第23話 幼馴染と配信①


「ざっとこんな感じか」


夜音と打ち合わせを終えた。

まあ、前々から少しずつ話してはいたので、時間がかかったわけでもなかった。


「そうだね。機材トラブルだけはないようにね?」


VTuberはやはり顔ばれは避けるべきことだろう。

俺はいいとして夜音は女子なので、危ないことに巻き込まれそうだ。

だが、まあ長年彼女もやってきてるだろうし大丈夫だと信じたい。


打ち合わせも終わって、俺が夜ご飯の支度をしていた。


「そういや、登録者めっちゃ増えてたね。」


まだ二回しか配信していないのに登録者は1万人を超えた。

HESKALの異例の4.5期生とはいえここまですぐ伸びるのは珍しい。


「春陽さんの影響なんだろうなぁ」


春陽さんも登録者は50万人を超えていて、

そのうちゲームがうまいということで見ている人も多い。

そんな中であんなプレイをしたので、まあそうなるだろう。


「私も頑張らなくちゃ!」


天然なのか天然じゃないのかわからない彼女も一応300万人以上の登録者をもつ化け物だ。

これは登録者がやばそうだなぁと思いつつ、ご飯を盛りつけた



――――――――――――――――――――

いよいよ本番だ。

常に隣で寝ていた彼女とはわけが違う。


「そっちは大丈夫か?」


『用意できたよ~』


彼女の確認を取れたところで、配信ボタンを押した。


「聞こえてますかぁ」


夜音の方も配信ボタンを押したようだ。

相互の配信が始まったので、自己紹介から始める。



《3回目の配信はまさかのコラボでした←?》



「こんしろ~!HESKAL所属4.5期生の白海 ネスイです!

 そして今回もコラボとなっております!!」


このフリに合わせて、夜音も動く。


『はいどうも!HESKAL所属のプリームです!』


ー来た!

ー異例の三回目

ー誰が予想したんだ

ー神だわ

ーもうすでに面白い


「さて、今回はですね。【end world】をやっていきます!」


『いぇーーい』


ーあっw

ー黒歴史

ーネスイさんしたことあるんかな

ーずっと笑えるわ

ーテンションww


そう、このゲームは夜音が寝落ちしたときにやったゲームだ。

プリームの配信に男が入るという大問題でもあった。

あの騒動は弟ということでなんとかなったらしい。


正直雑談配信で良かったんだが、夜音はゲームを一緒にしたかったらしい。

オフでいくらでもやってやるよ


『私はやってるからうまいよ』


大会に出てるくらいだからそうだとは思った。

ただ、実際どのくらいうまいのかは知らないので少し楽しみだ。


「このゲームの説明お願いできますか?」


ちなみにこのゲームはあの時の一回しかやったことないので、いまいち分かってない。


『バトルモードが二種類あって、一つは広い世界で一位になる。

二つ目は決められた場所を陣取るモード』


ー雑すぎ

ー分からん

ーどういうこと

ー初心者戸惑う

ー語彙力皆無


説明が雑だなぁと感じて、補足した。


「今回やるのは陣取りゲームで、敵から陣地を守りながら一定時間居れば勝ちだね」


『そーゆーこと』


はぁ

まあそういう人だし仕方ないよね。


『では早速やっていくんですが、5vs5なのでとりあえずCPUと戦いましょう』


CPU戦といっても一人めちゃくちゃ強い人が入るので案外面白い。


「じゃあ、部屋番号伝えるんで来てください」


なんかグダグダ進んでる気がする。

まあ今回の枠は3時間なので、少しくらい長引いてもいいようにしている。


『あと3人はCPUで埋めますね』


参加型にするという案もあったんだが、視聴者が強すぎると活躍の場が減るので

そうなった。


始まるとショップが開かれる。

持ち金で武器や回復を買っていく。

一発勝負なのでここですべて使い切るのがいい。

ちなみにラウンドを増やしたら、もっと金の使い方を考えないといけない。


『私は回復する武器使うね』


彼女が言っているのは、味方に打つと回復する武器だ。

初心者向けではあるが、使い方を間違えると戦犯になる。


「じゃあ自分はこれにしようかな」


俺が選んだのはピストルだ。

一番単純で、打つスピードを連打で変えられるのが強みだと思っている。


『ではでは頑張っていきましょう!!』


ープリームさんのプレイすごそう

ーでもネスイさんも怖い

ーやばそう

ーCPUって基本変な動きするんだよなぁ



試合が始まった。

自分たちは攻める側だから待ち時間が少し長かった。


「あ、そこに居ますね」


始まってすぐ上の建物に居た。

守備側はなんとしても陣地がとられないようにしないといけない。


「おけです」


相手はCPUなのでそんなにエイムがいいわけではなくあっさり倒せる。


『最前線二人しかいない!!』


え?と思ったけどコンピュータの考えていることはよくわからないので納得だ。

彼女は急いで前線に走っていった。


俺は後ろから少しずつラインを上げていく。


「陣地付近に何人見えますか?」


『5人居る!戦闘中』


4vs5のようだ。

俺は急いで向かう。


陣地についたときには、ほとんどダウンしていた。

彼女だけはまだ居たが、隠れていた。


「きつそうですね」


制限時間も短く、あと3分といったところだろう。

陣地保持は1分ほどしないといけない。

延長時間があるとはいえ、早めに抑えておきたいところだ。


『とりあえずCPU待ちましょう』


俺もそうするべきだと思い、身を潜めた。

だが、ずっと来ないまま残り2分となった。


『さっきからリス地付近でやられるね』


おそらくそこに居るのがチームで強いCPUなんだろう。

思った以上にしっかりと立ち回りをしているし、

なんならピンチだ。


「これもう、攻めた方がよさそうですね」


この流れだと来たとしてもぎりぎりになりそうだ。


「凸るので、回復お願いします」


自分のPS(プレイスキル)を信じて、マウスを握りなおした。

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