第24話 隆史さん殺害動機
それでは殺害された「博多玉露抹茶バウム」副社長の事件を追って行こう。
知立市の一号線辺りから、一台の車が執拗に副社長隆史の車にへばり付いて離れない様子が、防犯カメラに映し出されていたが、軽自動車のあの女性は岡崎市のモーテル「シャチ」で首なし死体で発見された木下満さんの、11歳年下の43歳の元妻だったが、『博多玉露抹茶バウム』副社長と同級生だったのは確かだが、家が近所で偶然にも方向が一緒だっただけで、家路を急いでいただけで、この事件には一切関係がなかった。
同じ高校の同級生で過去に付き合っていたと言うのも、はっきりしていない。だが、偶然にもマンションが近所なので同級生としての付き合いはあったらしい。
それでは「博多玉露抹茶バウム」副社長殺害の核心部分に迫って行こう。
この事件は流星の母が大きく関わって来る。
流星は母と2人暮らしで、やっと生活が落ち着いて来たと思っていたが、母はお嬢様育ちで苦労知らず。かといって実家に泣き付くにも経営していた旅館はバブル崩壊の煽りを受け、その後遺症を受けてとうとう2000年に倒産していた。
そして「博多玉露抹茶バウム」の副社長との一件が有り両親は離婚をしていた。母は当然「博多玉露抹茶バウム」の副社長隆史との結婚を切望していたが、隆史の両親が将来の事を考えて、母梨華との結婚をガンとして受け付けなかった。
その理由は今の隆史の後妻が優秀であることが挙げられる。それと後継ぎ問題もある。
「2人の息子がいるのに会社経営にも力を注いでくれ、その子供達を一流の高校にも進学させているこの嫁を捨てるなど以ての外!」
幾ら可愛い息子の頼みでも、相手の彼女が美しい梨華だと言っても、経営者の祖父母にすれば、お金に汚い男関係が跡を絶たない梨華に大反対だった。
一方の梨華は隆史が「どんな事をしてもお前を幸せにする!」と言ったので夫と別れたのに、その兆しさえ見えない。更にはそんなに愛する女の為なら生活面で援助するのが普通なのだが、社長の目が光って思うようにお金を融通することが出来ない。
こうして…母は、お金になりそうな男達に度々甘えてお金を工面していた。母が可哀想で見て居られなかった流星は、大親友勝君の父を亡き者にしようと思い立った。
その理由はこうだ。母は生活のため度々息子が学校に通っている時間帯に、男を連れ込んでお金を工面していた。それは当然息子可愛さもあるが、自分の為でもあるのだ。今までの生活をおいそれとは落とすことが出来ない。海外旅行もしたい。ブランド品も手に入れたい。
流星は母のそんな行為を知らないフリをしていたが、気付いていた。だがその男達は1~2度見る程度でいつの間にか姿を見なくなる。だが、勝君の父は別だ。もう5年近く母と付き合っていながら、只々母を弄びむしゃぼり尽くす無責任極まりないゲス野郎。
こうして復讐は始まった。
だが、実は…流星は凛音ちゃんと付き合い出していた。だから……幽香と小説研究サークルとかなんとか言って、首なし死体事件で奔走するフリをしていたが、世間の目を欺く為のものだった。
***
流星は凛音ちゃんの神秘的で謎めいた美しさに魅了され付け回していた。だが、凛音ちゃんは何人かのお客様と数時間を秘密の民家で過ごしたのちに、現れた時には必ずと言って良いほど、あの美しい少女では無く、美少年となって中年の男と親しげにそのお洒落な隠れ家から出て来た。それは男が変われば場所も違っていた。
そんなある日、いつものように凛音ちゃんの跡を付けていると、凛音ちゃんが気付き後ろを振り返った。
「あなた……一体誰?いつも私の跡を付け回して……言いなさいよ!どういうつもり?」
余りにも美しい美少女に顔が真っ赤になってしまった流星は、緊張しながらも話し出した。
「あっ!アッ!その……あの……ボッぼ……あの……僕は……あの……」
「もう鬱陶しいわね?ハッキリ言いなさいよ。私とお話ししたいって!」
こうして2人は近くのショッピングモ-ルのス○バで休憩を取り、抹茶ホワイトチョコとアポロ風フラぺチ-ノを頼み話し合った。こんな出会いから2人は相思相愛の関係になって行った。
2人は夢の世界に迷い込んだ王子様とお姫様。幸せ過ぎる夢のような時間は流れて行った。ロマンチックなムードになった2人はキスを交わし抱き合った。と言ってもABCのB止まり。
※ABCて何の事?:1980年代に流行った言葉で恋愛のABCは隠語の一種。A・B・Cそれぞれに意味があり、恋愛の進み具合をアルファベットで表現したもの。恋愛のABCは、恋人との経験をA・B・Cの3段階に分けて表現している。
「A」はキスのこと
「B」はペッティングのことでペッティングは愛撫のこと
「C」はセックスのこと
それと言うのも流星は凛音ちゃんを、ただの欲望の道具にしたく無い。それは凛音ちゃんは何よりも大切な存在になって行ったからだ。だが、そんな夢のような時間はある日を境にもろくも崩れ去る。
それは……ある日の事だ。気持ちが高ぶり遂に下の股間の部分に手が伸びた流星は、遂に凛音ちゃんの秘密を薄っすらとだが、感じ取ってしまった。青天の霹靂一気に愛は冷めてしまった流星だった。
だが、凛音ちゃんの方は違う、これだけハンサムな、イケメンな男子がそうそういる筈がない。今まで自分の性自認がゲイなので欲望を抑えられずに、勉強の傍ら抑えきれずにゲイなどそういる筈もなく、手ごろな流星の足元にも及ばない友樹で済ませる日々だったが、また「恋人代行サービス」で目ぼしいのが転がっていないかと「レンタル彼女」として働き出したが、そんなモテる男がお金を出してまで「レンタル彼女」を欲しがる筈がない。中年の崩れたハゲオヤジを相手にする毎日にうんざりしていた理生には、この流星はまさに星の王子様だった。
流星は、女の子凛音ちゃんが好きだったのに、女装の男の子だと気付き始めて一気に冷めてしまった。だが、凛音ちゃんの格好をした理生は流星に夢中で今更流星と別れる事などどうして出来ようか……。
「流星最近どうして会ってくれないの?あんなに凛音の事好きだって言ってくれてたのに……何か有ったの?」
「……イヤ……別に……」
「何よ!奥歯にものの挟まったような言い方……どうしたのよ?」
「……あの……もう塾有るから切っていい」
「私……あの……私……あの……何でもする。流星の為だったら……」
「……じゃ―今度の日曜日いつものス○バで午前10時に会おうね」
***
「やあ!久しぶりだね!」
「流星が会ってくれないんじゃないの。意地悪……」
「いちごみるく飲んだらモ-ル見物しようヨ!」
「いいね!いいね!」
こうしてス○バを出て歩き出した2人。
「俺さ~凛音ちゃんに頼みがあるんだ!」こうして事件は起こる。
豊明市の廃墟から首なし死体で発見されたのは「博多玉露抹茶バウム」の副社長隆史だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます