神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります

まにゅまにゅ

第1話 底辺パーティ龍炎光牙

アプールの街の門。その入口から僕たちは力を合わせてオークを木の板に乗せて引っ張っていた。すると、門の周りにいた他の冒険者たちの嘲笑が聞こえてくる。



「ぷっ、見ろよあれ。オーク一匹引っ張ってるけどボロボロじゃねーか」


「なに? たかだかオーク一匹に苦戦したの? ほんと底辺パーティはこれだから。龍炎光牙なんて名前負けしすぎじゃない? ぷっ!」



ちくせう。またみんなが僕たちをバカにしている。確かにオーク一匹など初級パーティでも苦戦するような相手じゃあないかもしれない。しかし僕たちにとっては油断出来ない強敵で、うちの魔法使いの最大火力でも一発で倒せないのだ。



「気にするな、もうじき、もうじきなんだ」



オークを引っ張りながらリーダーのサルヴァンがみんなに声をかける。サルヴァンは大きな木の盾を持っているのにそれでもオークを一緒に引っ張ってくれる。うちの重要な大盾使いで、安っぽい木の盾だけどみんなを守ってくれている。



「そうよ、私達だって恩恵ギフトを授かればオークなんて敵じゃなくなるわ、きっと」



そう応えるのはうちの大事な火力役、魔法使いのリーネだ。帽子とかは被ってないけど、魔導士のローブくらいは身につけている。短めの髪の元気印で僕たちのムードメーカーだ。



「そうだぞ。私達だっていつまでも底辺パーティだなんて言わせないさ。ルウ、我々の命運お前に託したぞ」


「うん。アレサ、僕はこう見えて悪運が強いんだ。凄いスキルを手に入れてみんなで成り上がろう!」



アレサはその凛とした態度で僕達を励ます。ちゃんと身綺麗にしていれば結構な美少女かもしれないが、着ている服はボロいし肌も少し荒れていて美人が台無しだ。それでも彼女は不満を言わない。そんな彼女に応えたい気持ちはある。



そして僕たちはこのオークをギルドで換金する。そうすれば神殿で神様に洗礼を受け、恩恵ギフトを貰えるお金ができるのだ。メンバー初の恩恵ギフトはジャンケンで僕になったから絶対いいスキルを貰うんだ。まぁ、選べるわけじゃないんだけどね。


別に恩恵ギフトを貰わなくても魔法や剣技を鍛えれば中位あたりに行くことは可能かもしれない。しかし高位の魔法や人の限界を超えた力は神の恩恵ギフト無しに手に入れることはできないのだ。あるとないとじゃ壁を実感するレベルで差を感じられるらしいんだよね。



「すいません、オークを狩りました。引き取ってください」


「おう、坊主。オークを狩ったのか、頑張ったな。よし、見せてみろ」



解体場のおっちゃんは僕たちの仕留めたオークを査定する。傷の具合や火傷の割合などを見るのだが、場合によっては下がってしまう。



「うん、まぁこれなら銀貨60枚だな。なかなかいい状態じゃねーか」

「銀貨60枚! 最高クラスの品質ってことだね!」



解体場のおっちゃんはにかっ、と笑うと銀貨50枚の木札と10枚の木札1枚ずつくれた。よし、思ったより良い値がついたぞ。これなら合計金貨2枚と宿代5日分という目標に届く!

苦労して頭だけ破壊した甲斐があったというものだ。


僕らは喜び勇んで解体場の隣にあるギルドの本部に入る。サルヴァンが早速木札をギルドの受け付けに渡し、銀貨60枚を手に入れた。周りはたかだか銀貨60枚でバンザイをして喜んでいる僕たちを冷ややかに見ている。いつか見返してやるからね!


「やったな! これで目標の金貨3枚分達成だ!」

「よし、なら早速行こう!」


サルヴァンが小声で目標額に達成したことを告げる。大きな声を出すと変なやつにからまれるからね。僕たちはスキップしたい気持ちを抑え、平静を装ってギルドの建物を出ていった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る