第32話 どうにかなってくれた

 配信はそろそろ10:30を迎える。

 最後にもえの見せ場も作ったので、まあこんな感じだろうと思う。

 

 『ではそろそろ終わりましょうか』

 

 前半ではとぎれとぎれだった口調も今は、滑らかだ。

 趣味の効果って絶大なのかと感じた。


 「ですね。ではもえさん、そして俺のチャンネル登録 高評価お願いします」


 『お願いね。ではでは』


 「おつねす~」


 ーおつねす~ 

 ー神回

 ーあんなに心開いたの久々

 ー神だわ

 ーすげえ



 俺は配信を切った。

 もえが配信を切ったのを確認するまでは一応喋らない。

 

 待っている間配信を振り返っていた。

 よく考えたら、新しく来た新参VTuberが1期生や2期生相手に仕切っていいのだろうか。

 マネージャーや、まだあったことはないがHESKALの社長さんなどになんかそろそろ言われそうだ。

 ただ怖いぐらいに指摘がない。

 

 なんでなんだと思っていたら、もえがやってきた。


 『お疲れ様です』


 「配信お疲れ様です。口調戻りましたね」


 『え?あ、何年ぶりだろ…』


 そんな頻度で口調が戻っていた。

 そんなことに俺は驚きを隠すので必死だ。


 「ま、まあ。これからもよろしくお願いします」


 『そんなかしこまらなくても…、よ、よろしくね』


 やっぱりもねがどういう人なのかはよくわからないが、

 VTuber界隈っていう感じがしてそれはそれで楽しかった。


 彼女とも通話を切った俺はリビングに戻る。

 珍しく夜音は居なかった。

 彼女はおそらく家に帰ったのだろう。


 とりあえずソファに寝転がりながら、マネージャーに大体の報告をする。

 

 【来月には30万人耐久配信してみませんか。】

 というメールが届いた。


 今回の配信もあって登録者はどんどん伸びた。

 今となっては20万人を超えた。

 そろそろ30万人も手が届きそうだ。


 【考えます】

 とメールを送り、今回の配信の評判をうかがう。


 だが、まあ質問コーナーというよりかは後半で急遽行った音ゲーに対しての

 評価が大きかった。

 まあ大量の質問を答えていたので、そこに関して触れるのが難しかったのはあるだろう。


 そう考えつつ、久々にクランの皆に会いたいなと急に思った。

 夜音が今日家には居ないので、ちょうどいいかと思い

 部屋で通話をつなげに行く。

 金曜日はそこまで皆予定が詰まっていなかったので3人とも居た。


 「お久しぶり」


 『!?』


 最初に反応したのはwartだった。

 急に入ったから仕方ない。


 『お久しぶりですね』


 endmからも声が届く。

 ただlucusはマイクオフで何も聞こえない。


 『彼は家事をしてるみたいですよ』


 ちょっと意外ではあった。

 だが一人暮らしとも聞いていたのでそんなこともあるだろう。


 『久しぶりだね!blanc』


 やはりいつになってもwartは元気だ。

 そんな雰囲気に包まれた白い流星が結構好きだ。


 『あ、そういえば一つ聞きたいことがありまして』


 endmもなんだが少し気分が上がっているように見えた。


 『夏休みにオフでみんなで遊びに行こうって話が出てるんですけど』


 「え?」


 思っていた質問と結構違うかった。

 正直いつものように大会出る?みたいな質問かと思っていた。


 『そうそう。blancが来るならみんなで行きたいな!ってね』


 つまり他はもう参加することを決めてるらしい。


 「ん~」


 行けるかといわれると微妙なラインだ。

 なぜなら俺たちがオフであったことはまだ一度もない。

 大会とか出てもオンラインのみだった。

 というよりこのクランでやってるゲームがオフラインでやる大会などなかった。


 そこまでひどくはないが俺は人見知りだ。

 顔を合わせて話すのが少し苦手ではある。


 『行きませんか?』


 ただendm達の期待は裏切りたくなかった。


 「行ってみるか」


 計画とかはまだ先の話だろうが、ちょっと考えてみてもいいかもしれない。

 wartは画面の奥で大はしゃぎだ。

 オフで会うとなると顔が分かってしまう。

 そう思うと少しドキドキする。


 「でも全員住んでるとこ違うけどどうするの?」


 全員関東とかならまだいいが、

 lucusは関西

 俺とendmは関東

 wartは北海道らしい 

 

 結構ばらけている。

 だからこそオフでは会わなかったのかもしれない。

  

 『そこらへんはまた話し合っときます。』


 endmは案外計画力が高い。

 wartが邪魔しなければの話だが


 「そういや、そろそろ新しいメンバー入れてみたいな」


 enjoyクランとなった今ならもっとメンバーを入れてもいいかもしれない。

 たぶん付き合い自体はそんなに長くないかもしれないが、多い方がにぎやかで良い。


 『確かにね~』


 『それはまた難しいお話ですね』


 メンバー募集となると面接などをしなくてはならない。

 どこまでを採用条件にするかも難しい。


 「まあ、いずれ考えるか」


 『そうだね~』


 すると、家のドアが開いた。

 おそらく夜音が戻ってきた。


 「じゃ、また来るわ」


 そう言って通話から抜けた。

 どうしたんだろと思い、部屋から出ると、

 彼女はゲーム機を持っていた。


 「どしたの」


 俺は流石に謎過ぎて聞くしかなかった。

 すると彼女は張り切ったかの様子で

 

 「今度のHESKAL杯の練習よ」


 どうやらまた面白そうなのがあるらしい。


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