メリーさんの羊

 薬草をすり潰し、

 馬乳酒に溶かしたものを、

 飲み干した後に、

 父は言う。

「私はもうすぐ、

 草原を駆ける風になるだろう。

 ただ思い残すことは、

 お前のことだ。

 愛しい娘よ、

 女は羊を持てない。

 蒼き狼がそれを許さない。

 誰か、良い男はいないものか」

「娘は答える。

 あら、大丈夫よお父様、

 私、プロポーズされたの。

 今、外にいるの、紹介するわ」

 ベー、ベー。

 父の持つ羊の群れで、

 一番大きく、まだ、

 去勢されていない羊。

「彼が、私たちの羊を、

 全て所有することになるの、

 そして、

 私は彼の妻」

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