第44話 認めてくれる人々
ダンジョンから外に出ると、多くの人で賑わっていた。
主に軍人さんたちがいるけど、探索者に見える人たちも駆けつけてくれていた。
「英雄殿! 中はどうでしたか?」
軍人のリーダーさんが声をかけてきた。
「他の魔物はもういなくなりました。今でもドローンで中に取り残された人がいないか、探しています」
「分かりました……! 引き続きよろしくお願いします」
軍人さんたちが離れていくと、大勢の探索者たちが俺たちを囲った。
「英雄殿! さすがだ!」
「俺の友達を助けてくれてありがとう!」
「誰よりも先に駆け付けてくれてありがとう!」
みんな笑顔で感謝を言ってくれる。
あまりにも意外すぎる反応に驚いた。
「先日のマスコミの詐欺記事は大変だったな。英雄殿がそういう人物じゃないって俺達は知っているからさ!」
「そうそう! それよりあの爆炎娘に巻き込まれた方でしょう!」
みんな困った表情でうんうんと頷いた。
美紅…………どれだけ多くの探索者に勝負を仕掛けたんだ……。
「俺達にできることがあったらいつでも声かけてくれよな!」
波が引くように探索者たちが去っていった。
ポカーンとしている俺の腕に温もりが伝わってくる。
レナと咲が両腕にくっつくくらいの距離で笑顔を浮かべて俺を見上げていた。
「よかったね!」
「あ、ああ。ちょっとびっくりした」
「悪意を持つ人もいるけど、そうじゃない人もたくさんいるからね」
「善意は伝わるんだよ~」
二人がそう言ってくれて嬉しく思う。もちろん、多くの人に認められるのは嬉しいけど、近くにいる仲間たちから認められるのが一番嬉しく思う。
リサからの報告を待ちながら、用意されたテントの中で紅茶を楽しむ。
疲れた体に香ばしさが染み渡っていく。
「ユウマくん。
レナだけじゃなく冬ちゃんも咲も俺を見つめる。
「それが……たぶんそうだと思う」
「たぶん?」
「急に使えるようになったというか、勝手に発動したというか……どうやったら発動できるかも分からないんだ」
「ん…………レベルアップで獲得したスキルとか?」
「いや、そんなことはないと思う。金属スライムを倒したときでも聞いたことなかったから」
「そっか……」
スキルなしでスキルを使うことはできない。
さらにもう一つ大事なことがあって、自分がどんなスキルを
「ということは、先輩が使った力は――――元々持っていたことになりますね」
「そう……なるよな……」
「意外と先輩も【ギフター】だったんですね」
そう。成人前に力を得たということは、【ギフター】である。でも力を獲得した時には気付かなかった。
「ん~寝てる時に開花してしまって、天の声を聞けなかったとかですかね~」
「そういうこともあるのか?」
「実証はされていませんけど、海外ではそういう事例だってあるんじゃないかって言われてます。ただ、今まで獲得したことない力を使った事例はないです。たぶん世界で先輩が初じゃないですかね~」
「は、初……」
「瘴気の件もいい、先輩って本当に…………」
「うっ……な、なんかごめん……」
冬ちゃんがジト目で俺を見つめる。
その時、ドローンから音声が流れる。
「はいはい~ダンジョンの中で人影はいっさい見つからなかったよ。それとやっぱり魔物もなくなった。そこで一つ事実が発覚したの」
「事実?」
「戦いの前と後でダンジョン内の瘴気の濃度が――――薄くなったよ」
「なるほどな…………となると、あの魔物は瘴気が具現化したことになるんだな?」
「そういうことでよさそう」
「冬ちゃん。通常ダンジョンで魔物が現れるロジックもまだ判明してなかったよな?」
「ですね。瘴気から生まれるんじゃないかって言われてるだけですね。瘴気の影響を濃く受けた魔物から魔石が落ちるとも」
「もしそれが本当なら――――ここ一帯の瘴気が濃くなった……? でも魔石のドロップ率が上がってからも瘴気の濃さは変わってないよね?」
「変わってませんね。三時間くらい探索しても気持ち悪くなりませんでしたから」
となると……謎が深まるばかりだ。瘴気。魔物。魔石。ダンジョン。俺のスキルと思われる力。
色々解決したい問題がたくさんあるけど、いまはまず探索者たちを救えたことに安堵しながら、次の行動まで休息をとる。
アウラも魔法を多く使ったからか疲れて眠っている。
幸せそうに眠っている顔を見ているだけで、俺も眠くなってきた。
「珍しく眠そうだね?」
「そう……だな……」
「もしかしてあの力の反動かも? 強い力は反動も大きいし、初めて使ったからかも。ゆっくり休もう?」
「あ、ああ……そうさせてもらうよ……何かあったら起こしてくれ」
「うん!」
テント内の簡易布団に横たわるとすぐに眠りについた。
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