブーストコンバート。
ハイギガジャンプ。
あの大岩を一撃で破壊した必殺のスキルコンボを発動する。僕のバフと彼女自身のバフによって放たれる一撃が今、防衛ゴーレムへと迫る。
「『メテオールライン』!!」
『ゴオオオオオ!?』
一撃を受けた防衛ゴーレムが吹き飛ぶ。そう吹き飛んだだけだ。ダメージを受けたものの、一撃で破壊するに至らない!
「だけど動きを止めた今なら!」
ストレージから『マッドメタルゴーレム』のコアを取り出し、防衛ゴーレムへと投げる。これで――!?
『ゴ、アアアアアア!!!!』
「抵抗した!?」
なんと銀色の液体となったマッドメタルゴーレムのコアが防衛ゴーレムへと張り付いた瞬間、防衛ゴーレムが抵抗してマッドメタルゴーレムのコアが弾かれたのだ。
:やっぱボスには効かないか!
:同じ防衛ゴーレムでも性能が違うようだ!
:混沌ウサギの攻撃でも一撃じゃないってことはかなり硬いぞこのボス!
じゃああのもう一体を爆破させた爆弾ひよこの火力って何!? 思わぬところで爆弾ひよこの火力に戦慄していると、防衛ゴーレムが更なる雄叫びを上げる。
『ゴアアアアアアア!!!』
「いったい何を!?」
防衛ゴーレムの雄叫びをトリガーに、このフロアのどこからか小型のゴーレムが出現していく。
「仲間を呼び出した!?」
「マズイ、この人数であの量は……!?」
その瞬間だった。現れた小型ゴーレムが次々に防衛ゴーレムへと取り付いて行っているのではないか。
「まさか、強化形態ですか!?」
「させるか!」
ストレージからロケットランチャー/THE FLASHを装備し、銃口を防衛ゴーレムへと向ける。説明書のページは勿論――。
「――コード:レイジングストリーム!!」
無数のロケット弾が一直線となって合体中の防衛ゴーレムへと殺到する。
『ゴガガガアアアアア!!?』
真正面かつ直撃。防衛ゴーレムに取り付いている小型ゴーレムが徐々に破壊されてポロポロと防衛ゴーレムの肉体から消えていく。
だけど。
「……噓でしょ」
冷却によってレイジングストリームのモードが切れた。だけど全モード中最大の火力を誇るレイジングストリームでも倒せていなかったのだ。
『ゴアアアア……!!』
「また小型ゴーレムが!」
次々に補充される小型ゴーレムが防衛ゴーレムの体に取り付き、機体の一部となる。そうしてダメージすらも修復されて誕生したのは、ゴリラのような外見をした防衛ゴーレムだった。
「――シッ!」
「ヤス!」
ヤスがドスを構えて防衛ゴーレムの方へと向かう。
「『貫き獄殺』!」
スキルを宣言し、ドスを防衛ゴーレムに突き刺した。だけどドスは僅かに入っただけで大したダメージを与えられなかったようだ。そんな光景をみたヤスは、困ったような表情を浮かべながら僕のところに退避すると言葉を発した。
「これ、俺の火力じゃあ無理ッスね……」
「……だよねぇ」
「俺のジョブって基本的に対人専用ッスからねぇ……!」
確かにジョブ:アウトローは対人に特化したスキル構成が豊富なジョブだ。更には周囲の小物を武器に変えることもできるため、一対一でも一対多でもこなせるジョブでもある。
それでも別にボスを相手に戦えないわけでもない。ただ今回戦う防衛ゴーレムが予想以上に硬いため火力不足となっているのだ。
「……だったらしょうがない」
ここは僕とこサギで食い止めるしかない!
「大丈夫なんッスか!?」
「爆弾ひよこなら行ける」
「え!?」
「ヤスはハツモたちのところに行って、錬金鍋で爆弾ひよこを作るんだ!」
「そうか、爆弾ひよこの火力なら行けるッスね!」
僕の言葉の意味を理解したヤスがハツモの元へと向かう。これであのゴリラになった防衛ゴーレム……ゴリラーレムの前に立っているのは僕とこサギの二人のみ。
:やべーって!
:メタルコングに二人はキツイ!
:どうすんだ!?
「こうするの!」
「それは……マッドメタルゴーレムのコア!?」
対象はゴリラーレムじゃない。
僕が狙うのは――。
「もう一体の防衛ゴーレム、君に決めた!!」
『ゴアアアア!?(兄者あああああ!?)』
爆弾ひよこによって破壊されたもう一体の防衛ゴーレムにマッドメタルゴーレムを投げたのだ。その瞬間、破壊された防衛ゴーレムをベースに取り付いたマッドメタルゴーレムが変形する。
相手がコングならこっちは――。
「センリきゅん!?」
「頼んだよ!」
『……(サムズアップ)』
:ゴジ○じゃねーかwww
:確かに夢の対決だけども(笑)
:50000¥/ メタル○ジラVSメタルコング、ファイ!
『ゴアアアア!!!(貴様らああああ!!)』
『GAAAAAAAAA!!』
因みにマッドメタルゴーレム自体に発声機能がないため、ゴ○ラの鳴き声を録音したサウンドオブジェクトを取りつけてあります。あとは当然○ジラのテーマを演奏してBGMボルテージを上げていけば準備完了!!
:無駄に凝りやがってwwww
:いいぞもっとやれwwww
:これだからセンリちゃんの配信はやめられねぇんだ!
「行くよ!!」
「はい!!」
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