第102話 王立魔導研究所2
「ケーブルをアメジストにすればいいんじゃないでしょうか?」
「無茶言わないでください。そんなもの簡単に壊れて使い物になりませんよ」
うん、知ってた。さすがに無茶か。
「じゃあドラゴニウムで。伝導率0.8ですからかなりのものですよ」
「あんな硬いものを針金みたく細くできる技術なんてありゃしませんよ。ミスリルだってここまで細く作るのにどれだけの技術が必要だと思ってるんですか。それ以前にあれは自然界に存在しませんからね?」
研究員が僕の無知ぶりに呆れたのか、ため息をつく。いやだって知らんし。
「え、そうなんですか。じゃああれは人工物なんですね。作り方がわかるなら作ることもできそうですけど」
「作り方なんて知りませんよ。伝承ではドラゴンの血に浸すなんてありましたけど、結局作れていませんからね。現存するのは全て遺跡からの発掘やダンジョンです」
「そうなんですね。そうか、あれはそんな貴重なものだったのか……」
よし、今度作ってみよう。作り方なんて鑑定の拡大解釈でなんとかなりそうだし。できたらこれも商材になりそうだ。そのためにはドラゴンを探さないといけないけど、ダンジョンの深いところならいるかもしれない。
「まぁ、そんなわけでして。どうにかして我々にもその技術を使えるようにしていただけないかと」
「そうですね……。それなら僕の
これはまだ試していないことだ。それより黒鉛ペンの開発を優先させたのもある。理論上これで僕以外の人でも使えると思う。
「そのはずです。よろしくお願いします」
「わかりました。元々技術供与は陛下たっての希望でもありますからね。ただ念の為門外不出の技術でお願いしますよ?」
「ええ、それはもう。国外に流れればその損失は計り知れませんからね」
外部に漏れるのは本当に困る。悪用されやすい魔法道具が作られるかもしれないし、戦争の道具としても使われる危険がある。国が保持する以上使われるのは避けられないが、この国に対して使われるのだけは避けたいところだからね。
何せこの
「実は既に詠唱文言を転写した羊皮紙がここにあります。これが僕の
「これはどちらも
「こ、これがあればあの必要魔力が1000クラスの魔法も再現できる……!」
必要魔力が1000の魔法も再現できる。そこが問題と言えば問題かもしれない。魔道具として作ればその作り方の性質上100回は使えてしまうのだ。
なにせ必要魔力は消費魔力の10倍と決まっており、そして魔道具にする場合はその10倍でいい。オーガの魔石でさえ1つで250くらいの魔力がある。それを40個で足りるわけだから、どれだけ簡単になるか容易に想像がつくだろう。なのでこっそり制限を設けさせてもらった。
「あ、
もちろんウソ。拡大解釈で制限を取り付けたに過ぎない。でもそうしないと相対的に実戦魔導士の価値が減る気がしたのだ。でも必要魔力600だって結構な破壊力を持つ魔法は沢山ある。
「そ、そうなんですね……。しかしそれでも十分と言えましょう。早速試してみても構いませんか?」
「ええどうぞ」
新しいおもちゃを手に入れた子供のように試したくてうずうずしているのだろう。早速何かの魔法を封じ込める実験を始めた。
問題は手元に魔導書がないことだね。魔法を直接
「できた! できました!
研究員が実際に使って見せると、確かに
パリン。
何度か叩いて簡単に壊れてしまった。
「おや、随分簡単に壊れましたね」
「ちょっと僕の
「ええ、いいですよ」
研究員が僕の提案を受ける。そして今度は僕が
そして魔法を発動させ、再度強度の実験を行った。やり方は全く同じだ。
パリン。
これもまたあっさりと壊れてしまった。
「……やっぱり」
「おかしいですね。ルウ様は無属性Sのはずでしたよね?」
研究員が頭を捻る。僕の無属性の親和性はSランクだ。普通なら木槌で数回叩いてもヒビすら入らない。
「うん。これは多分だけど、その効果は
「た、確かに……!」
僕の指摘に研究員がガックリと項垂れる。これはもしかして制限必要なかったかも。この理屈であれば恐らく必要魔力の足らない魔法は発動しない可能性が高いからね。
世の中そう甘くはなかったということか。これなら万が一技術が広まっても優秀な魔導士の価値が下がることは無くなる。まぁ、それでも凶悪兵器が作れることには変わりないんだけど。
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