不思議な体験をした。でも怖くない話。
りほこ
第1話 2歳で走馬灯
もしかしたら3歳かもしれませんが、取りあえず2年保育の私が入園するずっと前に経験したお話から始めたいと思います。
ある夏の日。私は家族と、千葉県にある南房総へと遊びに来ていました。
海の近くにマンションを借りていたので、そこで寝泊まりをしながら遊んで過ごすことが毎年の恒例だったのですが、その年はご近所さんも一緒でした。
海に浮かんだり、カニを見付けたり、お城を作ったりするのも好きでしたが、マンションにあるプールで泳ぐことも私は大好きでした。
幼い頃の記憶なので曖昧ですが、学校のプールくらいの大きさだと思います。
でも学校のプールのように
そんなプールで遊ぶことになった私には、5つ年の離れた姉がいて、ご近所さんにはもっと年の離れたお姉さんがいました。
お姉さんは泳げるのですが、泳げない私たち姉妹は、いつも通り浮き輪を装備してプールに入水。
今は絶対に考えられないと思いますが、親たちはプールサイドにいる状態で、子どもたちだけでプール遊びを始めました。
と言っても
お姉さん2人はどう思っていたかは分かりませんが、普段から留守番の多かった私は一人で遊ぶことに抵抗がなかったのでとても楽しんで泳いでいました。
なんなら得意になっていました。
それが仇となることも知らずに……。
私は浮き輪を付けているくせに「なんて泳ぐのが上手なんだろう」と心の中で自負しながら、広々としたプールをいけしゃあしゃあと泳いでいました。
そう、そんな時に起こったが、このお話の本題です。
何の前触れもなく、突然私の見ていた景色が水色に。プールの水中へと一変したのです。
さっきまでクリアだった音がやけにこもって聞こえて、何が起きたのか全く理解できませんでした。
ですが前方をすーっと横切るお姉さんの姿と、その手に私の付けていた浮き輪があって悟りました。
私はショックを覚えながらどんどん沈んでいきました。
ただ、もがくとかは全然しませんでした。
なぜなら
当時の私は走馬灯という言葉も知りませんでしたし、概念もありませんでした。
だから死に際に走馬灯を見るというのは、作り話ではなく本当のことだと私はですが思います。
走馬灯といったらアニメだと画面全体で振り返ったりしますけれど、実際は周りの景色が見えていて、その真ん中に帯状に現れます。
動画共有サイトのサムネを横並びにした感じでした。でも色味は薄かったです。
私は今さっきお姉さんが横切ったように右から左へと流れてくる帯に、「何これすごい」と目が釘付けになりました。
けれど3つほど眺めて、つまらなさを感じます。
画面に映っていたのは、どうやら床の間の隣りの壁。私は留守番中、よくここで遊んでいたのでその記憶だと思います。
いやいや、アルバムを見返したら両親は色んな所へ連れて行ってくれていたぞ?
夢の国とか、もっと楽しそうな思い出を見なよ自分!
そんなツッコミは当時は思いつきませんでしたが、2年間を振り返るであろう帯をただ静かに眺めていると、突然また景色が一変したのです。
お察しの通り(?)私は水中から顔を出していました。
まず私が最初に確認したのは、再び身に付けていた浮き輪の存在でもなく両親でした。
ですがプールサイドでベッドのような椅子に寝そべる両親を見てガックリ。
こっちを見てくれてはいたのですが、起き上がってもいませんでした。なので私は仕方がなく、またぱしゃぱしゃと足を動かして泳ぐことにしたのです。
姉もお姉さんも私もその件には触れずに、各々泳ぐというカオスな状況に逆戻りしました。
……って私含め、ヒトコワか?
そうそう。皆さまは読んでいて不思議に思いましたでしょうか?
私はこの出来事の間中まったく苦しさを感じなかったのですよ。
イキって泳ぐ→水中→走馬灯→復帰→諦めて泳ぐの流れで、もしかしたら私が感じていたよりも短い時間でこと終えていたのかもしれませんが。
ちなみにお姉さんは、私が上手に泳いでいたので浮き輪を取ってみたとのことでした。
ほらあれです。補助輪なしで乗れるように、自転車を支えてもらいながら練習をしていたら、本人に内緒で自転車の後ろ放す時みたいな心情です。
ですが一瞬でもこんな経験をしてしまうので、特に小さいお子さんがいる方はどうか気を付けてあげてください。
というわけで第1話は、私が勝手に死にそうになって走馬灯を見たお話でした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます