第41羽♡ 義兄でも義妹でもない
「さてどうしてくれようか?」
「ひぃいいいいい~~お助けぇえええ!」
昨晩のこと、リナの部屋で勉強したあとそのままふたりとも寝てしまい、
起きたら突然、猛獣よりも
しかも伝説の暗殺拳の使い手?
赤城さくらから伝授されたと云う締め技『赤城ロック』をかけられ俺は動くこともできない。
もう少し普段から鍛えたほうが良さそうだな。
でもあまり筋肉をつけると体のラインが崩れてアルバイトに支障がでる。
今の体系を維持しつつ筋力だけをつける
「わたしがこの後やることその一! 兄ちゃんと既成事実を作り、半ば強引に"霞と莉菜禁じられた兄妹愛ルート"に突入する。もちろん良い子のお友達には見せられない内容が盛り沢山」
「どう考えてもダメだろそれ~!」
「うむ……わたしもやっぱり無理やりはないな~と思うので却下。
では仕切り直して、この後やることその二! 首元とか服の隙間から見えるところにしゅきしゅきキスマークを沢山付けて今日会う凛ちゃんに嫌われるように仕向ける」
「それもダメだろ~! 前園がどう思うかわからないけど、絶対にいい気持ちしない」
「ですな……わたしも凛ちゃんにキスマークを見せつけることで兄ちゃん独占欲を満たしたいわけではないしね。
それに凜ちゃん相手には必要はないかな、今のところは敵じゃないし」
「……ん?」
「何でもない、この後やることその三! 一や二ほどやり過ぎじゃないスマートな方法、これが本命かな」
「何をする気だ?」
「ん……こうするんだよ」
リナはクスリと笑うと俺に顔を近づけると俺の頬に唇が少しだけ触れさせた。
すぐに唇を離すとがっちり抑えられてた俺の体をそのまま解放した。
「どう、びっくりした?」
「おっおう」
「嬉しい?」
「まぁ……どちらかと言えばそうだな」
「兄ちゃんに初めてチュウした」
「言われてみればそうだな」
「なんかね……すごくドキドキして気持ちが溢れてくる」
「そうか」
照れくさいのか顔を背け、耳が真っ赤になっている。
普段大人びたことを言ってるのに小学生でも「大したことじゃないよ」
って言いそうな幼いキスをしただけのあっけない幕切れ。
それなのに胸がこれでもかと締め付けられる。
宮姫とのキスはもっと刺激的だけど……。
リナのキスはそれとはまた違う。
唇が触れた頬が熱い。
恥ずかしいのか小さな指で唇を隠そうとする。
指の間から見えるそれは柔らかで艶っぽい。
あれがさっき俺に触れた?
大変なことをしてしまった気がする。
したのではなく、されたのだけど。
……すごく気まずいし、落ち着かない。
できることならこの場から逃げたい。
でもリナの真剣な瞳がそれを許さない。
「笑わないで聞いてほしいことがあるの……わたしね、ずっと」
――駄目だよリナ。
「ごめん、俺朝ごはんの準備してくる。よくよく時計を見たらまだ時間あるな。
後で起こすからもうひと眠りしてていいよ」
リナの言葉を
いつものように頭を撫でながら諭すように告げる。
「あっ……うん、でもわたしはちょっとシャワー浴びたい気分なのだ。
お風呂に行ってくる。
「わかった覗かない。じゃあ、また後で」
「うん……」
箪笥とクローゼットから大雑把に着替えを出すと俺を部屋に残し、お風呂に走っていった。
……いつもと逆のことを言ってる。
普段はお風呂覗かないの?とか、着替えるところ見る?とか、一緒に寝る?とか。
でも今は本当に見るなってこと。
見てはいけない。
その後は、お風呂から上がったリナと朝食をとり、いつもの通り過ごしたと思う。
でもリナはずっと心ここにあらずって感じで話しかけても聞き逃したり、とんちんかんな答えが返ってきたりで、ずっとおかしいままだった。
……多分俺もだけど。
よくよく見るとクリっとした大きな瞳が赤く腫れている。
子供の頃と同じように。
今はよく喋るようになったけど、昔は自分の気持ちを言葉にするのが下手で。
体が小さいから体育の時間に、周りについていけないのが悔しくてよく泣いてて。
俺はそんな妹のことを良く知っていたはずなのに、いつの間にかすっかり忘れていた。
今更声を出して謝ることもできない。
でも……ごめんリナ。
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