脳プロットで書いたものにご意見を!

 カクヨムWEB小説コンテスト10の開催が発表。今年も手に汗握る戦いが開幕ですっ!


 ついこの前、脳プロットで書いていた本文(約8700文字)を思い切って消しました。気に入らない点があったことが発端。改めて書いたのですが、筆が遅いぶんコンテストまでに完成は難しいかもしれません。がんばってますけど……。


 主人公も教会に住む少女から、田舎の村で暮らす少女に。ネットで残酷描写から始めると、読者が興味を惹くと見たので、それを踏まえて執筆しました。


 脚本っぽさがありそうですけど、今回は皆様に意見を聞きたくて載せてみます。



  § § §



【全文掲載(2265文字)】


 風に乗って死の臭いがした。肉が焼け焦げるひどく嫌なもの。熱を孕んだ空気が頬を撫で、汗に濡れた服が気持ち悪く感じる。そこかしかから叫ぶ声がし、すぐに止んでしまう。目の前に広がる非現実的な光景を夢だと信じたい。……しかし、胸に抱いた父だったモノが幼き少女に現実を突きつける。




 火の海の村。その上空で災いの元凶は、硬い鱗の翼をはためかせて睥睨していた。




 竜。天空の支配者と呼ばれる怪物。体長は優に五〇メトラ以上、強靭な尻尾も含めた全長は百メトラに達すると博識な父が教えてくれた。

 遙か北の山脈に棲む竜が何故、少女が暮らすこの村へやってきたのか。何故、矮小な生き物である人間を襲うのか。




 殺してやる、と少女は憎しみに満ちた瞳で睨んだ。父の仇である竜を許さないと歯を食いしばって唇も噛む。口の中に血の味がするが……どうでもいい。故郷を地獄に変えたアイツに復讐すると少女は黒い感情に染められる。

 でも、なんの力も持たない自分が竜に叶う訳がない。父と同じ末路を辿るだけ。頭ではわかっていても、家族を失った絶望は一生まとわりつく。




 涸れていたはずの涙が再び流れる。もう二度と、父に優しく頭を撫でてもらうことはできない。もう二度と、父に名前を呼んでもらうことはできない。もう二度と、父との幸せな生活は送れなくなるのだ。




 竜が首を持ち上げて咆哮をする。大気が震え、恐怖が再燃しだす。




 顎を開く動作。少女はそれを見て、村を破壊した攻撃だとわかった。平和な日常を一瞬にして灰燼に帰した衝撃波は、家屋を、麦畑を、友人たちを奪った。自分を庇った父は腕一本を残して──。




 顎の中で光が収束していく。殺戮されるまでの残り時間を認識した。このまま死んでしまえば、大好きな父に会えると思い……目を閉じる。




『諦めるな』




 声が響いた。少年のような澄んだ音にまぶたを開けると、小さな白猫が浮かんでいた。急に現れた存在へ少女は問う。




「あな……た、はだれ……?」




 火傷している喉を震わせ、痛みに耐えながらゆっくりと言葉を紡ぐ。訊かれた白猫は振り返る。左右で違う色の双眸を持ち、片方に六芒星が描かれる瞳に心を奪われた。




『僕かい? 魔法使いだよ』




 そう答える白猫は竜に視線を戻す。そして手を振るった。空に不思議な円環が生まれ、竜から発せられた熱波を受け止める。




 ぶつかった衝撃で風が吹き荒れ、燃えさかる村は瓦礫を飛ばしながらも鎮火する。少女はいとも簡単に攻撃を防いだ白猫に釘付けになる。




 対して、上空にいる竜は怒りに吼えた。享楽を邪魔した白猫を最大の標的だと。

 竜は翼を広げ、白猫と同じ不思議な円環をいくつも展開し、そこから雷が創り出される。当たればひとたまりもないそれに、少女は逃げて! と叫ぶ。だが、白猫は少女を安心させるように意志を込めて。




『僕が絶対にキミを守るから』




 最初に竜の攻撃を止めた障壁が少女を囲む。そして白猫は詠う。




『厳冬よ。其は全てを凍てつかせし、嫉妬を咲かす氷結の華──』




 美しく編まれた言葉が意味を成し、事象を世界へと顕現させる。




『〝大輪立花〟』




 急激に空気が温度を下げ、氷の薔薇が咲き誇った。それは空飛ぶ竜に向かって茨の蔓を伸ばす。竜も雷を落とすが、凍てつく蔓は雷を吸収すると養分を得た植物と同じく、成長し数を増やす。攻撃から逃れるために竜は空中を立体的に動く。旋回に滑空を繰り返す竜だったが脚に蔓が絡む。茨が肉に食い込み、激痛に鳴く。……それだけでは終わらなかった。脚が凍結しだし、ボロリと胴体から分かれて落ちる。毒が身体を蝕むように全身を凍らせていった竜は弾け、地上へと氷の塵を降らしながら消えた。




 一部始終を眺めていた少女は仇が死んだことを喜ぶ。黒い感情が薄くなっていく。




 お父さん、竜は死んだよ。守ってくれてありがとう……。




「あ、あり……が、とう。ねこさん」




 少女は自分の仇を取ってくれた白猫にお礼を言う。




『僕はただ、精霊たちが騒がしかったから来ただけ。それに蜥蜴風情に負ける気がしないしね』




 茶目っ気たっぷりにウインク。人間なら蹂躙される怪物を蜥蜴呼ばわりした白猫には底知れない自信があった。こんなふうになりたいと少女は感じてしまう。




『じゃあ僕は帰るね』


「待って──!!」




 大声を上げる。途端に、喉がズキズキし咳き込む。心配した白猫が少女の傍に。もふもふの手を喉元に宛てて祝詞をつぶやく。




『彼の者に癒しを。〝祝福の御手〟』




 ぼう……と淡い光が少女に纏った。みるみる間に喉の痛みが去り、肌にあった火傷も元の白さに戻る。




『これで楽にお話しができるよ。僕に何の用かな?』




 息を吸う少女。気持ちを白猫に伝える。




「村を助けてくれてありがとう。あなたがいなかったら、わたしは諦めて死んだと思う。お父さんや友達には……もう会えないけど、みんなのぶんまで生きなくちゃいけない。

 ……強くなりたいって思った。わたしはあなたみたいに強くなりたい。誰かがまた、同じような思いをしないために。今度はわたしがその人たちを助けたいの。

 ……だから、ねこさん。わたしに強くなる方法を教えてください……!」


『いいよっ』




 乞われた白猫はとても嬉しそうに笑う。ポカンとした表情の少女は遅れて理解した。




「ほんとうに?」


『男に二言は無いよ。ふふっ、僕の弟子か。修行は厳しいけど覚悟はあるかい?』


「あります」


『なら良し。改めて自己紹介。僕の名前はシャルル、〈霊元首〉のシャルルだ』


「わたしはクロエ。クレマンの娘のクロエです」


『クロエ。素敵な名前だ。これからよろしく』




 互いに握手を交わす少女と白猫。




 これがのちに、王国で語り継がれる英雄譚の始まり。



  § § §



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