第10話 またオーガ!?

午後からはまた森へ行って狩りをすることにした。狙いは当然オークだが、ゴブリンでも魔石を取れば銀貨2枚くらいにはなる。オーガと戦うとお姉さんに怒られてしまうので出ないでほしいとこだけど。



 森の中はまだ明るく、年少グループが薬草集めをしているのを見かける。僕らと同じストリートチルドレンの子達だろう。ギルド登録は10歳からできるが、12歳まではGランクという薬草集めか街の中の仕事を専門に受けなくてはいけない。しかし実際には8歳くらいの子が薬草集めを手伝って足しにしていることなど珍しくもなんともないんだよね。ただしこれは生命がけの行為だ。ゴブリンに襲われれば絶対に誰かが死ぬ。そしてたまにだが入り口近くの浅い位置でも出てくる。それでもそこまでしないと生きていけないのが現実だ。



 ふと、森の奥の方から声がした。悲鳴の入り混じったような声だ。間違いない。



「ねぇ、あれ…!」



 リーネが奥の方を指差すと、その方向から若い冒険者達が走って逃げているようだった。



「逃げろ! 逃げるんだー!」



 その冒険者は僕たちに逃げるよう言いながら横を駆け抜けて行く。そして、その後を追ってきたのはよりによってオーガだった。またかよ!


 オーガは僕らを見かけると走りから歩きに動きが切り替わる。これは僕たちを獲物と認定したということだろう。ここには僕たちより小さい年少グループもいる。僕たちが逃げたら彼らは食べられてしまうだろう。



「逃げるのはダメだ! やるしかない!」


「だね!」



 サルヴァンも即断し、僕たちは構える。年少の子達を促して逃げるまで時間を作る。それが最低限の仕事だ。後はなんとかベテラン冒険者を連れてきて貰うしかない。リーネがその旨を彼らに伝えると、走って森を出る。


 それを見てオーガが走る。



「硬質化!」



 自分の身を硬質化させ、サルヴァンがオーガの前に立ちはだかる。オーガの身長はサルヴァンの倍以上だ。まともに受けては危ないだろう。



防壁プロテクション



 サルヴァンの前に壁を作る。オーガはそれを殴ろうと足を止め、拳を振り上げた。



燃焼ヒート!」



 その足を止めた瞬間を狙い、燃焼ヒートで顔を燃え上がらせる。この魔法は座標を指定して炎を生む魔法だ。森の中であまり火は使いたくないから、強化ブーストはできない。この火の目的は目眩しで、その隙にアレサがオーガの背後に回り込む。



強化ブースト!」



 アレサの持つ剣の斬れ味と強度を強化。狙うは足首と指示してある。大きい魔物はとにかく身体の末端から攻め、動きを止めるのが基本なのだ。



「やあっ!」



 気合いを入れてアレサがオーガの足首を叩き切る。そして膝の裏に剣を刺し、すぐに引き抜いた。



「逃げて!」



 アレサが僕の声に反応してすぐにオーガから離れる。オーガはバランスを崩し、後ろへと倒れた。これはチャンスだ!



防壁プロテクション!」



 倒れたオーガの胸の上に横向きで防壁を張る。これで起き上がるのに時間がかかるはずだ。防壁プロテクションは身を守るだけが能じゃない。相手の動きを制限することにこそ真価を発揮する。



「よし、膝を徹底的に破壊して!」


「任せろ! 硬質化!」



 サルヴァンが棍棒を硬質化させ、膝を叩き始める。オーガはその痛みで身体を動かすが、防壁が邪魔をして上手く動けない。しかしオーガのパワーだから僕の防壁プロテクションもどこまで耐えることができるかわからない。離れるタイミングが生死を分けることにもなりかねない。


 僕は急いで全員に成長率の強化を2回重ねがけし、魔力を回復ヒールで回復。その頃にはオーガの膝は完全に破壊され折れ曲がっていた。硬質化の力は凄い!



「そろそろ防壁プロテクションが破壊される! 離れて!」



 僕の合図で離れると、防壁プロテクションは音を立てて破壊された。凄いパワーだ。一発だってもらうわけにはいかない。しかしオーガは膝を破壊され立てない。これなら!



「リーネ、氷弾アイスバレット!」


「りょーかい! いくよ! 氷弾アイスバレット!」


強化ブースト強化ブースト!」



 リーネの氷弾アイスバレット強化ブーストの重ねがけでさらに大きくする。そのデカさはオーガの半分くらいのサイズまで膨れ上がっていた。



「潰れちゃえ! シュート!」



 リーネの超特大の氷塊がこれまたとんでもない早さでオーガの上半身に命中。その勢いでオーガを押し潰す。氷塊が砕け散った後には血まみれで動かなくなったオーガが横たわっていた。念の為、とアレサが喉に剣を突き立て、トドメを刺す。



「大丈夫かーー!」



 ちょうどそのタイミングでさっきの子達がベテラン冒険者を連れて来てくれた。もう終わったけどね。

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