第21話 徐々に見えてくる真実

 

 

 最近母から「菊乃屋」の饅頭に針が入っていた事件を聞かされた流星だったが、あの事件は母と勝君の父の、汚らわしい行為の数々を知っていた2人流星と勝君の仕業だったのだが、あの事件は2人の親を思い知らせてやろうという思いから考えた2人の行為だった。


 だが、思い知らせてやろうと思ったのに思い知らせるどころか、事件にもならずにうやむやに解決した。それは店の店長2人が話し合い両方の社長に事実を話していたからだった。


 あの時、中学2年生のちびっ子跡継ぎに、脅され一度はひるんだ2人の店長だったが、あの後2人の店長は携帯電話で連絡を取り合って話し合った。


 『トゥルルルル』『トゥルルルル』


「アッ!『博多玉露抹茶バウム』の店長さんですか、今お坊ちゃまが……お坊ちゃまが……やって来て怪しい行動をしていたので心配になりまして……どうも……近くのホテルに泊まっているらしく、突然現れて『店長僕が誰だか分かっている。チョット『博多玉露抹茶バウム』の勝君が、後継ぎだから勉強の為にうちの店のお菓子試食したいと言っているから、裏の事務所に行っててくれない?な—んだよその顔は……文句ある。ハン!僕はこの会社の跡継ぎだ。分かった?変な事、親に告げ口したら許さないから!』そう言って裏の事務所に追いやられたのですが、いつものお坊ちゃまらしくない口調と鋭い目付きに、これは大変!何か有っては困ると思い、こっそりガラス戸から2人の行動を見ていたのです。すると何か……?大切な商品の饅頭に入れていたのです。どうしましょうか?」


「アッ!僕の店も一緒です。坊ちゃまと流星君に脅され事務所に追いやられました。って事はうちのバウムクーヘンにも、何か仕込まれた可能性が有りますね?」


「これは大変です。今日び大変な事件が跡を立ちませんから……どうしますか?」


「やはり……社長に……」


「そうですね。やはり社長に全てを話しましょう」


 こうして…両方の両親に話は伝わった。そして…息子たちはこっぴどくお仕置きをされた。それでは母は何故今更そんな話をぶり返したのか?


 実は…母が今更ながらに針混入事件をぶり返したのには訳があった。


 丁度あの日「菊乃屋」の銀座アンテナショップの店長が地元に帰って和菓子店をオープンさせていた。そして…あの時正直に話してくれたお礼と言っては何だが、このように何かにつけて正直な裏表のない人間性と、あの男は実は…名古屋本店の製造部門に勤務していた男だったのだが、15年以上勤務したのち、腕を見込まれてのれん分けをしてやっていた。


 あの時は確かにアンテナショップは代わりのアルバイト店員が引き継いだが、あの時は夏休みだった事も有り、夏に人気のゼリーの新製品が発売された事も有って説明も兼ねて、銀座のアンテナショップに1週間ほど勤務していたのだった。そして夏休みが終わったのと同時に、本来の名古屋本店に戻り修行に励んでいた。だから首にはなって居なかった。


   ***


 それではいよいよこの事件の核心部分に触れて行かなければならない。


 銀さんと田淵両刑事は防犯カメラに映し出された知立から「博多玉露抹茶バウム」副社長の跡を執拗に付け狙う一台の軽自動車に着手した。

  

「オイ!あの軽自動車アルトラパンの持ち主は分かったか?」 


「アッ!ハイあの女性は岡崎市のモーテルシャチで首なし死体で発見された木下満さんの11歳年下の43歳の元妻だという事が分かりました。そして『博多玉露抹茶バウム』副社長とどうも……同級生らしいです」


「これまた話がこじれて来たな—?だって……木下満さんはゲイだった筈だろう?」


「どうも……同じ高校の同級生だったらしいです。そして過去に付き合っていたらしいですね」


「って事は……その女も福岡市出身という事か?その女『博多玉露抹茶バウム』副社長隆史さんとの間に、どんなもめごとがあったのか?益々分らなくなってきた」


     

     ***

 

 一方の流星と幽香たちも首なし死体事件を懸命になって追っている。


 どうも……大親友の勝君は、父で「博多玉露抹茶バウム」副社長が首なし死体で豊明市の廃墟から発見された事によって、何らかの形でこの事件に関わっているかも知れない。だから……この事件に興味津々ではあるが、もし全て白日の下に晒された場合勝君が、事件に関わっていたらと思うと不安に思う流星だった。


 大の仲良し勝君はひょっとしたら事件に関与しているかも知れない。その理由は「友達以上💛💛💛LOVE。付き合いたい」などとメッセージを送って恋愛感情を告白してきたⅩ君の存在がある。余りのⅩ君のあからさまな態度に、とうとう同級生の謙太君からとんでもない誤解をされた。


「ハッハッハ!お前等ゲイかよ!」


 こんな勘違いをされた勝君は、Ⅹと距離を置くようになって行った。そのⅩとは学校でも幅を利かせているボス的存在。強く出る事も出来ず、受け入れる事も出来ず、やがてⅩの復讐が怖いので、2人の事情を知らない他の同級の友人とも距離を置くようになり、精神的に不安定になり夜眠れなくなっていった勝君。


 それでも…ちょっかいを出してくるⅩに、勝君は同級生である友人たちが見ているLINEグループに、「Ⅹ君がゲイであることを隠しておくのもうムリだ。ごめん」と投稿し、Ⅹが同性愛者であることを第三者に暴露した。このLINEには同級生10名ほどが参加していたとされ、結果的に既に知っていた3人を除く、7人に対してAが同性愛者であることが暴露されてしまった。


 だが、ある日の事だボス的存在のⅩが皆に手招きで集まりの合図を送った。いつもだったらボスのⅩが怖いので一斉に集まって来るのだが、何か……ひそひそ話をして寄ってこない。


「オイ!皆どうしたんだい?」


 隠し事が有るらしく、浮かない表情のクラスメイト達。


「お前等いい加減にしろ!一体何の真似だよ。言って見ろ!」


 するといつもの仲間の1人が、意味有り気な表情で近づいて来て、ひそひそ話で耳打ちした。


「あのね!皆に聞かれたら不味いので小さい声で話すけど、アッ!やはりここじゃ不味いので、サッカー部の部活の時話すから……その時に……」


 こうして授業が終わりサッカー部に向かったⅩだったが、するとさっきの友達が、校舎の木の陰にⅩを引っ張って行き話し出した。


「実はね!……こんな事……こんな事……言いたくないけどⅩが気の毒で見て居られなくてねぇ。実は…勝君がLINEで君の事ゲイだって暴露しちゃったんだよ。だから皆警戒して避けているんだよ」


「勝なんてこと・・・なんてこと・・・言うんだよ‼許せネ—!」


 こんな事件が有って間もなく勝君の父Tさんは、首なし死体で豊明市の廃墟から変わり果てた姿で発見された。やはり未だLGBTに対して偏見が有り受け入れられない為、隠していたのに暴露された腹いせに復讐心で、勝君の父親Tさんは殺害されたのかも知れない。




 それから……こんな仮説を立てて見るとする。

 もし仮にX君が理生だったらポ-ルの車を、朝陽が理生達から逃れるために林道まで乗り回してやって来たが、車が動かなくなり乗り捨てて森の中に逃げた。すると追い付いて来た理生たちが途中から乗り回して岡崎市W町の田んぼ道で乗り捨てたか、動かなくなったので乗り捨てたかした。


 そして……発見された廃車同然の車を乗り回していた理生達の車は、岡崎市の「モーテルシャチ」で首なし死体事件が起きた丁度あの夜あの「シャチ」に駐車されてあった。


 犯人は勝君のクラスメートなのか、それとも大人達の想像も付かない痴情怨恨の縺れから起きた事件なのか、それとも……金銭的な問題が絡んでの連続殺人事件なのか?







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