ダンジョンはお好きですか?ガチャはお好きですか?
之
第1話 秋葉原へ行こう
地球上で資源が枯渇の一途を辿る中、資源を奪い合う為の戦争が世界中で始まろうとしていた時代。
突如として神様が現れ、こう言った。
『争いを止めよ。今から世界を改変する』
そして世界は一変した。
『今後、地上での争いは許さぬ』
世界はそれ以降、神様の声に従い戦争を止め、変化した世界の対応に務めてきた。
改変された世界には前の世界にはなかった迷宮が世界各地に現れており、その中にはありとあらゆる資源が見つかった。
人々はそれをダンジョンと名付け、迷宮を探索する事に力を注いだのだ。
そして、もう一つ変化したもの。
ダンジョンを攻略する為の武器やアイテム・資源等々、様々な物資がカードになって手に入る道具も、世界各地に現れた。
出てくる物資はランダムな事もあり、人々はそれをガチャと名付けた。
「何故、ランダムなのでしょうか?」
誰かが尋ねた。
すると、神様曰く。
『公平だろ。何が出るかは運命次第なのだから。それにその方が、個性が生まれて面白い』
◇ ◇ ◇
俺は電車に揺られながら、神様のガチャがある秋葉原へと向かっていた。
混み合う事が予想できたから始発の電車に乗ったというのに、結局は満員電車になっている。
俺は運良く電車に乗り込めているが、何人もの人達が満員過ぎて乗り込むのを諦める姿すら確認できる程。
何でこんなに混んでいるのかは解っている。皆、同じ理由のはず。
そうでなければわざわざ始発になんて、こんなにも混雑している電車になんて、誰も乗りたくはないだろう。
けれど今日に限っては、誰しもがそうはいかないと考えているはずだ。
今日はこの世界に神様のダンジョンとガチャが現れて、世界が変わって、ちょうど100年目の記念すべき日。
ガチャがある秋葉原は勿論、秋葉原周辺も様々なイベントが開かれており、今日は類を見ない程のお祭りが開かれるからだ。
他の神様のガチャがある地域も、世界も、同じ様な事になってはいるみたいだけれど。やはり聖地とされている秋葉原に行ける距離に住んでいるのだから、皆一様に同じ場所へと向かっているせいで混雑している。
因みに何で秋葉原が聖地となっているかは、俺は知らない。幼い頃からそう呼ばれている事だけしか解らない。
さらにビッグイベントで。100周年記念のお祝いとして神様のガチャに、特別な何かが入るらしい。
これは神様自身が公言しているから、嘘やデマカセなんかじゃない。
ビッグイベントがある所為もあり、全員が聖地である秋葉原へと向かっている。
どうせ行くなら秋葉原だと、せっかく行ける距離にいるのだからと、皆考える事は同じな様だ。
かく言う俺も、その一人。
ダンジョン探索とガチャから出るカードのコレクション&売買を仕事や趣味としているのだから、この記念すべき日に参加しない訳にはいかないのだ。
ビッグイベントに参加する為の神様のガチャを回す
屋台や露店もかなりの数あるみたいだし、ひょっとしたらお宝や掘り出し物に巡り会えるかもしれない。
俺はワクワクで、心が一杯になっていた。
ビッグイベントの方よりも、どちらかというと屋台や露店の方を凄く楽しみにしている。
神様のガチャに関しては特別な何かを出そうとか、絶対手に入れてやるぞ!とは、本気で考えていない所為もあるからだろうか。参加する事だけを目的としているから、そこまでテンションが上がる要因にはなっていない。
皆はどうか知らないけれど、まぁ楽しみ方は人それぞれ自由だろう。
神様のガチャの中身は判明しているモノだけでも、かなり種類が豊富だし。まだ判明していない新種のモノも、未だに確認される事がある。
数ある種類にさらに追加されるのだから、しかも特別なモノをどれだけ追加するとは神様も公言していないのだから、それを出すには俺の持っているガチャPではまず無理だろう。
特別は数が少なく希少だから、特別なんだと俺は思っている。
その点ガチャとは違い、屋台や露店はそこに実物がある。自分の意志で選んで、欲しい物を買えるのだから、そちらに何かないかとワクワクしているのだ。
しかし珍しいモノを見つけてもそちらはそちらでリアルマネー、お金がかかってしまう。珍しいモノはやはり高い。
高いモノは買えないとは解っているが見れるだけでも、貴重な経験だと、十分だとは思っている。だから今回のお祭りは本当に楽しみにしていたのだ。
そんな俺だけど、記念にガチャは回しておきたい気持ちくらいはある。
ワンチャンあるかなくらいの気持ちで、ビッグイベントに参加だけでもしておきたい。それくらいの気持ちなだけ。
特別な何かは今日しか出ない訳でも、今日絶対に出るという訳でもないのだから。
今日はただ皆と、同士と一緒になって、お祭りを心底楽しむ事を本来の目的に置いている。
何をするのもソロな俺が皆とか同士とか言うのは違うのかもしれないが、そう思うくらい許して欲しい。
こんなワクワク感は滅多に味わえないせいもあり、変なテンションになりつつある。
俺は100周年という記念すべき瞬間に立ち会える人生にとても感謝しながら、目的地である秋葉原に無事に到着したのだった。
大体のお店の開店は10時頃。今の時間は5時。
時間までぶらぶらと散歩しつつ、軽食でもつまみつつ、何か無いかと散歩でもしながら時間を潰す事にする。
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