第13話 解消話と新たな恋
オリビアは留学前に婚約を解消された。
婚約者がオリビアとの婚約を続けていけないという理由により、相手側から提案されたのだ。
「君は僕に対して無理を言い過ぎる。君の望み通りの男になんて、僕はなれない」
顔も見たくないとまで言われてしまった。
オリビア自体は納得は出来なかったがその後婚約者のイリヤに会う事は出来ず、双方の親同士が話し合って、そのまま婚約は解消されてしまった。
オリビアは最後まで納得が行かず、受け入れる事も出来なかったのだが、家長同士が決めた事と強行されてしまう。
(何故? わたくしはただイリヤに頑張って欲しかっただけなのに)
そして後から聞いた話では、元婚約者はすでに次の婚約者が決まっているとの事。
相手は自分よりも色々な面で劣るとされる令嬢であった。
それを聞いて本当は浮気を正当化したくて、自分に難癖をつけたのではないかと勘繰ったが、会う事も話すことも叶わない為に真実はわからない。
父にもそうではないかと話をしたが、聞き入れてくれない。
尚更執着心が生まれたが、何も出来ることなく、気持ちばかりが沈んでしまう。
そうしているとオリビアは留学を進められた。
このままセラフィムに居てはイリヤを思い出して辛いのではないかと提案されたのだ。
(お父様はわたくしをこの国から追い出したいのかしら)
そんな疑心暗鬼に襲われたけれど、国王からの推薦状にて少しだけ気持ちが浮上する。
しかしまだ心が回復したわけではない。
忘れたいけれど、忘れられない。そんな落ち込んだ気分を紛らわそうと、留学先の屋敷から少し走ったところにある森に来たのだ。
青々しい木々や綺麗な花などの緑に癒やされながら考え事をしていたのだが、つい森の奥まで深入りしてしまう。
気付いた時には魔獣が側にいて、無我夢中で走った。
魔獣が気性荒く襲ってきてもう駄目かと思った時に、ファルクに助けられたのだ。
(何て素敵な方……)
自分の危機に颯爽と現れたヒーローを見て、これは運命だと思った。
婚約者を失い、落ち込んでいる自分の為に神様が引き合わせてくれたのだと。
それなのに彼は別な女性の名を呼ぶ。
自分よりも容姿も腕前も劣る女性、もしかしたら妹かもと思い、目溢しをした。
名も告げずに去っていく彼を見て、夢心地であった。
「あのようなかっこよくて強い方に側に居て欲しい」
身を挺して自分を守ってくれたのだから、きっと相手もオリビアを意識してくれているはず。
(次に会った時は絶対に名前を聞かないと。そしてどこの誰なのかを調べ、家格が合えばぜひ婚約の打診をしましょう)
翌日気を取り直して、新たな出発をしようと登園した際に、ファルクと再会した。
やはり運命の相手なのだとオリビアは確信する。
(こんな偶然あり得ないわ、やはり彼がわたくしの婚姻相手)
そう思ってすぐさま駆け寄って話をしたかったけれど、他の生徒に囲まれ、なかなかファルクの元へは行けなかった。
そうしてようやっと話す機会が得られたのだが、思いもかけない邪魔者に困惑する。
いや、考えてはいたが、思考に入れないようにしていたのだ。
(冴えない妹だと思っていたら婚約者だったなんて)
オリビアは衝撃を受けるが、皆に聞けば釣り合わない二人として有名だそうだ。
伯爵家と子爵家、護衛騎士候補と一介の薬師見習い、容姿も天と地ほどの差があると。
オリビアは王宮薬師としても有望視されている為、ラズリーよりもファルクに相応しくなる。家柄もオリビアは侯爵家、ファルクは伯爵家と釣り合いも取れる。
子爵家よりも侯爵家と繋がりがある方が、絶対にいいはずだ。自分の方がラズリーよりもいいのでは? と自然に思えた。
オリビアの方がラズリーよりも上なのだからきっと、ファルクも自分を好いてくれるだろう。
ファルクの両親も優秀な者が嫁に来てくれる方がいいと言ってくれるはずだ。そんな甘い期待を抱いた。
なのに現実は冷たい目線と口調。彼はオリビアではなくラズリーの方へと行ってしまう。
(きっと幼馴染だから切れないのね。ならばわたくしが余計な執着を断ち切ってあげるわ)
皆の前で言われ、きっと素直になれなかったのだろうと思い、ラズリーの事を調べ始める。
聞けば聞くほど特色のない令嬢で、婚約を結んだ理由も幼馴染だからという理由だ。
「幼馴染の婚約者なんて、どうせ解消されるわよ」
オリビアのように優秀でも解消されるのだ。それをラズリーのような普通の令嬢が維持出来てるなんておかしい。
それも将来王家に務める事が決まっているような男性など、どう考えてもラズリーでは力不足だ。
これは本人から身を引いてもらうのがいいだろう。
(どう考えても釣り合わない。それはわかっているはずなのに)
誰に言われようが身を引かないスタンスならば、冷静さをぜひ持ってもらおうと思う。
客観的に見ても二人の相性は良くない、オリビアが話をしてわかってもらった方が皆が幸せになるはずだ。
そう思って二人きりで話をしていたら、ファルクが心配で来てしまう。
それだけに止まらず、まさかアドガルム王国の第二王子にまで話を聞かれてしまうとは、想像していなかった。
剰え、母国での苦々しい思い出を暴露されるなんて。
(どうして? わたくしは悪くないのに)
苦々しい表情を隠すことも出来なくなってきた。
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