第11話 計画
二人が墓に埋葬されたのはそれから三日後だった。
真夜中、集落の外れ、結界の外にあるその墓場から、何やら物音がしてくる。
ある一つの墓場の土が盛り上がった。
「はぁー!」
土の中から一人の男が出てきた。
三日前に自殺したはずのツインだ。
「……マジで…生きてる…」
ツインは自分の体をマジマジと見つめて呟いた。
大きく息を吸い、手を当ててみる。ちゃんと鼓動が聞こえる。
しばらく自分が生きている事をしんみりと感じていたが…。
「ああ、そうだ、ジェミニもいるはず」
ツインはそう呟いて暗い墓場の周りを歩きだした。
まだ少しあしもとがおぼつかなく、フラフラしていたが、しばらく歩くと感覚も戻ってきた。
広い墓場の周りをウロウロしたが、なかなかジェミニの場所が分からない。
「……ああ、あった!」
ようやくジェミニの名前のある墓を見つけた。しかしジェミニの墓からは誰も出てきた様子はない。
「ジェミニ…この中だろ?」
ツインはジェミニの墓の土を手で掘り出した。しばらく掘ると、棺桶が現れ、その棺桶がガタガタ揺れた。
ツインは急いで棺桶の蓋を開ける。
「あー、思ったより蓋重くて、開けれなかったよー。死ぬかと思った」
中から、冗談にもならないような事を言いながらジェミニが現れた。
「体鍛えてなかったからだぞ」
「そうだね。これからはいっぱい鍛えなきゃ。………おはようツイン」
「ああ、おはようジェミニ」
そうツインが答えた瞬間、ジェミニはツインに抱きついた。
「良かった…成功だ」
「すげぇ…すげぇなジェミニ」
ツインも抱きついてきたジェミニの背中をさすった。
―――
ツインの方は実は何が何でこうしてうまく結界の外に出られたのかよくわかっていないのだ。
さて、あの二人で最後に過ごした夜にさかのぼろう。
あの日、ツインは「死にたい」と口にした。それは本心だった。
ツインの言葉を聞くと、ジェミニはツインの耳元で早口で行った。
「二人で逃げるよ。安心して。朝になる前に起きて家に帰るんだ。その後の事は指示書がある。僕を、信じれるよね」
信じれるよね、その言葉を耳にした瞬間、ツインは催眠にでもかかったようにフッと意識を失った。ジェミニが魔法で眠らせたのだ。
その後、ふと目を覚ましたのは日が出る前だった。
信じれるよね。ああ、信じてやる。
さっきは酷いことをされた。でも信じてやる。
ツインは言われたとおり急いで家に帰った。
家に戻ると、テーブルの上にやけに目立つ手紙と細長い小瓶が置かれていた。小瓶の中身は真っ黒な液体だ。
手紙を広げた。これが指示書のようだ。
『この薬を一気に飲んで。仮死状態にする薬です』
仮死?仮死って大丈夫なのか?てか指示書って言う割には飲めとしか書いていない。その後どうすれば?
ツインが指示書を裏返したり擦ったりしているうちに、指示書は細い煙になって消えてしまった。
そうしているうちに、ツインの母親が起きて来るような音が聞こえてきた。
考えている暇はない。ツインは瓶の中身を一気に飲み干した。
「…オォエェ」
苦しい!嗚咽が止まらない。
ツインの嗚咽の音に、母親が慌てて走ってくる音が聞こえてくる。
「ツイン!!」
母親が苦しくて倒れたツインを抱えおこす。
「辛いの?辛いのね?あああ!」
母親の悲痛な声を聞きながら、ツインは意識を失った。
――――
―――
ジェミニの計画はかなり前から始まっていた。
決定される1年以上前からすでに、消されるのは自分だと分かっていた。
なぜなら「ツインが死んだら自分も死ぬ」とわざといろんな人に吹聴して、回っていたからだ。もちろん、それは本心だったが、そうする事で、ツインを消してしまったらジェミニが自殺してこの世代の男子がいなくなってしまう、と思わせたかったのだ。
案の定、消されるのはジェミニに決定した。
ジェミニはすでに調べてあった。
結界の外に墓場があり、男子ももれなくその墓場に入っていたので、少なくとも死ねば結界から出られると言うこと。
ツインの昆虫採集、標本づくりの傍ら実験をし、結界を出ることのできない雄の昆虫が、仮死状態なら結界を出ることができること。
虫と人間が同じかどうかはわからない。でもこのまま黙って消されるくらいなら、チャレンジしてみようと…!!!
課題はいくつもあった。自分は自殺願望を示していたのでいつでも自ら仮死状態になれる。しかしツインは、いつだって死を恐れていた。消されるかもしれない事を気にしていない、という素振りを見せながらも、いつでも気にしているのは誰の目にも明らかだった。
そんな彼が急に死のうものなら、病死か殺人が疑われ、解剖されたり調べられたりするかもしれない。なんとか、キレイな体のまま棺桶に入り、墓場まで運んでもらわなければならないのだ。
ツイン自ら自殺願望を口にし、それを誰かに聞かせなくてはならない。
ジェミニは考えた。
考えて、考えて、計画を立てたのだ。
――――
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