第56話 これからの目標

 ひな、プリーム、ネスイの三人で色んなマッチの振り返りをしていた。

 ただ、ひなが下ネタを吐きかけたあたりで帰ってもらった。


 『やばかったね』

 

 ーえぐいわあ

 ーひなワールドえぐすぎ

 ーまじそれ

 ーでも面白い

 ーあれで登録者200万人居るからなあ


 「え?登録者200万も居るのか………」


 流石に驚きだ。


 「まあいいや。次何しようか」


 『最終マッチの最後の戦い解説しますかあ』


 「しますかあ」


 氷vsネスイという戦闘は色々の方が切り抜いてくれた。

 とりあえず一つ動画を調べて持ってくる。


 「さて、……これか」


 最終マッチの最終試合。

 なんと氷さんの視点もあるということで、

 ちょっと気になる。

 

 『これ見たけどやばかったね…』


 ーなんかさ。プリームってこんなんだっけ

 ー確かに

 ーなんかキャラ違うw

 ーまあ良いけどさ

 ー違和感すごい


 『あ、、さて、皆も見ちゃいますか!』


 ー何か違う

 ーんー

 ー違和感

 ーこれはこれでよし

 ーそれ


 「まあいいや。見るぞ」


 なんとなく入らない方がいいかと思って、無視する。


 


 【HESKAL杯最強の戦い】


 右側で氷さん、もう半分が俺の画面だ。

 氷さんはこの時点で10キルしていた。


 武器はアサルトライフルとサブマシンガンだ。


 「氷さんこっち側居たのか」


 俺が居た場所とは反対側の山の麓だった。

 

 『あ、ネスイは山上がったのか』


 「うわ。映ってる」


 氷さんの画面で俺が山のところに移動しているのが映っていた。


 『あ、居る』


 氷さんはそう呟いて、空襲爆弾を俺の方に投げた。

 そしてそれは綺麗な楕円軌道を描き、見ごと俺に命中した。


 そして畳みかけるように、グレネードを定期的に投げる。


 『これは辛いなあ』


 「本当にここきつい」


 そして、俺は崖下に下がり、氷さんはもう山の上に居た。



 このタイミングですれ違ったから俺は気が付かなかったのか。


 「ここでGPS特定機思い出したんだよね」


 これが転機となり、俺は居場所を知る。

 そしてここから逆転劇が始まったのだ。


 まず俺は注意を引くためにグレネードを別方向に投げた。

 氷さんは『え?何!』と注意を引けていただろう。

 

 そしてその間に俺は山上にグレネードを投げる。


 『うわ!』


 氷さんも流石に並大抵の実力ではなく、グレネードを食らっていなかった。


 「ここ当たってなかったのか」


 そして相手は少し下がり、その間に俺はグラップラーで上る。


 

 ここからが頂上決戦だ。



 まず俺は煙幕を投げて、姿を見えなくする。

 これは思惑通りにヒットし、氷さんは交戦しにくそうだ。

 そしてそのタイミングを狙って、サブマシンガンを撃ちまくる。

 

 『やばい!当たれええ』


 氷さんはやはり銃声を頼りにアサルトライフルを撃つ。

 結果的に当たらなかったが、撃った場所は俺が居る所なので、結構上手い。


 「そうそう。煙幕がすぐ引くから俺はすぐ下がったんだよね」


 結構氷さんのHPを削っていた。


 俺が下がったのを確認してすぐさま回復をする。

 だが、そこには煙幕が唐突に投げられる。

 そしてグレネード。


 これが勝負の決め手だった。


 

 と以上がこの切り抜き動画だった。


 だが相手は死ぬ直前、一つ仕掛けていた。

 それはもし敵が来ても大丈夫なように、周辺にトラップを引いていた。

 

 グレネードが当たらず、敵が攻めてきたときの策だろう。

 

 「グレネード当たってくれて良かった」



 『こわ』


 ープリーム引いてんじゃねえか

 ーそりゃ引くわ

 ーグレネードの精度すげえわ

 ー煙幕も上手い

 ーエイムもえぐいし

 ーあれ、完璧?

 ー氷さんもすごいよな

 ー諦めないって大切だな



 「まじで運良かった。煙幕持っててよかったわ」


 『煙幕ってめっちゃ弱いのに』


 「え、そうなの?」


 『時間が3秒しかないし、かさばるし、自分も煙幕だし』


 「確かに時間短かったな」


 時間が切れると少しずつ靄が消えていく。

 無意識に下がったが、確かに短かった。


 『でもこの戦闘でtierSになってたよ』

 

 ー草

 ーネスイがひっくり返してんじゃん

 ーtier最強じゃん

 ーもともとどこ?

 ー最底辺

 ー上がりすぎwww


 「まあ、いっか。」


 頭脳的な戦いが出来たし、氷さんから学べる事も多かった。


 『よくねえよ!』


 「あはは」


 ーあははじゃねえよ

 ーのんきだなあ

 ーネスイって感じ

 ーてかこれ100万人配信なの忘れてた。

 ーこれからの目標とかは?


 「これからの目標かあ」


 そういや、HESKAL杯も終わったしまた一つ目標作らないとな。

 たが、最近ゲーム三昧すぎて別の事したい。


 『雑談上手くなっちゃえ』


 ーあり

 ーそれだな

 ー確かに

 ー口数少ないもんな

 ーもっと喋っていい。


 「雑談上手くなるためには、これからも配信頑張るかあ」


 blancの時は特に何も言われなかった。

 というのもゲーム配信だから許された。

 だが、VTuberになると雑談スキルも必要だ。


 100万人になったらなおさらだ。


 「コラボとか頑張らないとなあ」


 ー1期生…

 ーあっ

 ーそんなこと言えば来るぞ

 ーんなわけ

 ーあったんだよなあそれが


 『コラボならネスイには期待が集まってるし皆来るよ』


 「そっかあ。1期生は少ないけど他は多いもんな」


 HESKALは1期生が5人しかいない。

 だが、2期生、3期生となると桁数が変わってくる。

 調べた感じ10人は超えていた。



 「まあ、これからもっと頑張るってことで!」


 『オフコラボと3D配信かな?やっぱ目標は』


 ーオフコラボかあ

 ーもうしそう

 ー3Dは時間の問題だな

 ー案件とか

 ーゲーム系めっちゃ来そう

 ー氷と一緒にやってほしい。


 「オフコラボかあ」


 『するなら私からで!!!』


 ー自信満々だなあ

 ー惚れてる?

 ーある

 ーなんで最初が異性同士なんだよ

 ーどっちも高1じゃん

 ーじゃあ行けなくはないか


 「お、おう」


 プリームからの無言の圧をかけられつつも、この配信は無事終わった。



  なんとかこれでHESKAL杯は締めくくれそうだ。

  まだVTuberを始めて2か月経ってないんじゃないかと思う。

  順調ではあるが、人気になればなるほど技術っていうのが必要になっていく。

 最低でも夜音は進行とか盛り上げ方がすごい。


 「どうしよっか…」


 オフコラボとかはまだ早いんじゃないかって思う。

 やっぱりVTuberの一つの醍醐味をもうやっていいのか。


 雑談技術もない今、コラボ相手に頼ってしまう。

 なら、やはり最初は頼れる人にしたい。



 (結局夜音か)



 結局2期生で、登録者も300万人を超えている彼女に頼るのが一番かもしれない。



 「おーい。海斗~」


 どうやら彼女はもうすでに家に来ていたようで、俺は部屋を出る。



 「お疲れ…」


 「お疲れ様~」


 彼女はリビングのソファにもたれかかっていた。

 俺はキッチンでコーヒーでも入れようかと思っていたところだ。


 「どう?VTuber。なってよかった?」


 「まあ…」


 「そう。ならよかった!」


 夜音は俺の返答に満足したのかスマホを触る。


 「一つ頼りたいことがあるんだ」


 コーヒーをいれ隣に座る。


 「んー?」


 

 


 「オフコラボ…やっぱりしたい」

 




 俺の波乱のVTuber生活はまだまだ始まったばかりだ。





 

 

 

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